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7.ナルシスト王太子現る


「アイシャ、久しぶりだね。貴方の誕生日パーティー以来だ。まさか王城でのお茶会が中止になるとは思わなかったから、君に会えるのがこんなに遅くなってしまった。あの日は本当に体調不良だったんだね。

僕に会いたくなくて仮病を使ったかと、気になって部下に調べてもらったよ」


怖っ!まさかのストーカー疑惑勃発だよぉぉぉ


「………まさか、仮病だなんて………」


私の口から渇いた笑いが漏れる。


「そうみたいだね。あの日リンベル伯爵家に医者が駆け込んだらしいしね。

そんな事より、あの誕生日パーティーではきちんと話せなくて残念だった。まさか僕の手を振り払う女性がいるとは思わなくてね。しばらく放心状態になってしまったよ。あの時は僕に見つめられて恥ずかしかったのかな?」


なんだこのナルシスト発言。


背中に感じるゾワゾワ感に身震いする。決して部屋が寒い訳ではない。


いつの間に移動したのか、私の隣に座り距離を詰めてくる王太子殿下に顔がひきつる。


とりあえず頷いておこう。


操り人形のように首を縦にふる私の手をとり引き寄せられそうになるがすんでんのところで持っていた扇子を顔の前で広げ顔を背ける。


………危なかったぁぁぁ………


「王太子殿下、アイシャは恥ずかしゅうございます。手を離してくださいませ」


私の視界に壁の花となり気配を消すメイドが写るが、

助けを求める視線を無視しやがった。


「どうして?僕はもっとアイシャと触れ合っていたいな」


いつの間にか呼び捨てになってるし、10歳のくせにダダ漏れる色気が半端ない。


掴まれた手にキスを落とされ引き寄せられると思ったその時………


『バタンっ!!』


「王太子殿下!

我が家に突然来られるなんてどうなさったのですか?」


息を切らしたダニエルお兄様が扉を開け放ち、ツカツカと歩いて来て私の手と殿下の手を引き剥がした。


………助かったよぉ………


涙目の私にダニエルお兄様が微笑む。

まさしく救世主到来だった。今なら本気でお兄様を拝める。


「ダニエル、お早いお帰りで。

今日は王城の講師の執務を手伝うのではなかったか?」


「えぇ、もちろん手伝いも終わらせて来ましたよ。

それよりも殿下、アイシャとの距離が近いように感じますが?」


「いや、適切な距離ではないかな?今は………

アイシャ嬢の誕生日パーティーではあまり話せなかったし親交を深めようと思ってね。僕の側近でもあるダニエルの妹さんな訳だし仲良くなりたいなぁ~って」


いけしゃあしゃあと宣う殿下にダニエルお兄様の目が剣呑になっていく。


………あら?この構図は………


私の脳内パラレルワールドが花開く。


殿下の遊びで手を出した令嬢にダニエルお兄様が嫉妬する場面ではなくって?


『王城で働くお兄様の元に王太子殿下が自分の妹の元へ向かったという情報が入る。自分の恋人でありながらフラフラと男も女も関係なく遊び歩く王太子殿下に剛を煮やしたダニエルお兄様は、慌てて家に戻り客間の扉を開けると抱き合う殿下と妹の姿が………


………私という恋人がいながら女に手を出すなんて………


嫉妬にかられたお兄様は二人を引き剥がし、殿下を問い詰める。


私との関係は遊びなのかと。


涙を流し訴えるお兄様を優しく抱きしめる王太子殿下………』


私の脳内を麗しい二人が抱き合うキラキラの映像が流れる。


私の役どころは王太子殿下を惑わす性悪な妹というとこかしらねぇ~


「………アイシャ………アイシャ、大丈夫か⁈」


妄想パラレルワールドに落ちていた私は目の前で手を振るダニエルお兄様に気づかなかった。


「………ふぇ⁇」


「殿下!アイシャは男性に免疫がないんです。節度を持って接して頂きたい!こんなに憔悴して…………」


私の隣に座ったお兄様が私を抱きしめようと手を伸ばしかけたのを見て、咄嗟にソファの端まで逃げていた。


横目で見たお兄様の手がワキワキしてたが無視だ。


「………くくっ………

ダニエル、君も帰って来たし今日のところは帰るよ。

アイシャ楽しかったよ」


爽やかな笑顔を浮かべ優雅に立ち上がった殿下が部屋から出て行く。


私はその背を見て慌てて立ち上がるとエントランスへと急ぎ、馬車に乗り込んだ王太子殿下を見送る事が出来た。


この場に居なかったらお母様に後で何を詮索されるかわからないわぁ………


どっと疲れた私は王太子殿下を見送ると逃げるように私室に篭った。


私の平凡な日々、どこ行ったぁ?



………さらに数週間後………


『リンベル伯爵令嬢アイシャ様。

王妃様より王城でのお茶会のお誘いでございます。

◯月◯日◯時、王城にお越しください。私的なお誘いです。ドレスコードはございません。お待ちしてますね』


王城から届いた手紙を手にベッドへ倒れ込んだ私はシクシクと泣く。


さすがに王妃様のお誘いは断れない。


本当に私の平穏どこ行ったぁぁぁ………




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