あなたで本当に良かった
拠点に戻ってきた二人。
何か策があるわけではなかったが、とにかく装備一式を用意する。
「だけど、どうするの」
ウードはガウに語りかける。
先日来たばかりの街で、これ以上の味方もおらず、サンタクララは行方不明。
ガウは部分鎧をテーブルに置き、ウードに顔を向けて。
「作戦は何もないよ。でも、何もしないわけにも行かない――ねえウード?」
「な、何?」
ガウは少し、言い出しにくそうだ。
「あのね? 精霊に、頼めないかな」
「え?」
「君の――話せる、チカラで」
――ああ。
多分、とウードは思う。
――そう、だよね……。
「ごめんねウード。君が話すまで待つって、言ったのは私なのにね」
「いいんだ。非常事態だからね」
ウードは申し訳なさそうなガウに笑いかける。
――とは言ったものの。
ガウがウードの力に気付いていたことに、ウードは今、気付いた。
恐らく加護だとか、はっきりした知識はガウにはないのかもしれない。ただ、目の前の少年の力を推測しただけ。
――でも。
ガウは、ウードの力が何か『言葉』に関係するものだと感じている。
話は難しくない。
ウードはそれを、認めればいい。
でもそれをウードはガウには言わない――言えない。
竜の言葉を理解したのが、その力のおかげだなんて。
才能や努力でなく、偶々手にした力で――ガウの気を惹いて。
――多分、それがなければ。
ガウとこんなにも心を通わせることなど。
――全部、加護がなかったら出来なかっただなんて。
それがウードのガウに対する引け目。
この力のことを認めてしまえば、ガウに失望されてしまうのではないか――そんな不安が消えないウード。
と、ガウは何かを悟ったかのように。
「――私、ウードで良かったよ?」
押し黙ってしまった少年を見上げ、少女はその顔を覗き込む。
「よ、良かっ、た?」
「うん。だとしても、よ。例え……、君と話せた訳が得体の知れない何かのおかげだったとしても」
ガウ、瞬くように微笑む。
「私は、最初に言葉が通じたのが貴男で――」
ウードは、普段の「君」ではなく、あなた、と言う単語をガウの口から初めて聞いて、加護の誤訳を疑う。
「あなたで本当に、良かった」
「うん。ありがとね、ガウ。ありがと……」
「なあに? 君、泣いてるの?」
にかにかしながら、ガウ。
「そっ、そんなこと、ないよっ」
僅かに目を伏せて、ウード。
そこへ。
『あー。聞こえるかな?』
ウードにだけ聞こえる、声。
『ええ。聞こえます。実は――』
『ああ良かった。ごめんね、ウチの連中が。でも悪く思わないで? 親思いがちょっと暴走してるだけなんだ』
精霊はそう言って。
『だけど、そっちはちょっと後回しにして』
『え?』
『いや……、君達の連れがね』
レンカが後回しなら、残るはサンタクララのことだろうか。
『悪いんだけど、先に彼のことを頼めるかな?』
「ウード? ひょっとして、精霊?」
頷くウード。でも何か変な展開なんだと付け加えて。
『あれ? 竜語? おおー。久しぶりに聞いた』
『そんなことより、今のはサンタクララさんのことですか?』
『ああ、そんな名前なんだね』
『あなたは今、どこにいるんです?』
『待って』
いきなりウードとガウが光に包まれ、全身が薄れ始める。
「な――」
二人は戸惑って声を上げる。
『まあ、直接話しに来てよ』
いったいサンタクララと何を話せば? とウードが告げるのとほぼ同時。
二人の身体が|部屋から消滅する。




