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その少年は、竜の少女に恋をする  作者: 滝岡尚素
第三部 精霊都市へ
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あなたで本当に良かった

 拠点に戻ってきた二人。

 何か策があるわけではなかったが、とにかく装備一式を用意する。


 「だけど、どうするの」

 ウードはガウに語りかける。


 先日来たばかりの街で、これ以上の味方もおらず、サンタクララは行方不明。


 ガウは部分鎧(プレートメイル)をテーブルに置き、ウードに顔を向けて。


 「作戦は何もないよ。でも、何もしないわけにも行かない――ねえウード?」


 「な、何?」

 ガウは少し、言い出しにくそうだ。


 「あのね? 精霊に、頼めないかな」

 「え?」


 「君の――話せる、チカラで」

 ――ああ。


 多分、とウードは思う。

 ――そう、だよね……。


 「ごめんねウード。君が話すまで待つって、言ったのは私なのにね」

 「いいんだ。非常事態だからね」

 ウードは申し訳なさそうなガウに笑いかける。


 ――とは言ったものの。


 ガウがウードの力に気付いていたことに、ウードは今、気付いた。

 恐らく加護だとか、はっきりした知識はガウにはないのかもしれない。ただ、目の前の少年の力を推測しただけ。



 ――でも。

 ガウは、ウードの力が何か『言葉』に関係するものだと感じている。



 話は難しくない。

 ウードはそれを、認めればいい。



 でもそれをウードはガウには言わない――言えない。

 (ガウ)の言葉を理解したのが、その力のおかげだなんて。

 才能や努力でなく、偶々(たまたま)手にした力で――ガウの気を()いて。



 ――多分、それがなければ。

 ガウとこんなにも心を通わせることなど。



 ――全部、加護がなかったら出来なかっただなんて。

 それがウードのガウに対する引け目。



 この力のことを認めてしまえば、ガウに失望されてしまうのではないか――そんな不安が消えないウード。


 と、ガウは何かを悟ったかのように。




 「――私、ウード(キミ)で良かったよ?」


 押し黙ってしまった少年を見上げ、少女はその顔を覗き込む。



 「よ、良かっ、た?」

 「うん。だとしても、よ。例え……、君と話せた(わけ)が得体の知れない何かのおかげだったとしても」




 ガウ、(またた)くように微笑む。

 「私は、最初に言葉が通じたのが貴男(あなた)で――」



 ウードは、普段の「君」ではなく、あなた、と言う単語をガウの口から初めて聞いて、加護(わしゃ)の誤訳を疑う。




 「あなたで本当に、良かった」



 「うん。ありがとね、ガウ。ありがと……」



 「なあに? 君、泣いてるの?」

 にかにか(・・・・)しながら、ガウ。



 「そっ、そんなこと、ないよっ」

 僅かに目を伏せて、ウード。



 そこへ。

 『あー。聞こえるかな?』



 ウードにだけ聞こえる、声。

 『ええ。聞こえます。実は――』



 『ああ良かった。ごめんね、ウチの連中が。でも悪く思わないで? 親思いがちょっと暴走してるだけなんだ』



 精霊はそう言って。

 『だけど、そっちはちょっと後回しにして』



 『え?』

 『いや……、君達の連れがね』

 レンカが後回しなら、残るはサンタクララのことだろうか。



 『悪いんだけど、先に彼のことを頼めるかな?』

 「ウード? ひょっとして、精霊?」



 頷くウード。でも何か変な展開なんだと付け加えて。

 『あれ? 竜語? おおー。久しぶりに聞いた』



 『そんなことより、今のはサンタクララさんのことですか?』

 『ああ、そんな名前なんだね』



 『あなたは今、どこにいるんです?』

 『待って』

 いきなりウードとガウが光に包まれ、全身が薄れ始める。



 「な――」

 二人は戸惑って声を上げる。



 『まあ、直接話しに来てよ』

 いったいサンタクララと何を話せば? とウードが告げるのとほぼ同時。



 二人の身体が|部屋から消滅する。

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