置いては行けない
「駄目、開かないよウード」
ガウはレンカの出てこない部屋の前、恨めしい顔でドアを見上げる。ウードはドアに耳を押し当てている。
「こっちも駄目だ。何も聞こえない」
厚く、重い扉だった。鍵以外で壊そうと思えば。
――黒刀が、いるわね。
「仕方ない」
ガウはドアから離れ、ウードを振り返る。
「いったん戻ろうか――この扉、破るには武器がいる」
竜化すれば一発だがそれは最終手段だ。
分かった、とウードはガウと塔をいったん出ることにする。
一階まで降りる。
塔から出て、真っ直ぐ北に。
途中、こちらに走って来る屈強な男達とすれ違うが気にせず、昨晩泊まった拠点に戻る。
「急ごう! ウード」
装備を整え二人、塔にとって返す。
「ああっ?」
だが、戻った彼らを待っていたのは。
十五人の武装した男達。
「悪いんだがな」
黒刀はまだ構えないガウ。流石に数が――多い。
「ここから先、通すわけには行かねぇんだ」
一団は、塔と二人の間に立ちはだかる。
「さあ、帰りな!」
先頭の男は下卑た笑みを二人に向けた。
「ああそう。レンカを返す気、無いってわけね」
ため息を付いてガウ、ふいっと踵を返し背後のウードを見た。
「このままやっても勝てるとは思う。でも、こっちも無事じゃすまないかも。悔しいけど、引こう」
ウードを危険に晒せない。
頷く。
塔から遠ざかりつつ、振り返って男をウードは見る。
先頭の男には鈍い笑顔が張り付いていた。
まるで手に入れたものを絶対に放すまいとするような我が儘な顔だった。誰の意見も聞かず、自分の正しさを微塵も疑わぬ――表情。
ウードはあの顔を、どこかで見たことがあった。
そしてすぐに思い当たる。
――あぁ……。
「レンカは絶対に取り戻すよウード。置いては行けないもの」
「うん。分かってる」
ウード、前を歩くガウの背中からはっきりとした怒りを感じ取る。
――王様だ……。
あの時、ガウを見ていたマルフォント王の顔。それが、さっきの男の顔に重なる。
――簡単には取り返せそうにないな。
ウードは暗澹たる気持ちになる。




