こうするしか
それは、全員で三階まで上がって来た時だった。
「いかがですか? レンカさん」
アミナが微笑みかける。
ウードとガウは少し奥に行っているようだ。二人は並んで歩きながら、物珍しそうにきょろきょろしている。
「ええ、凄いです、本当に」
するとアミナはレンカの手を取り、ゆっくりと歩き出した。
「ア、アミナさん?」
「――どうぞこちらへ」
下り階段のそばにある部屋へ連れて行かれるレンカ。
ウード、ガウはレンカの方に振り返る。
「なに、あれ?」
アミナに手を引っ張られ、連れて行かれるレンカが目に入り、ガウ、そちらに走り出す。
「ガウ? どうしたの!」ウードも彼女について行く。
アミナに連れられてレンガが二人の視界を外れることは今までにもあった。だから、ウードはあまり気にしていなかったのだが。
「――嫌な予感よ。今の、あの人の目」
今の瞬間、ガウはアミナと目が合った。
アミナの、申し訳ないような、安堵したような。
寂しいような、許しを請うような――目。
少なくとも彼女は今、レンカのことを考えて行動してはいない――竜の超知覚がそれを感じ取った。
――あれを、止めなければ。
だが、一瞬遅れ。
ガウ、ウードの鼻先で部屋のドアは閉じられる。
アミナ、レンカが入った部屋は小さかった。
ぱたん、とアミナがドアを閉めると照明が薄暗いものに切り替わる。
『レンカ!』
アミナの背後でドアを叩く音とガウの声。
『レンカ! 大丈夫なのっ』
切迫感を増していくガウの声。
「どうしてこんな、強引に」
「ごめんなさい。もう時間がないの」
本当のことらしく、部屋に入ってからのアミナはそわそわして落ち着きがなくなっていた。
「ごめんなさい、レンカ――こうするしか」
アミナは手を突きだし、レンカの顔を覆った。
彼女の掌の影がレンカの顔に落ちて、すう、と波が引くように周囲の景色が遠のいた。
それはアミナの声だけでなく、自身の息遣いや心臓の鼓動までもずっと、遠く。
――ああ、これって……。
アミナの力で、何処かへ連れて行かれるのだ。
レンカは訳もなくそう確信した。




