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その少年は、竜の少女に恋をする  作者: 滝岡尚素
第三部 精霊都市へ
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祈りの塔

※今見たら何故か「完結済」になってました。

 手違いです。連載中です。

 ごめんなさい。


 あああ、完結ブーストを失ってしまった……。

 


 ウードは目覚めた時、久しぶりに父親のことを考えていた。

 それがどこなのか分からなかったが、リンクス(ちちおや)は暗闇の中をどこかへひたすら歩いていた。


 もっとよく確かめようと目を凝らしたところで目が覚めたウード。



 父親はきっと生きている。


 この街にはそんな可能性を信じさせてくれるような、不思議な魅力が備わっていた。


 「あ、ウード、起きたね」

 朝ご飯にしようよ、とレンカ。


 ウードがなかなか起きてこないので部屋まで呼びに来てくれたようだった。

 手早く顔を洗い身支度を済ませるウード。


 「(みんな)は?」

 「ガウは階下(した)でウードを待ってる」

 サンタクララさんは? とウードが()くと、レンカは困った顔をした。


 「居なくなったの」

 「何だって?」

 「朝、部屋に呼びに行ったら、もう」

 居なかった、とレンカ。心なしか寂しそうだ。仲間が増えて喜んでいたのかも知れない。





 「お早う、ウード」

 階下では食卓に一人、ガウが座って待っていた。

 「ごめんごめん、ちょっと寝過ごしちゃったよ」


 「さあ食べよう」

 二人、ガウの対面に座る。


 今日はガウが作った朝食だ。

 ウードが片腕を(うしな)ってから、ガウは随分と料理の腕を上げていた。


 「で、サンタクララさんは本当に居なくなったの?」

 ウードの問いにガウ、頷いてパンを手に取る。食糧は大量にストックがある。


 「でも、一体どこへ」

 「分からないわ。行きそうな所と言われても、この街に何があるのかさえもまだ、私たちはよく知らないし」


 「そうよね。取り敢えず、街を――」

 調べなくては、そうレンカが言い終わらないうちに、階下に誰かが入ってくる気配を感じて、ウードは食堂を出て手摺りから身を乗り出して確認した。


 「皆様、おはようございます」

 アミナがウードを見上げていた。











 ウード達はサンタクララが居なくなったことを告げるが、アミナは少し表情を変えただけで、特に気にはしていないようだった。

 「今日は、特別な場所へ参りましょうか」

 そう言って微笑むアミナ。




 レンカには、この街の原理が何となく父親の能力に似ていると感じていた。空間を幾重(いくえ)にも折り畳み、実際よりも厖大(ぼうだい)な量の容積を操作している。



 だから、この街ではあらゆる常識は通用しないし、その点では注意が必要なのだと知っている。


 「何て、大きな建物」

 ガウとウードはアミナの後ろに立って、とある建物を見上げていた。



 空間を上に向かって折り畳むのは難しいんだよ――父親の言葉を思い出すレンカ。

 あの場所にあった本棚と同じように塔の先端が霞んで見えない。

 ――こんな巨大な建物(もの)、お父さんには無理ね。



 精霊の力に舌を巻くレンカ。

 「ここは『真ん中の塔』とも呼ばれるハイレンの寺院です。街に幾つかある『祈りの塔』の一つでもあります」

 アミナは三人を寺院の中に入るように(うなが)す。




 「ここはこの街の中心で、殆どの住民が暮らす場所なのです」

 内部に足を踏み入れた三人は感嘆の声を漏らす。

 そこは礼拝堂のようだった。



 建物の中は奥まで見通せないほど広大な空間だった。どこからか採り入れられている光が一杯に満たされており、中はとても明るい。


 ここでは前後左右、上空や地下に至るまであらゆる部分が同時に圧縮され、それでいて矛盾のない空間として成立している――二人はともかく、レンカにはこの場所に働いている空間制御力の凄まじさが分かった。



 この中では沢山の人間や他種族達が瞑想したり、車座になって話をしたり、ある意味では騒然とした雰囲気に包まれている。だが、とてつもない広さのおかげでそれらは余り気にならない。

 ――もし、ここが崩壊したら。

 ここら一帯、下手をするとサティルナスも空間崩壊による次元の(ひず)みに巻き込まれてしまうかも知れない。レンカは自分の想像に怖くなる。



 「あの、この場所は……、精霊が制御を?」

 「ええ。精霊は私達が快適に暮らせるよう常にお心を掛けて下さっています」

 

 アミナはレンカに祈る仕草で答える。

 「一体、いつから?」

 この世界の(ことわり)に少しずつ触れ始めたレンカの、小さくない驚き。


 「さあ、いつからでしょう。ここに大量の魔力(ちから)が満ちるようになってから程なく、でしょうか」



 いかに精霊と(いえど)ハイレン(ここ)でなくてはこの大空間は維持できないようだ。いや、ハイレンに大量の魔力があるからこそ、人も精霊も集まっていると言うべきだろうか。

 ――だとしても、これほどの空間を。

 レンカは改めて周辺を見渡し、その素晴らしさに見とれた。

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