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その少年は、竜の少女に恋をする  作者: 滝岡尚素
第三部 精霊都市へ
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癒やしの街で

 時間は分からなかったが取り敢えず一度(いちど)寝ようとなって、四人はそれぞれ空いている部屋に入った。


 備え付けのベッドに仰向けに寝転ぶウード。

 色々と考えることがあって眠れそうにない。


 一つは、あの精霊が言っていたこと。


 レンカの潜在能力が高い、とは回復魔法のことだろうか。

 ――だとしたら、レンカの力を見込んで精霊はこの場所へ僕達を連れてきたのか。


 そしてサンタクララの、探し物。

 ――血染めの掌。


 それが何かまではサンタクララは教えてくれなかった。

 だが彼はそれをもう何年も探していて、つい最近この街(ハイレン)にあるという噂を耳にしてやってきたらしい。


 ウードは、今はタイミングが悪い、と精霊が言っていたことをサンタクララに伝えた。彼は特に気にした風でもなく、関係ないさ、と一(いっしょう)()した。


 そんなサンタクララやレンカと違い、ウードとガウは何となくこの土地にやって来た。


 つまり、二人には今のところ(ここ)での目的はない。


 精霊にはウードとガウが万能の話者、そして竜だと言うことは分かっているようだったが、だからと言って二人に用があるような感じではなさそうだった。


 ――ガウは、街でやりたいこと、あるのかな。

 明日、彼女に()いてみよう。


 ――折角、精霊都市(こんなところ)まで来たんだから……。

 目を閉じるウード。


 同時に、睡魔が彼をあっという間に塗り潰した。







 次の日から、アミナに案内される形で四人はハイレンの街を巡った。彼女は行政官だということだったが、まめにウード達の泊まっている家を訪れては何くれと世話を焼いた。


 街は完全な自給自足を実現していた。

 見た目よりも広大な空間が街の中には存在しており、耕作や放牧、生産などあらゆる機能を有していた。




 そうして、四人が街に来て数日。




 アミナは彼らを街の回復院に連れて来た。

 「ここがハイレンで最大の回復院です」


 街の東にある建物だった。

 怪我をしている人、体調の悪そうな人、全員、簡単な仕切りで区切られたブースで薬師(いしゃ)の治療を受けていた。



 「さあレンカさん、中をご案内しますね」

 わざわざレンカの手を引き院内を回るアミナ。その様子はまるで母と娘のようにも見えた。



 「あれ? サンタクララ(あいつ)は? またいなくなったの?」

 ガウは呆れたように息を吐く。


 街に来てから数日だが、サンタクララは時々居なくなった。

 夕方近くになるとふらりと帰って来るのだが、どこへ行っていたのか聞いてもはぐらかすだけ。


 ウードにはサンタクララが居なくなる理由は分かっていたが、ガウとレンカには何となく言い出せないでいた。サンタクララは万能の話者のことをガウに秘密にしてくれた――そのことがウードの口を重くしていた。



 「ねえ! ガウ、ウード!」

 少し二人から離れていたレンカが二人のところに戻って来て、はしゃいだような顔で笑いかける。



 「あら、どうしたの?」

 「あたし、計ってもらったの。魔力」

 そもそも、それが計れるものだということを初めて知るウードとガウ。



 「へえ……、それで、どうだったの?」

 「とてつもない潜在能力ですよ、彼女」

 アミナがレンカの両肩に背中から手を置いた。



 「これからの修練次第では大神官も夢じゃないです」

 「凄いじゃない、レンカ」とガウ。



 「頼もしいパーティーメンバーだね」――微笑むウード。

 「でしょ? あたし、本当にここでちゃんと修行しようかな」



 「どうぞどうぞ、レンカさんなら大歓迎ですよ」


 「お、何だか楽しそうじゃないか」

 サンタクララにはいつも気配がない。


 いつも、気が付いた時には側にいる。



 「あ、あんた、びっくりさせないで!」

 「おお、悪い悪い」

 そんなことを言いながら全員、笑って。

 ――何だかいい感じだね。

 ウードはそう思った。

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