癒やしの街で
時間は分からなかったが取り敢えず一度寝ようとなって、四人はそれぞれ空いている部屋に入った。
備え付けのベッドに仰向けに寝転ぶウード。
色々と考えることがあって眠れそうにない。
一つは、あの精霊が言っていたこと。
レンカの潜在能力が高い、とは回復魔法のことだろうか。
――だとしたら、レンカの力を見込んで精霊はこの場所へ僕達を連れてきたのか。
そしてサンタクララの、探し物。
――血染めの掌。
それが何かまではサンタクララは教えてくれなかった。
だが彼はそれをもう何年も探していて、つい最近この街にあるという噂を耳にしてやってきたらしい。
ウードは、今はタイミングが悪い、と精霊が言っていたことをサンタクララに伝えた。彼は特に気にした風でもなく、関係ないさ、と一笑に付した。
そんなサンタクララやレンカと違い、ウードとガウは何となくこの土地にやって来た。
つまり、二人には今のところ街での目的はない。
精霊にはウードとガウが万能の話者、そして竜だと言うことは分かっているようだったが、だからと言って二人に用があるような感じではなさそうだった。
――ガウは、街でやりたいこと、あるのかな。
明日、彼女に訊いてみよう。
――折角、精霊都市まで来たんだから……。
目を閉じるウード。
同時に、睡魔が彼をあっという間に塗り潰した。
次の日から、アミナに案内される形で四人はハイレンの街を巡った。彼女は行政官だということだったが、まめにウード達の泊まっている家を訪れては何くれと世話を焼いた。
街は完全な自給自足を実現していた。
見た目よりも広大な空間が街の中には存在しており、耕作や放牧、生産などあらゆる機能を有していた。
そうして、四人が街に来て数日。
アミナは彼らを街の回復院に連れて来た。
「ここがハイレンで最大の回復院です」
街の東にある建物だった。
怪我をしている人、体調の悪そうな人、全員、簡単な仕切りで区切られたブースで薬師の治療を受けていた。
「さあレンカさん、中をご案内しますね」
わざわざレンカの手を引き院内を回るアミナ。その様子はまるで母と娘のようにも見えた。
「あれ? サンタクララは? またいなくなったの?」
ガウは呆れたように息を吐く。
街に来てから数日だが、サンタクララは時々居なくなった。
夕方近くになるとふらりと帰って来るのだが、どこへ行っていたのか聞いてもはぐらかすだけ。
ウードにはサンタクララが居なくなる理由は分かっていたが、ガウとレンカには何となく言い出せないでいた。サンタクララは万能の話者のことをガウに秘密にしてくれた――そのことがウードの口を重くしていた。
「ねえ! ガウ、ウード!」
少し二人から離れていたレンカが二人のところに戻って来て、はしゃいだような顔で笑いかける。
「あら、どうしたの?」
「あたし、計ってもらったの。魔力」
そもそも、それが計れるものだということを初めて知るウードとガウ。
「へえ……、それで、どうだったの?」
「とてつもない潜在能力ですよ、彼女」
アミナがレンカの両肩に背中から手を置いた。
「これからの修練次第では大神官も夢じゃないです」
「凄いじゃない、レンカ」とガウ。
「頼もしいパーティーメンバーだね」――微笑むウード。
「でしょ? あたし、本当にここでちゃんと修行しようかな」
「どうぞどうぞ、レンカさんなら大歓迎ですよ」
「お、何だか楽しそうじゃないか」
サンタクララにはいつも気配がない。
いつも、気が付いた時には側にいる。
「あ、あんた、びっくりさせないで!」
「おお、悪い悪い」
そんなことを言いながら全員、笑って。
――何だかいい感じだね。
ウードはそう思った。




