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その少年は、竜の少女に恋をする  作者: 滝岡尚素
第三部 精霊都市へ
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探し物――サンタクララ

 アミナに促されて四人は一本の道を歩いている。

 サンタクララによればここは閉ざされた空間だということらしいが、問題は一体どのくらいの広さがあるのか、だろう。


 見極めようとウードはきょろきょろと視線を四方に向けるが、先程の広場を出て以降、空間の境目のようなものは見当たらなかった。どうやら反対側の境目までは随分と距離があるようだった。


 ――でたらめな広さだ。精霊の力って奴か。

 サンタクララは頭の中で街の地図を描いてみる。


 街は、恐らくさっきの広場を始点とした扇状の構造で、道は放射状に伸ばされている。ちょうど下向きの扇のようだ。南へ下るほど、道と道の間隔は広くなって行って――。


 「着きました」

 アミナの声でサンタクララは思考を中断する。


 とある建物の前で足を止め、扉に手をかざすアミナ。

 程なくがちゃり、と扉の裏で鍵の回る音が聞こえた。


 「今日はもう遅いので、こちらでお休みください」

 アミナに通され、四人は建物の中に入る。

 「わあ……」

 見上げたレンカ、感嘆の声。



 一面清潔な白壁(しらかべ)。そして、入った扉からは想像も出来ないほど高い天井。


 建物の中中央に螺旋階段があり、フロアごとに廊下が接続されている。


 「好きな部屋をお使いください。明日の朝、迎えに来ますので」

 アミナはそう言ってどこかへ引き上げていった。ぱたん、と扉が閉まる。


 そのまま真っ暗になるのかと思ったが、建物内は相変わらず明るい。四人からは見えないところに光源があるようだった。

 「お腹()いた……」


 ウードが隣を見るとちょっと泣きそうな顔でガウが呟く。

 「あ、まだ食糧あるから、あたし作るよ」

 「その必要はないみたいだぞ?」



 螺旋階段を一つ上がったサンタクララが手摺(てすり)から身を乗り出して言った。

 「食い物なら大量にある」








 二階にあった食堂で食事を済ませると、レンカとガウは建物内部の冒険に行ってしまった。



 ウードは食器を片づけながら、テーブルに座るサンタクララと話をした。彼はマグカップに入れた酒をちびちびと飲んでいる。

 「さっきはありがとうございました」

 「ん? 何が」

 「ガウの前で、何も言わずにいてくれて」

 するとサンタクララはちょっと考えて、ああ、あの時かと声を出した。



 「あれは、あからさまに言われたくなさそうな顔をしたからなんだが――ウード、お前さん、ひょっとして」

 静かにマグカップをテーブルに置くサンタクララ。


 片づけの済んだウードは彼の向かいに腰を下ろす。

 「川べりで聞いたあの『音』が言葉として聞こえて、なおかつ意味が分かったんじゃないか?」


 ウードは否定も肯定もしない。

 「俺は瞳の色を見たんだぜ? ごまかしはなしだ。お前――言語系の加護持ちだろ」

 「ええ。僕のは万能の話者、と言うらしいです」

 「な!」

 がたん、思わず立ち上がるサンタクララ。

 「お前――お前があの?」

 まじまじとウードの顔を見る。彼は(ふところ)から一枚の紙片を取り出し、二人の間に広げた。


 ウードがそれを覗き込むと、小さな紙片に幾つかの単語のような連なりが記載されていた。

 「よ、読めるか?」

 固唾(かたず)を飲む表情――だが、サンタクララの意気込みをはぐらかすようにウードは首を振る。



 「ごめんなさい。僕は多分、聞き取ることでしか言葉を理解できないから」

 「そ、そうか……、ま、まあ話者って言うくらいだしな」

 紙片を元通り懐にしまって椅子に座り直すサンタクララ。



 「何なんですか? 今のは」

 サンタクララはその質問に沈黙を返す。

 「ひょっとして探し物に関係あること――ですか?」

 「あの精霊はそんなこと言ってたんだな」

 彼は皮肉っぽく頬を(ゆが)め、それから、一連の短い『音』を呟いた。



 その、音。

 ちかっ――耳にしたウードの瞳が緑に(またた)く。

 『血染めの(てのひら)……?』

 ウードの耳にははっきり(・・・・)とそう聞こえた。

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