ペンダント
とある日の昼下がり、ガウはぼんやりといつもの椅子に座り、天窓を見上げていた。カモフラージュのために積まれている枝葉を避けて、淡い光が落ちてくる。
ここ数日、ウードが来ない。
無理もない、ガウは理由も聞かずに一方的にウードを突き飛ばしたのだ。
彼が置いていったペンダントを手に取り眺める。
――これは、何に使うんだろ。
竜族にはそもそも着飾るという概念がない。
と言うのも彼らは頻繁に人化している訳ではなく、大抵の場合は竜のままで過ごしているからだ。
故に自分を飾ることや、他人からどう見られているか気にするなどということは、初めから竜族の考えの外にある。
加えて、ガウは殆ど人間の社会を知らない。
それを教えてくれる人が誰もいなかった。
――だけど、あれはまずかった。
せめてウードの話を聞くべきだったとガウは悔やむ。
今度来たとき、ウードに聞こうと思うのだが、二日と空けずに通っていた彼は、あの日を境にぱったりと来なくなった。
ウードがまめに補給してくれていたから、幸いにも食糧にはまだ余裕がある。
だが、このままだと――そのうち。
――せめて、これが何か分かればいいんだけど……。
ガウはもう一度ペンダントを見る。やはり使い方が――分からなかった。