王都――兵士長の心配
その命令が出されたのは、マルフォント王がカザイアから帰ってきた翌日だった。
今ある同盟国の全てに一つずつ小隊を派遣し、マルフォント王の親書を渡し、同盟の意思を確認すること。
全てとは文字通りの意味で、規模に関係なく加盟している全ての種族に例外なく派遣される。
――まったく……。
兵士長は兵舎の執務室で溜め息をついた。
ゼルスタン王国は数十万の軍隊を抱えており、その中には加護の力で部隊長になった者も多く、今回派遣されるのは――同盟の意思の確認が任務にもかかわらず――そうした精鋭部隊ばかりだ。
――王は不安なのだ。
だが、戦闘も辞さない装備で身を固めた部隊が街に現れれば、その意味を各種族の長たちは何と受け取るのだろう。
逆効果になりはしないか、兵士長はそこを心配している。
そして、マルフォント王にはもうそのような配慮をする余裕も無くなっているのかと愕然とする。
しかも派遣する部隊は全て王みずからが選定し、兵士長は後から連絡を受けただけだった。更に言えば、兵士長はどこにも派遣されない。
彼までもが王都を離れると、守りが恐ろしく手薄になる――それほど、こんかい派遣される部隊は精鋭揃いだ。王都の防衛力を下げてまですることなのか、兵士長には疑問が残る。
彼の座るテーブルの上には、先ほど伝令から渡された今回派遣される部隊と、担当する街の一覧表が置かれていた。
上から順に見ていき、ふとサティルナスのところで目が止まる。
――ああ、これは……。
派遣されるのはナヨリ・エフロン隊。
ナヨリは剣の加護の一つを持つと言われる男で、性格も好戦的だと云われ、凡そ今回の任務には向いていない。
――彼をよりによってドワーフにとは。
ドワーフは所謂、『売られた喧嘩は買う』タイプだ。果たして平和的な話し合いをナヨリはやってくれるだろうか?
――何事もなければいいのだが。
兵士長は再び嘆息する。




