博物区――吸い込まれる
二人は女の子についていく。
向かう先は街の中央、博物区だ。
入口には門が建てられていて、博物区の周囲は高い壁が取り囲んでいる。
門をくぐり抜け博物区に足を踏み入れると、明らかに他の区とは違う雰囲気が感じられる。
門から伸びる大通りが遠く、巨大な建物に繋がっている。
あれは何? と建物を指してウードが訊くと、あれは図書館、と言う少女の答えだった。
図書館は、博物区の一角を全て使った左右対称の建物だった。
そう言えばここには来たことがなかったね、とウードはガウと話す。トマリはいずれ二人をここに連れてくるつもりだったのだろうか。
「高い壁ね、ウード」
頷くウード。光も壁に遮られ、ここは少し薄暗い。
――あれ?
驚くほど静かだとウードは気付く。取り囲んでいる高い壁が周辺の騒音を軽減しているのかとも思ったが、それだけでは説明できない気がする。
足を止めて壁に手を触れるウード。
実に数年ぶりに魔力の流れを読み取ってみる。
――あ……、これ、魔法?
壁の中を魔力が流れている。どうやら吸音の魔法のようだった。
――こんな大きな構造物に魔力をずっと流せるだなんて。
改めてドワーフの技術力の高さに舌を巻くウード。
やがて目の前を歩いていた少女が足を止め、二人を振り返った。
【ここです】
【ここ? でも、ここって……】
そこは大通りから脇に入ったところにある建物と、隣の建物の間の――隙間だった。
【手を出して】と少女。
「何? 手を出すのね? じゃあ私がやるよ」
ウードの通訳を聞いたガウが隙間に向けて手を出す。無意識に彼を危険な目に遭わせまいとしたのかもしれない。
「あっ?」
す、とガウの身体が隙間に吸い込まれる。
おかしいのは、そこには身体が入るほどの幅はないのにガウが吸い込まれていくことだ。
「ガウ!」
思わずガウの手を取るウード。
ウードはガウをこちらに引き戻そうとするがびくともしない。
やがて、そのまま二人とも隙間に吸い込まれる。




