ティアナ、追って
ティアナは学校に行かなくなった。
ウードがいないのに行ってもしょうがない。
代わりに彼女は旅支度を始めた。
家の人間は当然ティアナを止めた。
特に、母親は泣いて引き留めた。
ティアナだって家族が好きだし、出来ればずっと一緒にいたかった。だけど街の名士リンクス・フォルトッドが失踪し、その息子も行方不明となったことを受けて、街の有志で捜索隊が編成されると聞き、ティアナはいても立ってもいられなくなったのだ。
ゼルスタン王国自体は捜索を打ち切ったようで、それもティアナの背中を押した。
自分一人で旅にでる勇気は持てなくても、誰かと共になら、私にだってやれるかもしれない――そう彼女は考えた。
家族を何とか説得し、ティアナは捜索隊に参加することになった。
最初にどこを目指すのか?
捜索隊にはちゃんと当てがある。
カザイア地方から最近戻った行商人がリンクスの噂を聞いたというのだ。オーガがリンクスを捕らえ、牢屋に幽閉しているらしい、と。
故に、ひとまず捜索隊はカザイアを目指す。
ウードのことはリンクスが何か知っていると信じて。
出発の朝。
集合場所の南門前でティアナは一人、他のメンバーが来るのを待っていた。
捜索隊は男三人、女二人の全部で五人。皆若く、リンクスに世話になった者達だとティアナは聞いている。
――うー、緊張する。
少し人見知りのあるティアナ。
だが、ウードにつながるものはもうこれしか。
「ティアナ」
声をかけられて振り返ると、そこにはティアナの父親、マルドゥムがいた。
「と、父さん?」
父親は歯を見せてにかっとする。
何故か得意気だ。
――そういうことかぁ……。
短く息を吐く。確かに一人娘を送り出すにしてはあっさり引き下がったと思っていたが――ティアナはすっかり装備の調っている父親を呆然と見つめる。
「俺も行くからな。リンクスさんのことが気掛かりだ」
「ちょ、ちょっと、そんな、勝手に……」
いいや、もう決めた、と言ってマルドゥムは南門の前で仁王立ちになる。
――ああもう何なの。
そう呟いたティアナだが、心のどこかではほっとしている。そうして、そんな自分を嫌悪もする。
――今はいい、今はまだ。
まずはウードを探すのだ。
何もかもそれからだ。
背負ったリュックを背負い直し、ティアナは父親の側に歩いていく。




