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その少年は、竜の少女に恋をする  作者: 滝岡尚素
第二部 話者と剣士
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魔獣の群れ

 身体の妙な重さでウードは目を覚ました。

 既に消えた焚き火の跡から漂う燃えかすの臭いが鼻をくすぐる。

 ウードは身体をよじり、重さの正体を探す。


 ――ああ……。

 正体は――ガウだった。



 どういうわけか、彼女はウードの右側にしがみつくようにして眠っている。

 「ガウ――起きて」



 ウードは自分の半身を軽く揺する。ところがガウはよほど安心し切っているのか、そもそも眠りが深い性質(たち)なのか目を――醒まさない。


 諦めたウードは彼女が目覚めるまでこのままの体勢でいることにする。

 ――それに、しても……。

 ガウの存在を、空気を、こんな近くに感じるなんて。



 ウードにはそれが信じられない、何処か夢の中の出来事に感じている。

 こんなに長く行動を共にすることになるなんて、森の家にいた頃には考えもしなかった。

 出来るだけこの時間が続いて欲しい、とウードは思う。

 だが、ガウは今の状況をどう捉えているのだろうか。今こうしていることは、彼女にとってどんな意味があるのだろう。

 「ん……」

 やがてガウが身体を揺らし、目覚めるようだった。










 「ご、ごめんっ」

 ガウがウードから離れ、顔を真っ赤にして謝っている。



 ウードは笑って、大丈夫だよ、と告げる。

 「わ、私としたことが……」

 ガウは地面に座り直し、俯いてわなわなとしている。




 「そ、そんなに気にしなくても」

 あの山小屋に運び込んでからも、ウードは長く目を覚まさなかった。おまけに熱を出し寒さで震えていたから、自分の体温で暖めるためガウはずっと添い寝をしていた。



 ――それが、つい癖にっ……。

 ガウが後悔している最中(さなか)、ウードは立ち上がってその手を引いた。



 「暖かかったよ、ありがとね」

 引っ張られて、ガウも立ち上がる。



 「う、うん」

 「さあ行こう、街の入口を探さなくちゃ」

 二人は手早く荷物をまとめ、洞窟を後にする。



 ――そ、そうだよね、そんなに気にしなくても、いいよね。

 ウードの横顔を見る。



 いつものようににこにこして、優しい物腰。

 ――でもどう思って、いるんだろう……。

 ガウ(じぶん)のことを、ウード(このひと)は?



 是非それを確かめてみたかったが、ガウの超知覚でもウードの心の中までは、分からなかった。





 荒野。

 山を下りた辺りは岩場だったが、少し進むと一面の荒れ野が広がっていた。草木一本()えていない、それが地平線の彼方まで続いている。



 つまり、見たところ、ここには何の構造物もないのだ。

 「ガウに聞いていなかったら、ここに街があるなんて信じられないよ」



 「そうね。でも――ほら」

 と、ガウが地面に手を当てて眼を細めた。



 ウードも同じようにして目を見開いた。

 地面が、ほんのりと熱を帯びている。

 「おお」

 「これが、彼らがいる証拠、ってところね」

 ――そうか、昨日……。



 洞窟の中が妙に暖かかったのもこれのおかげかもしれない。ドワーフが使うエネルギーの放出か何かで、地表面が温められているのか。



 「彼らはこの下に広大な街を築いている。まあ、知らなければ素通りでしょうね」

 二人はガウの記憶を頼りに、洞窟を出てからはずっと西に歩いている。

 いい気候だった。空は高く、雲一つない。少し風が冷たく気温も低いが、足下から上がってくる熱のおかげであまり寒さを感じなかった。



 歩き続けて、もうそろそろかな、とガウが呟いた――時に、二人は小型の魔獣の群れに取り囲まれた。

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