竜を狩る
「王よ! お下がりください!」
兵士長がマルフォントを庇い、隊列の後方に連れて行く。
「お、おお……」
その身に危険が迫っているというのに、マルフォントは首だけ巡らせて宙を見上げ、感嘆の声を漏らした。
いや、その場にいた全員が『彼女』の美しさに息を呑んでいた。
山ほどの大きさもあろうかという竜。
その――抜けるような白さに目を奪われていた。
「美しい……」
「何という輝きだ」
「純白の竜……」
「これを、狩るのか? 本当に?」
妖しいまでに白く透き通る皮膚。そして、流れるようなフォルムが生み出す美しい佇まい。白い竜は、見るものの心を掴んで、離さない。
いま、その金色の瞳が怒りに燃えていた。
――許さんぞ! お前ら!
再び咆哮をあげる。
それで我に返った兵士達は、しかし誰一人逃げることなく迎撃準備に入る。
本来の巨大な体躯となったガウは手始めに正面の兵に火の息を浴びせる。
火に巻かれた兵士達は燃え上がるかと思われたが、意外にも一瞬で炎を振り払う。どうやら耐火素材の防具を着ているようだった。
――こ、こいつらっ。
ガウはたじろぐ。竜を狩るため、準備された兵だ。
その時、
「放てっ!」
兵士長の指示で、轟音とともに幾つかの大砲のような兵器からガウめがけて砲弾が発射された。
――があっ!
ガウはだいたいの弾をはたき落としたりかわしたりしたが、一発食らってしまう。
一瞬ひるんだが、弾は右脚の表皮を浅く切り裂いただけで特にダメージはなかった。ガウは僅かに血を飛び散らせただけ。
――何? 特に、何も……。
そう思った瞬間だった。
――あっ?
弾が当たった辺りから白い煙が上がる。
――力が、入らない……?
ガウの右脚が――溶けていく。
――これ、母様と……?
「効果ありだ! 続けて、放て!」
マルフォントの号令で攻竜兵器が一斉射される。
ガウはあらゆる方向から飛んでくる無数の弾を火の息で焼き払う。だが、また一発――今度は右腕に当たる。
――く、しまった……。
ガウは次の砲撃をかわせないと覚悟する。
だが、次は飛んでこない。
「どうした! 畳みかけんか!」
「だ、駄目です! 次の攻竜兵器に、点火できません!」
兵士長が叫ぶ。
雨で動かなくなった兵器はあらかじめ除いていたが、撃てると思っていた兵器の中にも点火できなくなっているものがあった。雨が、思った以上に兵器に悪影響を及ぼしていた。
「次弾を放つのに、時間が必要です!」
マルフォントは苦り切った顔になる。
「仕方ない! 急ぎ準備せよ!」
攻竜兵器は次弾の装填に時間を要する。だから数を準備してそれを幾つかのグループに分け、前のグループが撃ったら続けて次のグループが撃つ、というように切れ目なくさみだれに撃つのがセオリーだ。
――くそ、これでは。
連続して放てないとなれば、人間が不利だ。
マルフォントは白い竜を見上げる。
竜は身体の右側から白煙を上げ続けている。
右脚、右腕が、徐々に溶けていく。ガウは苦しそうに叫び声をあげた。




