雨止み――カナーティにて
雨は止んでいた。
既に夜。陽が沈んで気温が下がり、少し過ごし易くなって来ていた。
カナーティの街に着いた時、ウードは立っていられないほど疲労していた。王都からここまで殆ど休憩もせず走り詰めに走ってきた。
「お、おい君、大丈夫か」
北門の門番に声をかけられてもウードは反応できなかった。しゃがみこみ、持っていた水筒から水を飲む。
――まだだ、すぐ行かなくちゃ。
ふらふらと立ち上がり、門番の心配そうな顔をよそにウードは歩き出す。
――だけど、いったん家へ……。
雨に濡れきった服を着替え、早く森に行かなくては。
――ガウ、もう少し、待っていて。
祈るような気持ち。
とっくに限界を超えた身体は、もはやウードの意思とは関係なく前に進む。
屋敷の前に着くと、ウードはたちまち違和感に気付いた。
閉めたと思ったはずの門扉が開いている。玄関ドアは見る限り閉まっているようだが、なるべく音を立てないようにウードは門扉を抜ける。
玄関ドアをゆっくりと開ける。
何かの気配を感じた。
ドアを細く開け中をのぞき込むウード。やがて、玄関先で誰かが倒れているのが分かった。同時に、それが誰なのかも。
――そんな!
がば、とドアを開け放ち、ウードは倒れている人に近づく。間違えようのない、その、後ろ姿。
「ガウっ!」
ウードは彼女を抱き起こす。
――何だ、何でこんなことに。
ひどく冷たい――多分、あの雨の中をここまで。
変温生物であるドラゴンは身体が冷えると動きが鈍くなることを、ウードは知っていた。
「う……」
「ガウ! 大丈夫? 僕だよ。ウードだよ!」
「……ウード?」
ガウが、震える手でウードの頬に触れる。
「何じゃ、おるではないか……。なぜ、家に来んのだ……」
ウードは自分の手を重ねる。
――とにかく、温めなければ。
彼女を抱きかかえ、リビングに運び込む。
幸いにも時間が経っていたのか着ている服は殆ど乾いていた。ウードは寝室から持ってきた毛布でガウをくるむと、風呂を沸かしに行く。




