聞こえた声
ウードは王都に入り、とりあえず宮殿に向かっている。
子供の頃に来たきりだが記憶を頼りに進む。門を入ったところは大きな道になっていて、両脇に色々な商店が立ち並んでいる。王都に住む人は経済的に余裕のある人が多く、どの店もそこそこ賑わっている。
この道の先に宮殿がある。
――急がなくちゃ。
先ほどの馬車の隊列が頭から離れない。胸騒ぎが収まらない。だが、父親のことが分からなくてはどうしようもない。
宮殿の大門前でリンクス・フォルトッドの息子だと告げる。
暫くそこで待たされた後、衛兵がウードを案内した。
「ここでお待ちください」
衛兵に連れられて入ったのは宮殿の側にある兵士の詰め所のような所の一室だった。
窓が一つだけの部屋。ソファが向かい合わせに一組置かれているだけ。
ウードはソファに腰を下ろし、前のめりになって両手を組んだ。
目は落ち着きなく揺れていて、組んだ手も僅かながら震えている。
――父さん、大丈夫かな……。
色々なことを想像して不安を募らせていたウードの耳に、聞こえてきた声があった。
『ドラゴンを狩りに行ったぁ?』
オーガ語だ。ドアの外から聞こえて来る。
どうやらオーガの兵士達が立ち話をしているらしかった。
ウードは自然とその声に耳を傾ける。
『そうらしい、何でも、カナーティの南に――』
『へぇ、そんなところに竜がねぇ……』
反射的にウードは立ち上がってドアを開けた。
『あ、あの! 今の話、本当なんですか?』
いきなり人間に母族語で話しかけられたオーガ兵は戸惑いながらも頷く。
それを見るやウードは部屋を出て走り出した。
――ガウが!
父親のことはもう考えられなくなっていた。




