竜狩りへ
宮殿前広場。
運び出されたものは残らず馬車の荷台に積まれ、広場に集められた小隊の前で馬をつなぐ作業が衛兵たちによって続いている。
王の前に一個小隊、三十人の兵士がひざまずいていた。よく見るとちらほらと人間以外の種族も混じっている。
母族で爪弾きにされた者などを王国は兵士に採用する事がある。彼らの方が人間より忠実なこともあると言う理由からだ。
「みなよく集まってくれた。突然だが明日、早朝に宮殿を立ちカナーティ南の森へ行き――竜を、狩ってほしい」
よく通る声で、マルフォントが説明した。
広場にいた全員がどよめいた。
王の隣に控えていた兵士長が声を上げる。彼は先代の王にも仕えたかなりの古株だ。
「まさか、これらは――」
兵士長の目の前には馬との接続をすませた沢山の馬車。
「ああ、お前なら知っているだろう? そのまさかだ。この兵器の運用はお前に任せる」
しっかりと準備せよ、と言い置いて自分も王族専用の馬車の用意を側近にさせるマルフォント。
兵士長は軽くかぶりを振ると部下の兵士に遠征の準備を命令した。
そして今日、まだ明け切らないうちから兵士達は作業を再開した。
――何年ぶりなのか。
兵士長は先代の王の時、竜狩りに同行したことを思い出す。
竜は巨大な生物だ。
その姿を見ただけで大抵の者は逃げ出すだろう。
圧倒的な力で天を衝き地を割る。人間など彼らの足下にも及ばない――そのままであれば。
だが、人間は。
――恐ろしいものだ、人は竜を狩り尽くしてしまったのだ。
彼は身震いする。
先代の王の時はあっさりと逃げられてしまい、幸いと言うべきか、あの兵器の出番はなかった。
それにしても、今頃になって竜とは。
生き残りが発見されたと言うことなのか、今となっては希少種である竜を狩るとは、やはり、マルフォント王も。
――銀鱗狙いであろうな。
所詮、彼も老いには勝てないのだ。
誰にでも分け隔てなく接し、それだけでも良い王だと思っていただけに、軽い失望を兵士長は覚える。
だが、これは王命だ。私情を挟んではならない。
――願わくは。
馬車の荷台に積まれたものを暗澹たる気持ちで見つめる。
「では、出発する!」
兵士達に声をかけ、平成は馬車に乗る。馬はゆっくりと走り出す。
この兵器を使うことがないように、と彼は祈る。




