北へ
リンクスが帰らず、そのまま数日が過ぎた。
しびれを切らしたウードは少しでも情報がないか王都に向かうことにした。
あの時リンクスは何も言わなかったが、あんなに急に家を空けたからには王国の命令で動いたに違いないと思われたからだ。
その日の早朝、ウードは急いで準備すると家を飛び出した。
普段は決して怠らない戸締まりも忘れるほどに、彼は急いでいた。
ウードの住む街から王都までは走れば一日程度で着く。
――何か分かると良いけれど……。
いつもと違って街の北門から出る。
ガウに、しばらく会えないかも知れないことを言うべきだと思ったが、会いに行けば王都に行くと決めた気持ちが揺らぎそうでためらわれた。
――急いで行って、父さんの話を聞いて……。
それですぐ帰れば大丈夫。ウードはそう言い聞かせて王都への街道を急ぐ。
天気は曇り。夏の急な雨を呼びそうな、足の早い雲が東に向かって流れて行った。
――何で来ないのよっ。
ガウは家の中をのしのしと歩きながらウードが来るのを待っている。
窓の外はぽつぽつと――雨が降り始めていた。
――何やってるのよ、もう。
ガウは部屋のベッドに身体を投げ出す。古いベッドが音を立てて軋んだ。
でも、ウードのあの感じで急に来なくなるなんて、有り得るのだろうか? ガウにはそこが分からない。
寝返りをうつ。壁際に貼ってあるウードの絵に目が止まる。絵の中のガウは僅かに微笑んでいた。
紙の下に書いてあるウードのサインを見て、ガウはにこりとする。これはウードとの、楽しい思い出。
ガウはまだまだウードとこんな思い出を積み重ねて行きたいし、きっとそうできると信じていた。
だけど現実は、彼はあれ以来一度もここに来ず、その理由も分からない。
――でも、もしかして……?
とガウは思う。
理由が分からない、のではなくて、理由はない、のだとすれば。
がば、とガウは身体を起こす。目を見開いて、息が少し――乱れていた。
――もしかして何か、あった?
一度そう考えてしまうとどんどんとその考えで頭の中が埋まっていく。すぐにいても立ってもいられなくなって、ガウは思わず家を飛び出した。
勢いのままガウは――北へ。




