三日目・朝
ガウは後ろのキッチンでウードが朝食を作る音で目が覚めた。心なしか浮き立つような音だとガウは思う。
昨日までならぱっと身体を起こし、目を擦りながらいつもの席に座っていたガウだが、今日は様子が違う。
彼と目を合わせるのが少し億劫だ。
昨日の夜、ウードに抱き止められたガウ。
彼の腕が意外に逞しく、どぎまぎさせられた。ガウは彼の両肩に手をかけて少し押し出し、出来るだけ傷つけないように身体を引き離した。
ごめん、と言うウード。大丈夫じゃ、と返すガウ。
後はそのまま無言で、二人はどちらからともなく家に帰った。
そして今朝。
ウードの目が見られないガウ。今まで異性と言う存在を特に意識してこなかった自分の変化を悟られたくない。その一心でガウはシーツを頭から被っている。
――だけど。
とガウは思う。私はウードを意識してしまったのだろうか? けれどそうとは言えない自分もいる。決して嫌いではない。ではそれ以上なのかと問われると、ガウは即答できない。
言ってみればお気に入りのマグカップと同じだ。手元にないと寂しくなって探してしまうけど、外に持ち出すことまではしない。
ガウにとってウードは、そんな存在。
「ガウ、朝ご飯できたよ」台所からウードの声。
「わ、わかった」
なるべく目を合わせないようにゆっくりと起きあがるガウ。
視界の端に彼を捉えながら、いつもの席に座る。
「さあ、食べよ」
昨日の夜のことなど何もなかったようにウードはいつもの笑顔。
ガウはそろそろと食べ始める。そして、ちらちらとウードを見る。
「ん? どうかしたの」
「――な、なんでもないっ」
首を振って目線をそらす。暫くしてまた、ちらちら。
ウードはそのたびにガウと目を合わせてにこにこ。
ガウは食べている朝食の味が分からなくなっていく。
――ああもう。なんなの、これ。
自分の心の揺れにひたすら戸惑うガウ。
お気に入りのマグカップは、決して外に持ち出したりはしない。
けれど家に帰ったら、
真っ先にその姿を確認してほっとする。
彼女にとって彼は――そんな存在。




