哄笑
第四部、最終回です。
その姿に身構える一同。
「おお――」
瀕死であったマルフォントが全快していることに感動を覚え、テトだけはドワーフの娘に感謝する。
「サルク、後で話の続きをしようぞ」
「ええ、分かりました」
サルクは神妙な顔で頷きを返す。
「それよりも――今はこちらが先決じゃ」
ウードに向き直るマルフォント・マナ。
王と、その側に駆け寄るテト――ウードとガウ達は彼らに向かい合って立つ。
「さっき、何と申した? 国を、作るじゃと?」
「ええ、僕達は――」
「ねえ? 王様」
ウードの言葉を制して王の前、緑の髪を緩く束ね、首にスカーフを巻きつけた少女が進み出る。
ウード達はそのまま後ろに下がり、ガウの後方に移動する。
テトは王の後ろへ。
先程カザイアに戻った際、セラーから装備を受け取った少女は、上半身にはいつもの部分鎧、その上から羽織った白いマントをはためかせ――手には。
「あなたが私たちを止めることなんて、出来ないわよ?」
携えた黒い刀をゆっくりと引き抜く。
「どうしても止めたければ――私に勝つことね」
ずらりと上段に構える竜の少女。背中から見ているサンタクララやリンクスは、尋常ならざる気迫がその身から漏れているのを感じる。
「ほお? 面白い」
マルフォントは側近の兵士から剣を借りる。それは何の変哲もない、ありふれた軍からの支給品。
王は剣を装備し、腰だめになって柄に手を掛けた。
――あれは、居合いか?
長らく王国の近衛として働いたマルドゥムでさえ見たことのない、王の戦い。
「良かろう。相手になってやる」マルフォントは薄く笑い、目には緑の、光。
――な?
思わずガウ、たじろぐ。
――これは、想像以上ね……。
柄を握り直す。
王の佇まい、所作――かなり『出来る』ことは、ガウには分かっていた。だからこそ、初めから黒刀を抜いたのだ。
――そうでなきゃウードの腕を。
あんなに綺麗には落とせない――だが。
「どうした? とっととかかって来ぬか」
迎撃体勢の王は余裕の表情。
――駄目。どこに打ち込んでも、斬られる。
ガウのこめかみから汗が一筋垂れる。
時刻は間もなく夕暮れ。
周囲はじんわりと暗くなっていく。
マルフォントのぎらぎらと光る緑の眼が、一同を威圧する。
――おいおい、加護持ちなのか。
軽い驚きを覚えるサンタクララ。
――居合いの加護なんて初めて見る。
一同はガウの背後に控えており、サンタクララは最後尾に近い位置にいた。
――居合いが『完全なる加護』だったらヤバいぞ、姉さん。
万一ガウが敗れた場合のことをサンタクララは考える。
――何とか、カザイアまで撤収出来れば。
サンタクララが何となくカザイアの方向に振り返ると、背後で泣きそうな顔になっている少年と目が合った。
「大丈夫、姉さんは負けない」
「え、ええ……」
サンタクララはウードの肩に手を置こうとして、遠く遠くカザイアの街、その外壁の上に人影を見た。ウード達が潰した砲台の辺り。
――何だ……?
強烈に湧き上がる嫌な予感。
だが、確認する前に。
きらりと何かが閃いた。
――矢?
こんな超長距離で届くわけ――だが、それは凄まじい速度でサンタクララ達めがけ飛んでくる。
その、軌道は。
「危ない!」
サンタクララは思わず彼を庇うように前へ――矢の軌道上に――出る。
だが、矢はサンタクララの胸を軽々とぶち抜き、そのまま背後の人物、その心臓に真っ直ぐ突き立てられた。
――馬鹿な。
――?
その人物は自分の心臓に深く刺さった矢を見つめ、信じられないと言った表情で仰向けにゆっくりと倒れていく。
――何て、ことだ。こんな……。
サンタクララは血の噴き出す胸を押さえ、前のめりに倒れる。
その時、遠くカザイアの外壁に立ち、哄笑を上げる女の姿を見た気がした。
対峙する王と竜の少女。
――!
少女を不意に襲うただならぬ気配。
ガウ、振り返る。
――ああ、そんな!
「どこへ行く、勝負の最中ぞ!」
王の怒声が飛ぶ。
意に介さぬガウ、黒刀を投げ出し走る。
「ウードーッ!」
千切れるような叫びを、その身から発して。
これで第四部終了です。
次回は例によって未定です。
ここまでお読み頂き、ありがとうございました!
宜しければ感想、評価、ブックマークお願いします!!




