混乱の後に
「サルク殿」
テトはオーガの長に笑いかけた。
サルクは隣に立つテトに、軽く頭を下げる。
会釈するオーガの肩を叩き、にこりとするテト。
「全く、お互いに死ななくて良かったな」
「兵士長――私は」
何か言いかけるサルクを、テトは押し留める。
「とにかく我々は戦わずに済んだ、それで良いじゃないか」
と、そこへ複数の騎馬がテトの元にやって来る。
「どうか」
彼が声を掛けると全員降馬し、彼の前にひれ伏す。
「は。我らで全部隊、隈無く見て参りました」
兵士等は軍勢の被害状況を確認していたようだ。
それによれば砲弾の直撃を受け、不幸にして亡くなった者が数百名。
そして、攻竜兵器にやられて身体を灼かれた者が二万名以上。中にはマルフォント王以下、致命傷を負った者も多くいた。だが、それらは――。
「ぜ、全員だと? 全員、回復したというのか」
「は」
そこのお方によって、と兵士達はレンカを指した。
どうやらレンカの魔法は本陣だけでなく、外で負傷し倒れたままだった兵士達をも、全て癒したようだ。
――こんな、お若い娘さんが?
当のレンカは不意に注目を浴び、耐えきれずサンタクララの後ろに身を隠す。
――いや、よく、見れば。
テトは改めて彼らを確認する。
――魔導師のリンクス様に、元近衛兵長のマルドゥム殿まで。
マルドゥムは兵士長と目が合うと、目だけで挨拶する。
――それに、エフロンと、あれはクラスト・テトルアンではないか。
何度か戦場でその姿を見た。戦斧を振りかざし、何人もの敵を一度でなぎ倒す勇猛な姿を。
――そして、リンクス殿のご子息。
先程の兵士を鎮めるため使った数多の言語。
凄まじい治癒魔法を放ったドワーフの――レンカと言ったか――娘。
――加えて、竜の少女。
「あなたたちは、どういう――」
「まあ、色々あって、今は、国を作ろうと思っています」
ウードが屈託のない笑顔で答える。
「ならぬ!」
どこかで声が響く。
全員が振り返った先。
「そんな勝手が通ると思うてか!」
ゼルスタン王国、国王マルフォント・マナがそこにいた。




