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その少年は、竜の少女に恋をする  作者: 滝岡尚素
第四部 南方騒擾
157/250

この国の未来を

 数時間前。


 砲撃が始まってから暫く経った頃だった。



 本陣に運び込まれたマルフォント王。

 ベッドに横たわるその姿、(そば)に立ち、見下ろすはテト・カノシス。




 「王よ」

 「お前――か」

 憮然としたマルフォント王。身体の半分を攻竜兵器で()かれ、胸を激しく上下させ、息も絶え絶えだ。




 「お加減は――」

 衛生兵の回復魔法(ヒール)はかかりが浅く、マルフォントは時折苦痛に顔を歪める。




 「何をして、おるか」

 「ですから、お加減は、とあなたを見舞っているのです」

 「そんなことは、必要ない。とっとと」

 指揮を()って来んか。




 そう言ってテトから視線を逸らす。




 「――分かりました」

 テトは立ち上がる。




 ――どうか、私が戻るまでご無事で。

 だがマルフォントの怪我の程度ではテトがもう一度ここに戻るまで()ちはすまい。




 テト、王の顔を見る。

 あの頃とは違い、身体中に刻まれた老いという名の時間。




 それを許容できず、銀鱗を求め、他種族を締め付けて。

 だが今、テトの眼下で横たわるのは苦痛に(うめ)く、ただの老いた男。




 ――それでも、あなたは。

 生きて下さい。まだ生きて、この国の未来を。




 ――行って参ります。

 テト、頭を下げて本陣を出る。










 現在。


 大魔法を使った影響か、倒れてしまったレンカ。

 彼女を横倒しに両腕で抱き上げ、サンタクララは本陣から出た。




 「お。あっちの方はカタが付いたみたいだな」

 「ああ。ウード君がドワーフの機械を使って何か呼びかけていたが――静かにはなったな」




 マルドゥムがサンタクララの腕で眠るレンカに目をるる。

 「それにしても、大した娘さんだ」

 「だな。頼もしくて可愛い、最高のウチの回復術士(ヒーラー)さ」




 その声が聞こえたのか、聞こえなかったのか。




 眠っているはずのレンカの顔が少し(ゆる)んだように、マルドゥムには見えた。












 「済んだね、ウード」とガウ。

 「うん。これでもう大丈夫、だといいけど」

 「でもこの機械、本当に凄いわ……」

 ティアナがウードの持つ変換器(マイク)と足下に置かれた拡声器(スピーカー)をまじまじと見つめる。







 「トゥード君!」

 本陣に向かいながら歩いている三人、その背後から、馬上のテトが声を掛けた。





 振り返るウード。

 「ええと、兵士長さん」

 テトは馬から降りる。




 ウードによって一旦待機を命じられた軍隊はその場から動かない。危機が去ったと(ようや)く分かったらしく、すっかり平静を取り戻していた。




 「そして君は――」

 「ガウよ」

 「私はティアナ」




 「おーい、(あね)さん! 首尾は?」

 サンタクララとマルドゥム、リンクス他の面子が全員、本陣の前でウード達と合流する。




 「ええ何とか。ウードが色んな言葉で呼びかけてくれたから」

 「さっきのは、君か」とテト。



 「はい」

 「見事だった。君はあんなにたくさんの言語を、どこで――?」



 ウードは苦笑い。

 「や。それは、ちょっと……、独学で」




 「そう、なのか?」

 「それより――あんたは?」とサンタクララ。

 「これは、申し遅れた。私はテト・カノシス。ゼルスタン王国軍の兵士長を務めている」



 テト()の声がうるさかったのか、

 「――ん……」レンカが身動(みじろ)ぎする。




 「お。お目覚めかな、お嬢さん」

 サンタクララの腕の中で目を覚ましたレンカは、暫く状況が理解できずぼんやりとして、彼の顔を、見上げて。




 「わっ、わわっ?」

 真っ赤になった顔、レンカ、慌ててサンタクララの腕の中から飛び出るように降りる。




 「おいおい。どうした」

 「な、何でもないっ……」

 赤い顔のままでサンタクララを睨みつける。




 「レンカ、顔、真っ赤よ?」



 「や、やだっ」

 顔を両手で覆いしゃがみ込むレンカ。



 吹き出すガウ。

 皆、それにつられて笑った。

多分、あと三回以内で第四話は終わりです。

妙に長くなった割には……。

申し訳ない。

ここまでの感想が頂けるととてもありがたいです。

どうぞ宜しくお願いします。


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