一日目
父親が任務に赴いて数日。
ウードの通う学校は夏休みになった。
去年ガウと出会ってから、ウードは今までがあっという間に過ぎた気がしている。
リビングで一人、ウードはガウの家で一夜を明かした時のことを思い出していた――テーブルに座って、ぼんやりと頬杖をつきながら。
あの夜以来、ガウと少し打ち解けて来た気がしているウードは、思い切った行動に出ることにした。
荷物をリュックに詰め、父親から貰ったお金も入れ、満足そうに頷く。
そのままリュックを背負う。
ウードはしっかり戸締まりをして、自宅を後にした。
森を抜け、ガウの家の前に立つウード。
時間はお昼前、ウードはじんわりと額に滲んだ汗を拭う。
と、妙な気配を感じて空を見上げると、一匹の白い蝶が舞っていた。
――あれ? こいつ……。
そう言えばずっと周りを飛んでいないか? ウードはひらひらと飛ぶ蝶を見つめる。
ウードがそうしていると、蝶はとつぜん力尽きたように地面に落ちて来た。だが完全に落ちることなく、空中で白い光を放ち、消えてしまった。
ウードは何か嫌な予感を覚えるがそれ以上はどうしようもなかった。
仕方なく一旦忘れることにして、ドアをノックする。
開いておる、と言うガウの声。
ウードはドアを開け中に入る。
「なんじゃ、その荷物は」
いつもの食糧を持って来る鞄と違うので、ガウは気にする。
ウードはそれには答えずリュックを床に下ろし、いつものようにガウの対面に腰掛けてにこりとした。
「僕ね、今日から夏休みなんだ」
「ほう。それは良かったの」
「そ、それでね……、あの……」
「ん? どうした、こっちをじろじろと見よって」
用件を切り出そうとするウード――唇が貼り付くような気がして舌で湿らせる。と、今度は声が出にくい気がして軽く咳払い。だが緊張している所為か、思わずたくさん咳をしてしまう。
「お、おい、大丈夫か?」
心配そうなガウ。ウードは何とか咳を抑え、改めて口を開いた。
「ぼ、僕、何日か、こ、ここに泊まっても――いいかな?」
言い切ったウードは顔が熱くなって俯いた。
言われた方のガウは全く表情を変えずに、
「ん? 別に構わんぞ」あっさりとオーケー。
がばっ、と顔を上げるウード。
「い、いいの? ほんとに?」
「いいと言っておるじゃろ」
相手はドラゴンなのだと言うことを時々忘れるウード。
そもそも竜族が人間と同じ感性を持っているとは限らない。
一つ屋根の下で若い男女が――などという発想がもう人間的だ。
或いは、単純に男として見られていないだけかも知れないが。
――そうかもなぁ……。
ちら、と苦笑いするウード。何を弱気になっているんだと自分を励ます。今は男と認識されていなくても、そのうち必ず――。
「なるほど、それでその荷物か」
床に置いてあるリュックを見るガウ。心なしか、どこか嬉しそうだ。
ウードは立ち上がり、シャツの腕を捲る。
「何か作るよ。食べたいもの、ある?」




