えがお
朝。
ぱちり、と目を覚ましたガウは、竜に備わっている超感覚のおかげでたちまち違和感を覚える。
ベッドで半身を起こした状態できょろきょろする。
やがて、いつもの椅子で身体を投げ出し、だらしなく眠るウードに気付いた。
――こいつ。
鍵をかけておいたのに、どうやって入ったのか。
ガウはゆっくりとベッドから降りて、恐る恐るウードに近づいた。
彼は椅子に深く座り、足を投げ出し、口を半分開けて眠りこけていた。
――いつからここにいるんだろ。
ガウも自分の椅子に座る。そこから眠るウードの横顔を眺めた。
――可愛いらしい顔、してる……。
ウードは、ガウにとって気になる少年だった。
どこか頼りなくて危うい、ちゃんと見ていないと勝手にどこかへ行きそうな――。
ガウは、ひょっとして彼を弟のように見ているのかも知れない。
――弟か……。いたらこんな感じかな?
「ふふ……」
頬杖をつくガウ。思わず笑みが漏れた。
ウードが目を覚ます。
先ほどのガウとほぼ同じようにきょろきょろして、最後にガウと――目が合った。
「あ、おはよう」
寝ぼけているのか、分かってやっているのか、ウードはガウに微笑みかける。
「おはようではないっ! お前、いつからここにおるんじゃ」
ガウが一喝する。
ようやく目の覚めるウード。立ち上がって、またガウを見た。
「あ……、ご、ごめん」
「まったく」
ガウはウードに座るよう促す。
「そ、そろそろ食糧がなくなるころかな、と」
言って、リュックを示すウード。
「だったら朝に来んか。それに、どうやって入ったのじゃ」
ウードはしぶしぶ裏口のことを話す。そんなもの後で塞いでやる、とガウは心に決める。
「ごめん――どうしても君に、会いたくなって」
もう帰るね、と言って立ち上がろうとするウードを、ガウはテーブルから身を乗り出して止める。
「まあ、待たんか。せっかく来たのじゃから――」
「で、でも、この前のことも、まだ――」
「ん? ああ、あれは……」
銀鱗に触れようとしたのではないことは、ガウにはもう分かっていた。
「あれは、もういい。私も――悪かった」
軽く頭を下げるガウ。
その、胸元に。
「あ、それ……」
ガウを指差すウード。
あのペンダントが揺れていた。
「こ、これは! 違うんじゃ」
慌てて隠すガウ。昨夜やっと使い方が分かり、嬉しくなって身に着けたままだった。
「つけて、くれたんだね」
「まったく。お前、ペンダントの使い方も言わんで帰りおって」
「え……」
きょとんとするウード。やがて、笑い出す。
「な、何を笑っておるかっ」
「い、いや、ごめん。まさか、知らなかったなんて」
「何を言って――」
「うん。でも、似合ってる――思った通りだ」
真っ赤になるガウ。ウードはにこにこしていた。
なるほど、とガウは思う。これはこうやって人に見せ、褒めてもらうものなのか、やっとペンダントの使い途を理解する。
「そ、そうか? そんなに、似合うておるか」
思わず笑顔になるガウ。
「うん――とっても似合ってるよ」
「そうか、そんなにか……」
ガウは満足そうに頷く。
相変わらずにこにこと見つめるウード。
――やっぱり。
ウードは黙っている。口にしたら、たぶんガウは止めてしまうだろうから。
最初の似合ってる、はペンダントに。
二回目は――初めて見せてくれた、笑顔に。
――やっぱり、そっちの方がいいね。
想像より何倍も可愛いガウの笑みに、ウードは心の中で呟いた。




