それぞれの居場所――エフロン隊
隊長を失ったエフロン隊。
手がかりを追おうにも隊長と同じように女性も小屋も消えてしまって、途方に暮れた副隊長は仕方なく、周辺の町に戻ることにした。
その道すがら、エフロン隊は王国から派遣されてきた兵士長直属の小隊と行き合う。
聞けば、サティルナスに入ることも出来ず追い出され、パブリジアに向かっていたのだという。
「――なんと、エフロン様が、消された?」
合流し、パブリジアに向かう一行。
「ええ。私達も訳が分からずで」
「精霊都市か……」
恐らくそこへ飛ばされたのだとは思うがどうにも行き方が分からない。
「それで、サティルナスのあの様子は?」
「は、なんとも……」
小隊はサティルナスの入国審査で追い返されたらしい。それも、えらい剣幕で。
このままここにいたら殺される――身の危険を感じ小隊はサティルナスを出て、今に至る。
原因を作ったのは隊長なので正直にそれを申告する副隊長。
すると、小隊長は足を止め、難しい顔で黙り込む。
「い、いかがされた?」
「正直、あなた方は大変まずい立場に置かれたと思った方がいい」
「う……」
「今、王国は他種族への規制を強めており、恭順を誓わせるならともかく、喧嘩を売ってしまうなど」
副隊長には何も言えない。
ナヨリ隊長は部下の信任も厚く、副隊長も慕っているが隊長は偶に暴走し、自分を見失ってしまうのが欠点だと思っていた。
「仮にこのまま王国に戻っても、あなた方には厳しい責めが待っている」
「そんな――」
色をなす副隊長に告げられたのはオーガの街、カザイアの王国からの離脱だった。
「な、なんと」
「だから、平時ならともかく今は」
非常にまずい報告だ、と小隊長。
そういう状況であれば確かにエフロン隊への風当たりはきついものになるだろうと思われた。
副隊長は思わず後ろを歩く隊員達を振り返る。
はっきり言って、彼らには何の罪もない。隊長の暴走を止められなかったのは副隊長である自分の責任だと思う。
――だが、一体どうすれば。
彼が思いつくプランはたった、ひとつだけだ。
「我々はこのまま、サティルナスの反逆、そして――」
「し、小隊長殿、我々は……」
「ナヨリ隊の失踪を、王国に報告する」
一瞬、言われた意味が分からなかった。だが、副隊長はすぐにエフロン隊の置かれた立場を正確に――理解する。
道中で小隊と別れ、エフロン隊は前回と同じように町いちばんの宿に逗留する。
そうして、隊員に事情を説明した。
――失踪扱いなのはまあ、温情であろうな。
自分達が王国に見放されたことを知ってショックを受ける者、何となく察していた者――反応は様々だったが、受け入れるしかない厳然たる事実の前で、その選択肢は誰にも平等だった。
即ち、ここに残るか、隊を抜けるか。
国に妻や子、親を残しているものも多く、だが、帰れば最悪捕らえられ、投獄される可能性もある。
――それにしても。
確かにサティルナスの不興を買い、王国から離反させたのはナヨリ隊長の所為だ。だから、ここでエフロン隊を解散とし、兵士ひとり一人の自由意志に任せるのも悪くない。
「――そんなわけで我々はこれより精霊都市を目指す。ただ、これは強制ではない。皆、自由にするが良い。それでももし付いてくると言う者があるならば……」
明朝の集合を告げ、その場はお開きとした。
次の日の朝。
副隊長は集合場所――宿前の広場――で一人、夜明けから待っていた。
広場の中程に立ち、昇る朝日に身を晒している。
思えばエフロン隊に配属され、ナヨリ隊長を長きに渡って補佐してきた。それらは良い思い出ばかりではないが、隊長は支持に値する人だと思う――それが副隊長の総合的判断。
――だから、ついて行くと決めた。
王都に残してきた妻子の顔が過る。ナヨリ隊失踪の報に触れた時、どれほどの悲しみを与えるか考えるだけで今から憂鬱だった。だが、必ず迎えに行くと誓う。
――そのためにも。
何としても隊長を探し出さねば。
――人手は多い方がいいのだが、どのていど残ってくれるものか。
と、腕組みをした副隊長が、広場の入口に気配を感じて振り返る。
――おお。
ナヨリ・エフロン隊の隊員が広場に入ってくる。
欠けた顔は一人も居なかった。
――全く、馬鹿な奴らよ。
副隊長はやや目を伏せ、彼らの前に進み出る。
「行きましょう副隊長。何だかんだで皆、ここにしか居場所なんてないんですよ」
先頭の兵士が照れ臭そうに告げる。
――思いはそれぞれあるだろうに。
打算で残った者も居るだろう。
やむを得ない選択だったとしても、それを後悔するようではいけない。
副隊長は兵士全員の顔を改めて見つめた。
――居場所か。
作ってやらねばならんな――副隊長はそんな決意を胸に、新生エフロン隊の前に立った。




