独りと独り
自室で一人、ウードは悶々としていた。
先日突き飛ばされたことがまだ心を重くしていた。おまけにどこで無くしたのかペンダントも見当たらない。
すっかりしょげてしまったウードは、ベッドに寝転んで天井をにらんでいる。
――やっぱり嫌われてるのかな。
ごろん、と寝返りを打つ。
あれ以来ガウには会っていない。そろそろ食糧を持って行かなくては、と思うがなかなか踏ん切れなかった。
――どうしたらいいんだろう。
あの時、ガウも謝ってくれた。だからきっと大丈夫。
後は、ウードが行動さえすれば。
階下で物音がした。父親が帰ってきたようだった。
「トゥード!」
大声でウードを呼ぶ。
降りていくと、リビングにいつもより険しい顔の父親がいた。
「父さん?」
不安げに問い掛けるウードに、リンクスはその表情のまま口を開いた。
「急で済まないが十日ほど留守にする。お金はここに置いていくから、大事に使いなさい」
テーブルに厚めの封筒が置かれた。
「いいけど、一体――」
「心配しなくていい。国の仕事だ」
分かった。ウードは頷くしかない。この感じでは、きっと行き先も教えてはくれないだろう。
「ではな。身体に気をつけるんだぞ」
「え、今から?」
そうだ、済まないな、とリンクスは足早に家を出て行った。
ウードも家から出て、父親の背中を探す。
父親は、家の前で誰かが待っていたらしく、二人で連れ立って街の大門へと歩いていた。
彼の隣にいたのは小柄な女性だった。今回の任務のパートナーなのかもしれない。
二人が見えなくなるまで、ウードはそこで立ち尽くしていた。
その日の夜。
ウードは眠れずにいた。
急に一人にされたので心の整理が追いつかない。思えば自分以外の気配がない家は初めてだ。
あの後、貰ったお金を用心のため自室に隠した。
ウードは家にあった食材で作った簡単な夕食を摂り、風呂に入った。
そうするとそれ以上何もすることがなくなり、早めにベッドに潜り込み、今に至る。
――ガウは……。
そう言えば、あの家でいつもどんな夜を過ごしているのだろう。
人目を避けて、家からも出られず、話し相手はウードだけ。
彼女の顔がよぎる。いつも仏頂面で、眉間に皺が寄っていて。
でも、とウードは思う。
――きっと、笑った顔は。
想像して、ウードの顔が綻ぶ。だが次の瞬間、笑みは消えて。
――確か、ドラゴンって……。
ウードはベッドから出る。手早く着替えると、家にあった食料をリュックに詰める。
竜族は夜に弱い。
だから身を守るため集団で身体を寄せ合い眠る。
――ガウはいつも、独りじゃないか。
ウードはいても立ってもいられなくなった。




