背中に鬼の顔が浮かんでやがる
1番、ふとももに生ハムの原木飼ってるみたいだな!
「今日の標的はとっても大きい……アッ大きいって股間がって意味じゃないから////」
いつもの、時間がかかるヤヒロさんの説明を聞きながら柔軟運動をする。
どんな強敵かわかったもんじゃないので、一応準備は怠らないのだ。
って、アレ?
今窓の外に人影が見えたような……。
ちょっとまて、ココって二階だぞ?
確かにボロボロ(無駄に意外と広い)建物とはいえ、二階まで誰かが登ってくるわけないよな。
もう一度しっかりと窓を確認する。
いや、いるぞコレ!
なんかすごい僧帽筋(首の下あたりの筋肉)を持つ、パンツ一丁の男だ!
三角筋(肩の筋肉)も、まるでメロンみたいに大きい!
窓枠を掴んでこちらをうかがっている!
「あのヤヒロさん、アレって……?」
「ちょっとちゃんと話を……えっ」
固まるヤヒロさん。
そして、すぐに立ち上がる。
「今回の標的よ!早く倒してきなさい!」
「はいいいいいい!?」
結構周りを探し回ったが逃げられてしまったようだ。
あんなにムキムキで大きな身体だが、逃げ足が速いらしい。
「なんだったんだアイツ……」
「名前は武桐、だって」
「ほぼマンマじゃねえか……」
カシワの情報に突っ込む。
とりあえず人目のない道路まで来たが。
「って、いた!」
目の前には、両手の人差し指をツンツンさせて立ち止まっている武桐さん。
直角のお髭が可愛らしい男である。
しかしアレもアンドロイド。
暴力団を守る社会敵の一員なのである。
「すまないな武桐さん!」
俺は一気に走り武桐さんと距離を詰める。
そして、止まらない腕と足の連撃!
武桐さんは一生懸命ソレを防いでいくが、俺の方が少し早い。
隙が出来たところで、俺のストレートパンチが腹直筋にヒットする!
板チョコのように綺麗に整った腹直筋はダメージに耐えきれなかったらしい。
武桐さんは仰向けに倒れてしまった。
「すまないな武桐さん、アンタはここで終いだ」
武桐さんの上にまたがって、ナイフの刃先を向ける。
振りかぶろうとしたその刹那。
「まって!」
後ろからカシワに制止の声がして、動きを止める。
振り返ると、カシワは持っていたケータイの画面を俺へ向けた。
「いや遠くて読めん」
「えっと、武桐さんはターゲット解除だって……」
「エッ?」
せっかくカッコよく圧倒したのに?
どうやら、武桐さんは暴力団から逃げて来たらしい。
そして、その暴力団は今しがた壊滅したんだと。
「そうだったのか、すまんかったな……」
「いいえ、いいのヨ……」
可愛らしい口調で許してくれる武桐さん。
ブーメランパンツから覗く大腿筋膜張筋(太ももの筋肉)が膨らんでいて美しい。
俺は武桐さんの上から降りると、武桐さんの手を掴んで起こしてあげた。
血管が浮き出る前腕伸筋群(小手の筋肉)を見つめながら、握手を交わした。
その日から、俺は常に武桐さんを感じている。
というのも。
武桐さんが俺に惚れたらしく、どこかから常に視線を感じるのだ。
「出来れば女の子にモテたいなぁ……」
今日も俺はカシワにパフェを奢りながら、
背後の席にいるであろう武桐さんの熱視線を受けるのであった。
ボディビル大会って、筋肉よりもヤジを聞くために見る人多いらしい。
ちょっと行ってみたいです。