俺より主人公するのやめてくれない?
ドリルって言ったらコイツしか出てこない。
白衣の男はニヤリと口を歪ませる。
「ナイフが死んだか……」
取り囲むように立っていた四人の男女が同じくニヤリと笑った。
「アレは別に強いと思いませんでした」
「今日のロードショーってなんだっけ」
「え、そもそも今日金曜日じゃないよ」
「ポップコーン食べたい……」
「我が四天王よ……皆マイペースすぎんか?」
白衣の男は頭をポリポリと掻いてから、それからケホンと咳払いした。
「まあ良い、次のターゲットがアイツなら楽勝よ……」
「そうかなぁ」
四天王の一人、大男のビッグマンは心配そうな顔をした。
「ドリルッ!」
ボロい建物の一室、どうやら暴力団の事務所らしいそこでは二人の男が対峙していた。
一人は俺、イクサ。
そして立ち向かうは、両手がくっついてドリルになっているデカいアンドロイドである。
今度は両手が犠牲に……もしもこけたら自分で起きれないんじゃないかな。
ドリルに振り回されながら突っ込んでくる様は、もはやカッコよささえ感じる。
「行くぞッ!天元テッ……」
「それ以上はいけません!」
どこかしらのヤツみたいなことを言おうとしたのを止める。
危ない、これ以上は盗作になってしまう。
自らの身がボロボロになっていくのも構わず、なんども俺に一直線してくる。
もうイノシシじゃん。
「ていうか、主の事務所こんな壊していいのかコイツ……」
ドリルがぶつかった壁は、何か所も穴が開いて二階下のコンクリート道路が見える。
壁も天井も亀裂が生じて、今にもこのフロアが崩れ落ちてしまいそうだ。
「行くぞォッ!俺のドリルはッ!天をつ……」
「だから止めろぉ!」
俺より主人公しそうなヤツのドリルをナイフではじき返す。
ドリルの重さに身体がよろめいて、そのまま壁に突っ込んだ。
そのまま壁が崩れて……。
「うわぁあああ!」
二階下に落ちて息を引き取った。
「え、えぇ……」
困惑しつつも、とりあえず任務完了のメールを送信する。
うん、まあ、任務は達成したし……。
ナイフをカッコよく鞘に戻そうとしたら普通に手を切ってしまった。
……うぅ、まあとりあえずポーズみたいの決めとくか。
「俺の勝ちだッ!」
ガラガラガラ……!
決めたポーズのまま担架に乗せられる。
カッコつけた瞬間に建物が崩れて重傷を負った。
「なんでカッコつかないんだよ……」
俺は手に巻かれた包帯を眺めながら、今日の病院食が運ばれるのを待った。
ドリルのヤツちゃんとは見たことないけど、MADとかでやばい事だけ知ってます。
真っ直ぐな奴っていいよね。