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底辺

「...そうか。わかった。じゃあ、まずはこの世界の説明をする前に、シャキラの事を聞いてもいいか?いやぁ、町の門で見せた殺気は尋常じゃなかったからな。俺も少し冷を汗をかいたぜ。」


 マークさんはそう言うが、私には余裕の表情でこっちを値踏みしている様にしか見えなかったけどなぁ。


「えと、私はネクト村の戦士の家で生まれました。普段は羊やヤギの世話をして暮らしてたんですが、他の部族との小競り合いや戦争があれば戦いに出てました。というのも、ネクト村というのはとても恵まれた土地だったんで、他の部族に襲われる事が多かったんです。人も、殺した事があります。数え切れないほど...。子供の頃から戦士の父と母に戦闘の訓練を付けてもらってたんで、村でも一番を争える位には強い自信があります。」


 ...父と母の扱きは地獄の様だった。

 ある時は獣の出る森の中で置き去りにされ、ある時は母に川の中で頭を押さえつけられ、意識が飛ぶギリギリの所で引き上げられてを繰り返し、またある時は父の監視の元、手の皮が擦り剥けて血だらけになろうと剣の素振りを続けさせられ...


 駄目だ。思い出したら鳥肌が立ってきた。

 あぁ、唯一の癒しは羊やヤギの世話をしている時だったなぁ。

 まぁ、父も母も訓練と関係無ければとても優しい人だったんだけど...

 どっちも思い込みが激しくて、熱を入れすぎる人だったからなぁ。

 そういえば、さっき村一番を争えるくらい強いって言ったけど、父と母には一度も手合わせで勝ったこと無いんだよなぁ。

 まぁ、でも他の奴には負ける事無いから、間違いではないか。


「そ、そうか。まぁシャキラの体を見れば良くわかる。」


「まっ、マークさん...何て破廉恥な!そんな人じゃないと思ってました。」


「ちげーよ!そういう意味で言ったんじゃねぇよ!それにまだ出会って間もないだろうが。」


「わかってますよ。少しとぼけただけです。」


 少し落ち着きたかったんだ。

 昔の事を思い出したら震えてきちゃったんでね。


「はぁ、たく。それで、随分と戦場の経験があるようだが、シャキラは今いくつなんだ?」


「十七です。...えっと、マークさん?」


 私の年齢を聞いて、マークさんは固まってしまった。

 いや、いつも実際の年より上に見られるんだが、そんなに驚く事かな?


「あの?マークさん?」


「...マジかよ...」


「...マジです。」


「...そうか...まぁ、いいや。とりあえず、シャキラの事は一通りわかったから、今度はこっちの世界を説明しないとな。」


 目を瞬かせ、再起動したマークさんはゆっくりと話し始めた。


「まず、冒険者について説明しようか。冒険者というのは冒険者ギルドの依頼をこなすことで報酬を得て生計を立てている者達の事を指す。依頼っていうのは、人々の困り事で、依頼をした人の事は依頼人と呼ぶ。依頼の内容はさっき話した魔物の討伐や薬草の採取、依頼対象の護衛など、内容は様々だ。」


「あれ、さっき魔物を狩り続ける仕事だって」


「いや、俺はちゃんと『 魔物の討伐、などを、生業にする』って言ったはずだ。まぁ色々な仕事があるんだよ。」


 そうだったっけ?

 まぁ、まずはしっかりと聞いてみよう。


「いいか?依頼っていうのは、基本的にはこの冒険者ギルドを通した物の事を指す。依頼人から冒険者への直接依頼はギルドの管轄外だからトラブルがあっても介入出来ねぇ。まぁ、直接依頼ってのは要するに冒険者ギルドを通せない内容の物って事だから、大体がキナ臭いもんだ。そういった物は全部断るのが無難だろうな。」


「なるほど。つまり、人々の神への願いを依頼という形で受け付けるのが冒険者ギルド。そして、冒険者は神の下僕として依頼を叶えることで神のご意志を表して報酬を得る。それで、神へ祈りを捧げず、神の下僕である冒険者に依頼をする不届き者は粉砕した方が良いという事ですね。」


「あぁ、そういう事か?例えが一々物騒だな...まぁ冒険者ギルドで受ける依頼ってのは、依頼人や報酬などを冒険者ギルドが精査してるからな。基本的にはトラブルにはならん。それに万が一、依頼中のアクシデントや依頼人とのトラブルがあれば、内容によっては冒険者ギルドが問題解決の仲介をする。何か問題があれば冒険者ギルドが補償するって事だな。その代わり、依頼人からの報酬のうち、二割は冒険者ギルドが頂く。ここまではいいか?」


 えーっと段々混乱してきたぞ。

 つまり、冒険者ギルドの出してる依頼で問題があった時、神の手を煩わせる前に冒険者ギルドが補償してくれるから安全って事でいいんだよね。


「...たぶん、大丈夫です。」


「たぶん、て何だ、たぶんて...まぁ、覚える事が多いから混乱するだろうけどな。それじゃあ次行くぞ。...冒険者にはランクがある。一番下はGランクで、そこからF、E、D、C、B、Aと上がっていって、一番上はSランクだ。それで、CランクとBランクは冒険者の数がとても多くてな。質にバラツキが出るから、それぞれ下にマイナーランク、上にメジャーランクってのがある。だからCマイナー、Cランク、Cメジャー、Bマイナー、Bランク、Bメジャーってな具合になる訳だ。」


 うーん、うん?


「マークさん...今のは何かの呪いですか?」


「...まぁ、少しずつ覚えていけばいい。因みに、魔物の討伐を受けられるのはEランクからだ。それで、シャキラはGランクからスタート。いいな?」


「えっ、ちょっと待って下さい!さっき私、戦えるって言ったじゃないか!」


 ネクト村で厳しい訓練を積んできたのだ。

 それはきっとここでも通用する。

 何より、神の試練をこなすには魔物を倒さなければならないのだ!


「あぁ、言ったな。そういう腕自慢は一杯いる。それで功を焦ったやつから死んでいくんだ。戦場に出たことがあるならこの意味は解るよな?」


「...あぁ、解りました。」


 確かに、初めて戦場に出た時、勇んで敵の中へと突っ込んで死にかけてたなぁ。

 はい。身をもって理解しております。


「まぁまぁ焦るな。シャキラならランクなんざあっという間に上がるだろうよ。...あと、冒険者ランクと依頼に関してなんだが、冒険者ギルドの依頼にはそれぞれ冒険者ランクに応じた制限がある。この依頼はDランク以上とか、Cランク以上とかな。まぁ、シャキラはGランクだから、最初は薬草の採取や鉱物の採掘って所かな。ただ、この世界の植生や資源を理解しておけば後々の冒険者人生に大きく役立つ。だから、バカにしたもんじゃねぇ。何事もコツコツって事だな。」


「そうですね。焦ることは無いですもんね。色々と困難はあると思いますが、モンテ様の導きに従い、コツコツとやってきます。」


「あぁ、理解が早くて助かる。モンテ様ってのはいい神様だな。」


 マークさん...

 モンテ様を褒めてくれた...

 あぁ、モンテ様のご威光が異世界にまで。


「マークさん...マークさんもモンテ様の信徒に。」


「いや、ならねぇよ。」

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