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一章 プロローグ

初投稿なので、至らぬ所は多いかと思いますが、読者の皆様に少しでも楽しんで頂ければと思います。


 グランドシスターは右手の人差し指を立てながら、集まった子供達へ静かに語りはじめた。




 世界は元々、大いなる闇に包まれていた。

 

 生き物はおろか、太陽や海、大地、風も、時の流れすら無かったそうよ。

 

 それで、生も死もない世界を憐れんだ神様は、光を灯すために闇の中へと飛び込んでいった。


 その神様が唯一神モンテ様。


 モンテ様は自らが光となって辺り一面を照らした。

 ただ、とても強いお力を持つモンテ様でも照らし切れないほど、闇は深く世界を覆っていた。

 だから、モンテ様は世界を照らす旅に出たのよ。

 世界中を歩けるように大地を創り、自らがおられる場所を見失わないように空と星を創り、遠くを見渡すために山を創り、 喉が乾いたら湧き水を創った。

 

 世界を照らす旅はとても過酷なものだった。

 どれだけ歩いても世界の果ては見えず、払うべき闇は延々と拡がっている。

 そればかりか、照らし出された闇の中には凶悪な化け物が潜んでいたの。

 三つ目の巨人に、炎を吐く龍、洪水を起こす蛇に、とにかく疾い虎。

 でも、モンテ様はとても強いお方だった。

 並み居る化け物を全て討ち滅ぼし、遂に世界中を光で照らしたのよ。


 気の遠くなるような長い長い旅路を終え、モンテ様は疲れ果ててしまわれた。

 それは、照らし出した世界を保つのが難しい程に。

 光に満ちていた世界は、モンテ様のもとから離れれば離れる程に暗くなっていく。

 そこで、モンテ様は残った力を振り絞り、二つの球を空に創り出したのよ。


 世界を照らす力が込められた太陽。

 光が届かない暗闇を監視する月。


 太陽は溢れんばかりの光で大地を照らし、月は新たな化け物が現れぬよう暗闇を監視した。


 それからモンテ様は世界中を生の息吹で満たす為に、大地に草花を咲かせ、土塊から動物を創り、それらを管理するために自らの血で人間を創り出したの。


 力を使い果たして息も絶え絶えなモンテ様は、そのお体を癒す為に、世界で最も威厳のある山の頂きでお休みになられました。


 これは私たちが信仰するモンテ教の天地創造のお話。


 ...それではお話を物語の方へと移していきましょう。


 とある世界にはネクトという名の村があり、そこにはシャキラという名の一人の少女が住んでいたの。


 ネクト村の周りは草原が拡がっていて、近くには綺麗な川が流れていた。

 村の南へ行くとカラッカラの砂漠が拡がっていて、北には険しい山々が聳えていた。

 昼は熱くて陽射しも強いけれど、夜は涼しくてとっても心地良い所だそうよ。

 村人は小麦や豆などを育てたり、ヤギや羊を飼って生活していた。

 シャキラも普段は羊やヤギの世話をしてたそうよ。


 まぁ、とにかく、砂漠や険しい山に囲まれてはいるものの、ネクト村はとても住みやすい土地だった。

 それで、素晴らしい土地を与えてくださったモンテ様に、村の皆はとても感謝していたのよ。

 とても、感謝していた。

 …だから、ネクト村では昔から感謝の証しとして十年に一人、モンテ様へ生贄を捧げる決まりがあったのよ。


 村の北にある山脈の中でも一際高く聳える山、霊山ベッティカ。


 ネクト村の皆は、モンテ様が霊山ベッティカの頂上に神々しい白い粉をまぶして天界を築き、そこで休まれていると信じていた。

 その霊山ベッティカの麓にはとてもとても大きな洞窟があったの。

 ネクト村の皆はそれを「マコラの洞窟」と呼んだ。

 奥が見えないほど深くまで続くその洞窟は、モンテ様の住まう天界へ至る道だと言われていた。

 ...ただし、生贄以外の者が山へ入ると、その者は山に喰われ、二度と戻って来れなくなると伝えられており、一部の者からは「人喰いの洞窟」と恐れられていた。


 話を霊山ベッティカへと戻しましょう。


 霊山ベッティカの頂きにかかる白い粉は、一年で最も暑い時期になると無くなってしまうの。

 白い粉はモンテ様の拡げる天界だと言われており、モンテ様は他の世界の神々を天界へと招き、毎日盛大な宴をして疲れを癒していた。

 そして、人々が厳しい暑さに苦しむと、少しだけ疲れを癒したモンテ様は天界を畳み、暑さに苦しむ人々を救うために下界へと降りてこられた。

 それを見てネクト村の皆は、モンテ様が天界を畳んで下界へ降りるのを目安に一年の区切りをつけていたのよ。


 …それで、この年は前回の生贄が天界へ向われてからちょうど十年。

 ネクト村の民は唯一神モンテ様が霊山ベッティカへとお戻りになられたのを見て、生贄を捧げに行った。

 その栄えある生贄がシャキラだったという訳。




 そう、この物語は私がモンテ様への生贄に捧げられる所から始まった。




 村の皆に別れを告げて村長と巫女様、護衛の戦士と共にマコラの洞窟へと旅立ってから、太陽と月がそれぞれ五回ほど昇っただろうか。

 この日、朝早くに野営を切り上げた私たちは、広い草原を抜けて山の麓まで来ていた。

 マコラの洞窟はもうすぐだ。


 あぁ、もうすぐでモンテ様に会える。

 きっととても逞しくて、優しくて、カッコ良くて、頭が良くて、凛々しくて、腹筋とか割れてて、胸板とか厚くて...

 そんなモンテ様の血となり、肉となれる...

 うん、駄目だ、想像しただけで鼻血が出そう...


 ...一旦落ち着こう、私。

 こういう時はサソリの出産を思い出すんだ。


 ...ウエッ、キモチワリィ…


 はぁ...何か他のことを考えよう。

 そういえば村を出る時、村の皆は「おめでとう」と言ってくれたけど、何で泣いてたんだろうなぁ。

 確かに皆に会えないのは寂しいけれど、とても喜ばしい事なんだから泣くことなんか無いのになぁ。




「さて、着いたぞ。」


 村長の声を聞いて頭の中の回想を脇へ追いやると、目の前に拡がる山肌を眺めた。

 人の立ち入りを拒むかのような険しい山肌、その一角には大きく縦に裂けている洞窟があった。


「ここが、マコラの洞窟...」


「そうじゃ。この奥がモンテ様の御許へと続いておる。」


 この洞窟を進めば...モンテ様のもとへ...

 あぁ、胸が高鳴る。


「それでは、儀式の準備を始めるとしようかの...シャキラよ。」


「ハイッ!」


 村長の小さな声に、私は元気よく返事をした。


一章 六話からは二、三日に一話のペースで更新します。


すいません、テコ入れでストック分を順次投入します。

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