2.製錬した鋼を剣の形にする。
原材料は手に入った。俺はルーン製錬炉に鉄鉱石と木炭それぞれ原材料を入れ、魔力を封入する。ルーンの制御装置を設定位置に移動させ、鉄鉱石の還元と不純物除去、そして炭素との合金をこの炉一つで行う。
炭素含有量は1.4%に設定。といっても数値化する装置なんかない。これは俺の経験で行う。因みにこの1.4%は日本刀には欠かさない玉鋼に近い含有量だ。
俺の鍛冶場は川の近くの傾斜のある斜面に廃れた水車小屋を改造して作った。川から引っ張った水をダムの様に溜めて、そこから一定量の水が流れ出るようにし、その水流を利用して水車を回し、断続的にふいごを稼働させ空気を送り込む装置を作った。
これは空気を送り込む為だけではなく、大きな金槌を稼働させるためもあった。これがあれば、弟子が居なくても、一人で鍛造が楽になる。
暫くしてから脇からスラグを抜き、底から溶解した鋼を抜き出す。
それを金型に流し込み冷やして剣に使う鋼の完成だ。だが、それをそのまま剣の形にするのか?
いやまだだ。
大量に生産するならある程度形になった金型に流し込んで鋳造し形にしてしまうが、俺はここから鍛造する。手間暇かかるが、やはり鍛造の方が素材としては強靭だ。
鍛造とは、熱した鋼をガンガン叩いて成形する方法だ。こうする事によって内部の気泡を圧着し金属結晶を整え素材がより強靭となる。
俺は前工程として出てきた鋼を熱して叩いて伸ばして真ん中で折って、熱して叩いて伸ばして真ん中で折ってを繰り返す(織り込む回数はある程度決まっている)。こうすることで幾重にも重なった鋼がより強い素材となるのだ。
この工程ではちゃんと木炭と炉で熱する。ふいごも手動だ。手動と言っても断続的に送られてくる空気を敷居で塞いだり開けたり調整するだけだが。
この鋼を鍛える工程で重ねた回数の違う鋼を二種類作る。重ねた回数が多い方は硬く、鋭い刃になる。少ない方は重ねた方より硬さが無い分靭性が高いので剣を折れにくくするために峰に使う。
二種類の鋼を重ね合わせ叩き伸ばす工程で圧着しながら成形の『素のべ』を行う。この時『水打ち(熱した鋼に水をかけ叩くと小さい破裂が起きる)』を行うとカスを取り除けて表面が滑らかになる。
さて『火造り』だ。鋼の棒をハンマーで叩いて剣の形にする。
今回は両刃の剣で世間一般受けを狙うため重心はガード(鍔)になるようにする。ポイント(切っ先)は細く根本は太くする。こうする事によって持ち主は重さをそこまで感じず早い振りを行う事が出来るようになる。
剣の形状は両手でも片手でも扱えるハンドアンドハーフソード(バスタードソード)にする。刀身は長めにしたいので、後々バランス取りの為、ヒルト(柄)を長くできるよう芯を長くしておく。
重心をガード(鍔)にするため、刀身に重量がありすぎては駄目だ。なのでフラー(樋)という溝を剣の峰に掘る。これは刀身の強度をそこまで損なうことなく軽量化できる。成形する際にやりやすくなるよう平坦にしておく。
平たい部分を軽く叩いてヤスリ掛けをして『生仕上げ』を行う。
今作っている剣は両刃の剣だ。焼き入れは慎重に行う。時間差が出来ると変に反ってしまったり割れたりしてしまうので慎重にかつ思いっきりが必要だ。温度が高すぎてもダメ、低すぎてもダメだ。
焼き入れに成功すると鋼はより硬くなるが、このままだと折れやすくなるので焼き戻しを行う。この際焼き入れででた歪や反りを打ち直してちゃんと成形しなおす。
刀の場合は刀身に焼刃土を置いて冷却の時差を付け、波紋と反りを作るが、この剣にはそれを行わない。
やれやれ。気づいたらもう三日経っていた。少し休もう……。するとトントンと雑に仕上げたドアをノックする音が聞こえてくる。返事もしないまま勝手に開けるノック主。
「──鋼抜鍛雷殿! 考え直してくれ! ぜひ我が王国へ!」
やれやれ、またエリノール王国のウッドエルフか。
「──帰れ! 俺は寝る!」