25.司教のもたらす神託。
村人達は緊急井戸端会議を始めた。議題は大鎌の扱いとそれを持った村の女についてであった。
「あんなお前んとこの嫁、初めて見ただ!」
「大鎌を持った途端だべよ!」
「あんの大鎌は祠さ作って神々へ奉納するべきだっぺ!」
「んだ! オラたちが扱うっちゃ危なすぎるべ!?」
「でもよぉ、お蔭で一人も犠牲者ださづに助かったべ?」
「「「う~ん……」」」
ガヤガヤと村の衆は、俺をチラチラ見ながら議論する。なんかチクチク刺さるな。当然か……。しかし大鎌を持った、俺をヤマアラシ扱いする子供の父親の嫁は、駄々をこねる。
「嫌だっ! こらアタイのだ! オラ、この村さ守るために産まれてきただよ! そげにちげぇねぇ! それが使命さ、天命だったんだよぉ!」
「一人称、オラかアタイかはっきりせえっ! それにそげなオーラだしっぱじゃおっかねぇ~べよ!」
──確かに。
俺が作りなおした大鎌を持って以来、彼女は赤黒い禍々しいオーラを放ち続けたいた……。
と、そこへタイミングよくやって来たのが俺の領主となった、ウェデックス王国王太子でありシャーホン伯爵のアルフレッド殿下と、エレントールに殴られた役人ブルーブルースに従者兵士達であった。彼等は急いで駆けつけて来た様だ。しかし現場を見て困惑の声を上げる。
「お、おい!? これはどういう事だ!?」
「殿下……これは一体!?」
「オーガが三体倒れている……? 村人の犠牲者は何人だ!? 状況を誰か説明してくれ!」
そして従者達は槍に矛にと、倒れたオーガにそれを向けてビビりまくっている。
「し、死んでるのか……?」
「オーガなんて初めて見るぞ……」
「まじか……あ~神よ……」
そして遂に禍々しいオーラを放つ彼女を発見し、
「う、うわぁ!? し、死神!? うわぁぁ!?」
「ほ、包囲しろ! 警戒態勢! 妙に禍々しいオーラを出しているぞ!」
「お、俺達生き残れるのか!? ぐぬぬ!」
へっぴり腰で包囲した。止めに入る旦那。
「──ま、待ってくれぇ! それはオラの嫁だぁ!」
「「「──えッ!?」」」
すぐに村人達は犠牲者ゼロである事を伝えた後に、続けて状況説明に入った。
「「「かくかくしかじか」」」
「なるほど、そう言う訳か……」
「殿下……」
──そして遂に全員が、俺を凝視した。
俺は冷や汗をかいたが、むしろ胸を張って顎鬚を撫でた。アルフレッド殿下は言う。
「──ブルーブルース。司教はまだ来てないか? すぐ連れて来てくれ」
「は、はいっ! 畏まりました! 直ちに!」
「う~ん。で、どうするか……」
ごくり……。俺は唾をのむ。アルフレッド王太子殿下は中々答えを出せずにいるようだ。沈黙が時間を長く感じさせる。すると役人ブルーブルースに状況説明をされながら、不愛想なロバに乗った、これまた不愛想な司教とやらが現れる。村人達は信仰心が強いのか、すぐに拝みだした。
「はぇ~! 司教様だ!」
「久々に見る気がすっぞ!?」
「ありがて~ありがて~!」
「「「なむなむ~!」」」
だが、司教は若干不機嫌そうに言った。
「はぁ~……。迷える子羊達よ、拝む暇があったら自ら考え行動しなさい」
(やれやれ……)
「「「……ぇ?」」」
『ちょっと何言ってるか判らないんですけど?』と言う顔をする村人。司教はそれを見て眉間にしわを寄せ、だるそうに口を開く。
(あ~めんどくせ)
「あ~っと? そう言えば今朝神託がもたらされました」
「「「おお!」」」
(──嘘だけど)
おいおい、俺には聞こえたぞ……!
「適切な未婚の女性を探し、その人にその大鎌を持たせなさい。そして豊穣と生死を司る神の巫女とし、近くに社を建てて住まわせなさい。さすればこの村は多少の脅威からは守られるでしょう。……以上。おわり。さよなら」
(眠い。帰る……)
「「「ありがたや~なむなむ~!」」」
司教はそう言うとあくびをし、不愛想なロバの向きを変え、遂には帰って行ってしまった……。なんちゅー司教だ……。しかし全く動じなかったな……。何者だ?




