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24.サウスオークウッドの死神。

 大鎌の研ぎ作業に入る俺。俺の性格上ピカピカになるまで研ぐ為、その作業は非常につまらないものとなった様だ。見物客はその数を減らしてしまう。むしろ静かになってよい。


 男性陣は既製品の鍬『クイアハエンのホー』の試し耕しに賑わう。メレアインはレジンオパールで女性陣を従え細工の講習会を始める始末だ。


 数人の青年と、俺をヤマアラシ扱いする子供が俺の研ぎ作業をただひたすら眺めている。中々見込みがありそうだ。弟子として取ろうか? しかし大変な肉体労働に音を上げるに違いない。俺の経験から言わせてもらえれば、その想像以上の過酷さに半数以上がまず付いて来れないだろう。


「ふんっ!」


 まぁそんな事より、この村は防壁もなく、村に駐留する衛兵も見た事が無い。これは危惧すべき問題だ。転生して以来、人間世界に赴く時、その殆どが無防備な村ばかりだった。何故それで問題が無いのか?


 冒険者ギルドが依頼に困らない理由となってしまっている。


 ドワーフ世界は、常に地上、地下、上空の脅威から安全地帯を作らねばならなかった。その為発達した山を丸ごと城塞とする技術。それは山をくり抜き、内側に街を形成する技術だ。


 入り組んだ細い通路で地上からの侵入を防ぎ、居住する空洞空間の壁を硬い岩と金属で補強して地下からの侵入を防ぐ。そして空からの脅威は山が防いでくれる。山の中なので暗いと思われるが、無数の通気口と共に採光もされており、困る事は無い。


 しかし人間は、作っても防壁を築くまでであり、この村に至ってはそれさえない。俺はそんな事を考えながら、であればこの村を防衛する手段をどうするか考えていた。


 人間はその数を保つための広大な領地農地を有しており、中心地であってもその労働力を集中できずにいるのではないか? 或いは文化? 平地の種族であるからそもそも山に住む文化が無いのか?


 200年以上もドワーフをやっている俺は、その4分の1も生きていない前世人間の記憶が薄れてしまっていた。よくよく思い出してみれば、山をくり抜いて城塞とするなんて、どんな技術で簡単に成しえると言うのか?


 俺は心で笑いながら、クイアハエンのホーを力強く振るう農夫たちを見た。


 大規模な城塞を築ける土壌にないのならば……そうだな、せめて農民自体に自衛手段があれば……。


 彼らの使っていたボロボロの農具を、俺の技術を使って新たにしている。ならば、そのついでに持ち手の彼らを強くしてしまおう。ルーンワードにはそれが出来る。


 俺は大鎌に刻むルーンワードを何にしようか研ぎながら考えた。


 大鎌か……。ふふん! 俺の中二病心が強く刺激されるぞ。


 仏教、ヨハネの黙示録、童話……。色々パロっていって……『汝、輪廻転生の理にして神に仕える農夫なり。一日の小麦一金貨の世になれども、彼の地の蝋燭を絶やす事なかれ』……。


 ふ~ん。要約すると『終末の様な時が来ても、死神の様になってこの地を守りやがれ!』って事だ……中二病全開だな。……まぁいい、よし。魔鉱石を少し良い奴に変えようか。これは投資だ。材料収拾で俺が居ない間に村が灰燼となられたら困るからな……!


 俺は刀身にさっきの文をラテン語訳して刻み、ルーンワードを発動させた。さて


「……大鎌の女は何処だ?」


「あ! 出来ただか!?」


「おう。……手に持って見ろ」


 『あっ』と、メレアインがルーンワードの内容にすぐ気づいた様だ。さてさて、今回の彼女はこれをどう命名するかな? ……ん? 何やら、メレアインは命名に困ってしまった様だ。俺はどうしたものかと唸る。


「ふう~ん……」


 だが大鎌を持った女は大はしゃぎする。


「おお! なんだか、なんだかオラ、滅茶苦茶強くなった気がすっぞ!?」


 大鎌のルーンワードが強く輝く。彼女から妙なオーラが沸き起こる……! 赤黒いオーラが……! 俺はそれを見てメレアインの困惑の理由に気付いた。ど、どうやらこれは……やりすぎた様だった!


「お、オーガだぁぁぁぁぁ! 村にオーガが来ただぁぁぁぁぁ!」


「「「──ッ!」」」


「男どもは武器さ持って集まるだぁぁぁぁ! 女子供は逃げろぉぉ!」


「「「う、うわぁぁぁ!」」」


 突然打ち鳴らされる敵襲の合図。ほら見ろ! 防備の無い村はいつ襲われるのか!


 ──しかし。


「なんかオラ、なんかオラ勝てる気がすっぞ!? オーガでも勝てる気がすっぞ!?」


「な!? 何言ってるだぁ!? 馬鹿な事いうでねっ! はよ逃げれ!? って!? なんだその目!? 目がめっちゃ光ってっぞっ!? な、なんだぁっ!?」


 彼女の目は、真っ赤に光っていた……! 激しく噴き出す禍々しいオーラ!


「駄目だぁ! 使命を感じっぞ!? やっぞ!? オラやっぞ!!」


「は、はぁ!?」


 止めようとする農夫も虚しく、彼女は()る気満々だ……! 何処から迷い込んだのか、鬼の形相で迫るオーガ達3匹。人肉に飢えたオーガは逃げ惑う農民達を追い掛け回す。このままではまずいか? 俺はすぐさま武器を取るが、


 ──どうやら俺の出番はなかった様だ。


「ハァァァァァアアアッッ!!」


 ──シュバシュバシュババッ!


 止めようとした農夫は、開いた口が塞がらない。


「な……なんてこった……。オ、オラの()さ……滅茶苦茶強くなっちまっただぁ……」


 俺は頭をかく。ポリポリ……。オーガ3匹の魂は彼女によって全て


 ──()()()()()()

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