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20.ウッドエルフのお家芸。木材の確保。

 されど木材……困った。エントの端材には限りがある。


 あいつが裏の山のサウスオークウッドのレンジャー(森の番人)になってしまったから、勝手に伐採して木材の調達をするのが難しくなってしまった事を失念していた。しまった。


 どうせあいつの事だから、抜かりなく森の木々を覚えているに違いない。一本残らずな……。ウッドエルフってのはそういう奴らだ。しかも奴らにとっては『木にも人権』で、『ウッドエルフに管理されるべき存在』だから、勝手に木を伐採したら間違いなく面倒事になる。メレアインとの共同経営も難しくなってしまうかもしれない。


 仕方ない。メレアインが帰ってきたら相談しよう。……と、都合よく彼女が帰ってくる気配を感じた。南から彼女の足音が聞こえる。……ふんっ。どうやら道草食っていた様だな。花の冠なんぞ作って頭に被っているわ。しかしあいつはいつも笑顔だな……。能天気な奴だ。


 だが、女の笑顔と我儘は平和の象徴だ。有事の際は真っ先に奪われるからな。……ふんっ!


「帰って来たか、エレアイン」


 彼女は笑顔で手を振る。


「蹄鉄は配り終えたか。ありがとな。ところで兄は国へ一旦帰ると言っていたぞ。そこで相談したい事があるんだが、木材を至急調達したい」


 俺がそう言うと、彼女は『あっ!』という顔をした。すると軽やかなステップで俺の横へ来ると、手招きして森へ案内しだした。軽やかなステップって……。


 だが、そんなツッコミも森へ少し入るとすぐ吹っ飛んだ。


 俺の知らぬ間に森は見事に管理されていたのだ。


 間伐、枝打ち、剪定が徹底されている。適度に木漏れ日が苔生す地面を照らし、枯れ木、倒木は整然と並べられ茸の苗床となっていた。森の中なのに明るく温かく感じ、それとは矛盾するのだが、涼しさも感じる不思議な空間となっていた。


「う~ん……」


 俺は方眉を上げつい唸る。動物も、リスとか兎とか、鹿とかイノシシまで肥えて元気一杯にしている。虫も多いな……。そんな中、彼女はどんどん森の奥へ俺を案内する。


 すると少しずつ森の様相はエリノール王国の樹海の様になっていった。説明するなら、なんだか光る虫の様なものが幾何学的な軌跡で宙を飛んでいたり、なんかクルクルした植物があったり、ブフッと胞子をまき散らす妙な植物があったり。


 挙句には銀色に輝く鎧を纏った大きなカブトムシまで居るじゃないか。これは流石に初めて見る。メレアインはその虫の横を通り過ぎるとき、コンコンとその外殻をノックして見せる。だがビクともしない銀色巨大カブトムシは堂々としている。俺はその外殻を触ってみると、驚いたことにこの外殻、何らかの金属ではないか……!


 俺はサンプルを取りたい衝動に駆られるが、やめておいた。


 一体こんな短期間でこの森……どんな手を使ったんだ……? まさにウッドエルフのお家芸だ。


 そして大きな木が現れ、その幹中ほどの(うろ)にドアがあった……。おやおやファンタジーだな。これこそがエリノール建築様式の住居だ。木の名は『ポフツカワル』と言う木だ。これは知っている。


 『ポフツカワ(ニュージーランドの木)』のエルフ版巨大樹で、マグマで焼き固められた地でも、オークが荒野化した土地でも一気に生態系を回復するとんでもない樹木だ。はは~ん。こいつをだいぶ前にしれっと持ち込んでいたのだな……。ここに住み着くのはウッドエルフの計画であったと……。


 いやまてよ? と、言う事はうちの領主のアルフレッド、まさかそれを知っていて森を外交取引の材料に……そして同盟か?


 そうか、それもそうだな。東には過去に邪神を倒され、やる気の無くなった魔王軍と、今まさにアンデッドと人間が係争中の地……。


 南はファンセイヌと言う騎士の強国があり、う~んなるほど、北はきな臭い敵性国家が居る予感がするぞ……。確かウェスランド七王国とか言ったな……。その更に北はハイエルフ野郎の国、アルフヘイム共和国だ。


 つまり、ここから北東に国境を接するエリノール王国と同盟を結んでおけば少しは安心というわけだ。ま、俺には関係ないがな。攻めてくる奴は誰であろうと全員俺が蹴飛ばしてやる……!


 おっと! メレアインが『どうしたの?』って顔で俺を見ているぞ?


「──いや、ちょっと考え事をな……ん?」


 彼女は間伐、枝打ち、剪定で出たのであろう乾燥させている木材を俺に見せてきた。


「おお! まさかこれを使っても良いのか!?」


 彼女はコクっと頭を縦に振った。──よしよし!

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