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17.朝、蹄鉄造りの為に炉に火を入れる。

うわぁ~朝だ……

 俺は、どうにも舞い上がっている。


 それ以上に、エレントールは俺の申し出に、夜間だと言うのに外へ出て奇声を発している。メレアインは、自分の作った鞘に収まった俺の刀身の刀を受け取った。メレアインは言葉を発しなかったが、嬉しそうな顔をしていた。


 まさかな……。


 まさかこんな所、こんな時勢にすばらしい逸材と共に仕事ができるとは思いにもよらなかった。彼女は間違いなく鞘師や巻柄師の才能があった。しかも見事な装飾から、彫金、塗金等という細工師全般の能力も極めて優れていた。


 よほど努力して得たものに違いない。しかし何故、今までこれ程の逸材が表に出てこなかったのだろうか?


 俺は二人に夜も遅いので泊まって行くよう提案したが、ウッドエルフの宿はサウスオークウッドの森と決まっているようだ。ウッドエルフにとっての森は、最高級ホテルの様なものらしい……。野宿とどう違うのか……。


 そしてエレントールには、領主様であるアルフレッド王太子殿下の例の件を伝えておいた。レンジャーとしてスカウトしたいと言う例の。しかしウッドエルフの考えている事は俺にはよくわからない。さてさて、どういう判断を下すだろうか。


 二人が森に消えた後、俺は舞い上がる気持ちを少し抑える為に、依頼であった蹄鉄造りの準備をしてから少し間を取り寝る事にした。


 ☆


 翌日、水の流れる音、水車の回る音で俺は目を覚ました。今回はイビキで起きなかったようだ。寝ボケる目には、鍛冶場小屋の隙間から入る朝日がどことなく温かい。


 さてさて時間が無い。さっさと蹄鉄を作ってしまわないと領主様が来てしまう。


 俺は重い体をもそっと動かす。


「ん?」


 するとどうやら二人は既に来ているらしい。俺は外に出る。


 やれやれ、ウッドエルフは朝も早いのか? まるで老人みたいだな。とか、思えば俺も既に200歳を超えていたっけな。時が経つのはあまりにも早い……。


 エレントールは領主様に渡す予定の不戦勝の剣を勝手に外で振り回しているようだ。蝶の様に舞い、蜂の様に刺す。そんな感じの動きで見事だが、俺からしたら動きに無駄が多くまだまだ隙だらけだ。


 俺ならこいつを蹴り一発で倒せるな。


「おや? 鍛雷殿。お目覚めですかな?」


 空は澄み渡った春の陽気だった。そうか、思えば今は春だ。


 朝のやや冷たい風と、朝日のほんのり暖かい日差しが何とはなしに心地よい。朝日には、鬱病を予防するセロトニンを分泌する効果があるのだと言う。


 最近気分が落ち込み君の人は、朝に散歩してみると良いかもしれない。


 ただ、空が曇りとか、これから通勤で寝不足であったなら同情する……。俺もまだ眠い……。剣を作ると言うのは不規則だからな……。慢性的な自律神経失調症なのではと疑ってしまう。


 とにかく深呼吸しよう。


「フゴォォォオオオ! ──ブフゥゥゥゥゥゥゥゥッ!」


「おお! 鍛雷殿! それは気功術か何かですかな!?」


「……ただの深呼吸だ」


 メレアインはその辺の物を上手く利用して台と椅子とし、何やらせっせと細工しているようだ。自由だな……。こういうタイプは『あれやれ! これやれ!』と言ったら才能を潰してしまう。放っておこう。


 と、その時、彼女は俺に気付いて無言で笑顔を見せると、同時に手元の鞘も見せてきた。まだ途中の様だが、どうやら領主様に送る不戦勝の剣の鞘を作っていたらしい。


 なにより……!


「ふんっ!」


 俺は少し笑顔になったのを鼻息を荒くしてそれを隠すと、蹄鉄作成の為に炉に火を入れた。

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