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11.サウスオークウッドの木漏れ日で考える。

 ☆


「ブルーブルース(殴られた役人の名前)。彼には絶対手出し無用だ。いいな?」

(手を出した所で絶対勝てないだろうが……)


「ええ!? 領主様!? では、私は殴られ損ですか!?」


「ああ、そうだ。金貨三枚でどうだ?」


「う……。お、お受け賜りました……」

(金貨三枚か……。うひひ! 今晩何食べようかな?)


 シャーホン伯爵アルフレッド王太子殿下は、殴られた役人ブルーブルースと兵達を引き連れ帰っていった。これから彼が、俺の“領主”と言う訳か。つまりこの地はウェデックス王国シャーホン伯爵領と言う訳だ。


 その為か? 俺は柄にもなく敬語を使ってしまった。ウッドエルフの女王やかつてのドワーフ王に対してさえ、俺はため口だったと言うのに……。人徳? なんだ? あいつはもしかしたら何かデカい事やり遂げそうだな……。


 まぁいい。そんな事より、思えばこの村の名前さえリサーチして居なかったな。俺はまだ残っていた子連れの野次馬農民に聞いた。


「おい。ここは何て名の村だ?」


「パパー! ヤマアラシが居る! アハハ!」


「こ、これぇ! そげな事言うんでねぇ~!」


 大丈夫だ。慣れてる。


「……で」


「あ~すまねぇ~! この村は『サウスオークウッド』だ!」


 なんだ。裏の森と同じ名か。やれやれ、これから忙しくなりそうだな。俺は背を向けお礼の手を上げると作業に戻ることにした……。


 ☆


 ふん……あいつ。かっこつけやがって。俺は少し笑顔になった。あの領主が要望したルーンワードは『出来るだけこの剣を使わずに問題解決できるようなルーンワード』だそうな。へッ……バカヤロウ……。難題吹っ掛けやがって。


 恐らくあの領主は俺の正体をおおよそ見破ったのだろう。俺は隠す気はないが、奴は部下に俺の正体を隠した。多分だが、貴重な国有財産で極秘とでも考えたのだろう。……俺も随分出世したな。ここは乗っかって他言は避けようか。


 面倒になりそうだしな。


 さて、この剣を使わなくて済むルーンワードか。どうしたものか……。


 初めに『ルーン』とは、実はゲルマン人あたりが使ったただの文字だ。しかし奴らはその文字に魔力があると思って石に文字を刻みお守りとした。この辺が起源だろう。だが実際はどうだろうな?


 この世界には実際に、潜在的であれ魔力が備わっていることは確かだ。


 因みに俺の『ルーン』は、『ルーン文字』でなくても良い。何故なら、実はこの世界の文字には全て、魔力が備わっている。ルーン文字でもラテン文字でも漢字でも良いのだ。


 重要なのはその文字や単語に含まれる意味や概念だ。これを俺はルーンスミスの技術を使って表に引っ張り出し覚醒させるわけだ。


 剣を使わずに問題解決か……安直に話術、交渉術、カリスマ性、知性、魅力……う~ん。


 俺は少し剣の峰を眺めた後、考えが行き詰った為、水車用のダムの脇に生えるオークの木の木陰で横たわり、そよぐ風に当たって目をつぶった。アイディアを閃くにはリラックスした状態が良い。アインシュタインもそう言ってたしな……。


 ☆


「──ンゴゴッ!」


 あ~ここは? 木陰か……やっぱり寝てしまったか。わかってたさ。だがしかし……夢で思いついたぞ……!


 ──孫子兵法の一説を借りよう。


 『兵は国の大事にして、死生の地、存亡の道なり』……。


 ちょっと違うな。……ああそうだ!


 『およそ兵を用うる法は、国を全うするを上となし、国を破るはこれに次ぐ。故に、百戦百勝は善の善なるものにあらず。戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり』……これだ!


 最後の部分が特に良いだろう。『戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり』つまり、


 ──『戦わずして勝つ』だ!

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