21話
初恋は男の人だった。
変だと思う?いや、俺は変じゃないって今でも思うよ。だってあの人はキラキラしててカッコ良くて、楽しいって気持ちが演技から溢れ出してて。
多分好きの形は違うにしても誰もが好きになってしまうだろう。俺も初めて見た時から大好きだ。
だから俺は、ここに立っている。
あの王子様みたいになりたいから。何かを作り上げる楽しさを、何より舞台から見る観客の表情を知ってしまったから。あの人と全く同じ景色を見ることは叶わないけど、俺はきっと同じもののためにこうしている。
自分の演じた舞台の映像を見たことがあるんだ。
その時の俺はあの王子様と同じ顔をしていた。もし俺の演技で誰かに何かを残せたならそれより嬉しいことってないよ。
だってそれは俺がここにいたことの証になるでしょう?
「っおわったーー!」
「お疲れさん」
「完璧でしょ。だいぶミスも減ったしあとは調整して本番を待つだけって感じだな」
「そうだなあ。それにしても1時間ブッパってのは見てる方も疲れる」
「やってる方はもっと疲れるからな。……あのさ、部活とは直接関係ない話なんだけどお前裁縫とか得意だったよな?」
「まあそこそこ」
「頼みがあるんだけど」
俺は衣装の一件を智仁に話した。前から探していた王子様の衣装が見つかった事。着るかは置いておいて、見れるように整えて欲しい事。
智仁は脚本の他に部活の衣装を手掛けている。衣装の状態から引き受けてくれるかは五分五分だったが、智仁は渋々と頷いてくれた。
「……まあ家ではもうやることないし引き受けてやろう。報酬は学食1週間分な」
「よっしゃ。じゃあよろしくな」
「本番まで?」
「出来れば」
「了解」
「大事にしろよー。王子様の衣装なんだからな」
智仁は紙袋に入ったそれを受け取ると、一瞬、目線を俺から外した。
「……あのさ」
「ん?」
智仁は言いにくそうにしながら次の言葉を探している。
「……いつまでそれやってるつもり?」
「は?」
「いや、やっぱなんでもない!じゃあこれ預かっとくな!」
いつまでっていっても。
「この思い出までなくしたら何を信じればいいんだよ……」
言葉を投げた相手はもういなくなっていた。
もしだ、この世界に俺を救ってくれる王子様がいないなら。
考えたこともなかった。だってそんなこと考えたら心が折れそうだったから。
でももし、王子様がいないなら。
……タイムリミットは近い。
(いやいや俺には王子がいるから大丈夫!きっと助けてくれる!)
でも俺は、いや今の俺は。
王子を”王子様”に仕立て上げる事は出来るのだろうか。




