13話
「……よし、今日はこのくらいでしゅーりょー!」
「おつかれさま」
「王子ちゃんと見ててくれた?俺カッコ良かった?」
「見てた見てた。アンタが噛んだとこまで全部」
「そこは見逃してくれても良かったんだけど。もっと本番までに完璧にしないとなぁ。なんか最近調子悪くて」
「色ボケ?」
「そんなはずは……ないは言い切れなくはないんだけど……。もっとしっかりしないとね、最後なんだから」
「最後?」
「あぁ、俺大学行かないから、就職するんだ。内定も決まってるよ。だから演劇はこれで最後」
ありがたいことにこんなナリで安定した寮付きのところに就職できた。
春から一人暮らしをすることは、まだ誰にも話してはいない。
「なんで?好きなんじゃないの?趣味の範囲で、とか社会人サークルもあるのに」
「……んー、なんだろ。けじめ、みたいな?もう俺は十二分にいい思いしたから。これ以上いい思いしたらバチが当たっちゃう。だからダメなの。だから俺は今回の文化祭に全力をかける。そのためにもっともっと頑張らないとね。……これから俺部活行くけど王子はどうする?いつもみたいに帰る?」
「本は読み終わったからもう用はないかな」
彼は本を閉じると立ち上がる。
「じゃあ今日はこれでバイバイだね〜。悲しいけど……これが運命!さよなら王子様!私はいつでも貴方を思っているわ……!!」
「そういうのいいから。……じゃ、また明日」
「え!?」
「……ま、また明日っ!!」
ぶんぶん手を振って見送ると彼も小さく手を振り返してくれた。気恥ずかしそうな表情が可愛らしかった。
「明日、も来てくれるんだ……」
(いや今までの流れじゃ当然明日も来るだろうとは思っていたけどこう改めて言われると……)
「……少しは期待してもいいのかな」
王子様と幸せになれれば、お姫様はハッピーエンドを迎えられる。
それを信じて、俺は待っている。




