表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
集団転移!ーギルドメンバーごと転移したLvカンスト竜騎士-  作者: 倉秋
仲間探しの旅編ーセラエーノとコンドアの街ー
99/381

99話

コンドアの街に付くなり大雨に遭遇した。

怪我をした御者を担ぎ、急いで宿に向かったのだが。


「すまないねぇ、満杯で」

「いや、悪いなこっちも部屋が余ってない」

「予約は取りましたか?」


・・・全部の宿が埋まっていた。

どうやら、このコンドアの周りでは雨が降り続ける時期があるそうで。

既に冒険者や旅人でほぼ全ての宿が埋まっていた。


「まずいな」


「私達の受けた仕事は、大雨で延期になりましたけど・・・これ、まずそうですね」


泊まれる場所が何処にも無い。

後は、街の真ん中にある大きな宿だけだが。


「あ、あそこに泊まるんですか、お客さん」


御者が焦っていた。


「駄目ですって!貴族御用達の場所なんですから!

 一般庶民じゃ到底払えない金額ですよ!」


「そうなのか?」


「高級宿『黄金の旅情』は、この地方一の宿なんです。

 我々庶民には縁遠い場所ですよ」


高そうだな、日本で言う高級旅館とか、そう言うのか?

興味はあるが・・・それに、セニアとラティを野宿させるのは忍びない。

と言うよりも、土砂降りで野宿は無理だろう。

行くだけ、行ってみるか。


――――――――――――――――――――


傘を差しながら、土砂降りの中を歩く事数分。

その『黄金の旅情』と言う宿が見えてきた。


確かに、豪華に飾られた立派な本館と、横に分館を構えている大型の宿だ。

それを囲む門にも、彫刻が施されていた。


「はぁー・・・立派な宿ですね」


「ああ」


日本で言ったら、一泊するだけでも月収が飛びそうな宿だ。

一般人にはほとんど縁のないような場所だろう。

門の前には二人の門番もいるし、周りの宿に比べれば明らかに別格の雰囲気を感じる。


「でも、ここしか確認してないんですよね?」


「ああ」


コンドアにも他の宿は10以上存在したが、全て駄目だった。

こうなったら、民家に泊めてもらうかとも思ったが。

まあ、行ってみるだけ行ってみようと思い、門の前にいる。


騎士と見紛う程重装備の門番が二人土砂降りの中で門の前に立っている。


金属製のヘルメットを何度も降っている雨粒が叩いている。

大変だな、門番という仕事も。

と言うよりも、傘くらい差せばいいんじゃないか?


「ここは高級宿、『黄金の旅情』だ。何か用か?」


門の前で宿をじっと見つめている俺達を不審に思ったのか、

片方の門番が話しかけてきた。


「泊まりたいと思ったんだが、部屋が空いてるか気になってな」


「泊まる?ふむ・・・」


俺の身体をつま先から頭まで見る門番。

そして、首に付けている冒険者の証に目が行った。


「止めておけ、Eランクで泊まれるような額じゃない」


「まあ、そうなるよな・・・ちなみに一泊いくらだ?」


「それはな」


門番が提示した額は、予想通りの値段だった。

今まで見てきた宿とは比較にならない程の。

確かに、一般庶民には手の届かない場所だな・・・。


「しかし、お前達も不運だな。

 この時期にコンドアの街に来るとは」


「この時期は雨が降る。

 それを見計らって皆、宿を取るのを早めるのだ」


隣で黙っていた門番も口を開いた。


「悪いことは言わん、泊まれないのなら街から出た方がいい。

 最悪、10日以上振り続ける場合もあるからな」


そうか。

確かに、この土砂降りが続くようなら街を後にした方がいいだろうな。


「どうしても滞在するというのなら、街の端にある大きな屋敷を訊ねるといい。

 もしかしたら、部屋を貸してくれるかもしれん」


「宿ではないんですよね?」


「ああ、だが・・・まあ、行ってみれば分かる」


含みのある言い方だな。

・・・まあ、借りられるのなら有難いが。


――――――――――――――――――――


紹介された屋敷は、コンドアの街の外れにあった。

確かに巨大な屋敷だ、先ほどの宿といい勝負の広さだが。


庭は荒れていて、手入れの様子は無いし。

屋敷も、所々に蔦が這っている。


「お化け屋敷みたいな場所だな」


玄関の前に立ち、何度かノックする。

ドンドン、と言う音が響く。


「はい、どちら様でございましょう?」


ゆっくりと扉が開かれると、目の前に現れたのは若い女性だった。

メイド服姿をした、小柄で可愛らしい女性だ。


「・・・旦那様のお知り合いの方ですか?」


「いや、そうじゃなくてな」


門番に聞いた話を簡単に話す。


「ああ、なるほど。

 分かりました、旦那様に確認してみますね」


そう言うと、メイドは半分開いていた扉を全開にした。


「どうぞ、中でお待ちくださいませ」


招き入れてくれるメイドに続いて、応接間に入っていく。


応接間は立派な鎧や飾り物が並ぶ、いかにもな部屋だった。

ソファーが二つ、机を挟んで中央に置かれている。


「では、旦那様をお呼びしますのでお待ちください」


丁寧に頭を下げると、メイドは部屋から出て行った。

それと同時に、御者が口を開いた。


「あ、怪しくないですかね、流石に」


「見ず知らずの冒険者をタダで泊める館の主。

 そう聞けば大抵は怪しむよな」


そう返すと、御者は頷いた。


「いい人、っていう可能性はあるんじゃないですか?」


「私も、そう思います、けど」


その可能性も否定できないが、まあ裏があると思っていた方がいいだろう。


「しっかし、豪勢な屋敷だ。

 これなんて、一つで家一軒建つんじゃないか?」


御者は鎧の前まで歩くと、その黄金色の鎧をじろじろと見ていた。

そうか?防御力は弱そうに見えるんだが・・・。


「この壺も、年代ものみたいだし・・・とんでもない価値がありそうだな」


壺を触ろうと、手を伸ばすが。

その手を掴んだ者がいた。

先ほどまで、じろじろと見ていた鎧だ。


「うぉぉ!?」


御者が驚いて腰を抜かしていた。

すると、鎧は先ほどと同じ格好でその場に戻った。


「防犯装置か?」


鎧をじっと見るが、中に人の気配は無い。

恐らく、調度品や骨董品を触ろうとすると反応するシステムなのだろう。


「び、びっくりした・・・」


床から腰を上げると、御者は汗を拭いていた。


「知らない物には触れない方がいいぞ。

 人によっては、殺しに来る罠を仕掛ける奴もいるからな」


「あ、ああ」


こくこくと頷くと、御者はソファーに座った。


ここの家主は、相当な金持ちみたいだな。

こんな防犯装置を用意してるとは。


しばらく待っているが、メイドは戻ってこない。

何かあったのか、と不安になってくる。


話す事も無く、ただただ、柱時計のコチコチとした音が静寂に響き渡っている。

雨の音も先ほどよりは弱くなっているが、それでも結構降っているようだ。


「これだけ降っても、街は大丈夫なのか?」


そう、御者に尋ねる。


「え、ああ・・・大丈夫ですよ。その為に上下水道は整備されてるんですよ。

 雨の多い地域ですけど、交通の要衝にありますし」


「下水道もあるのか」


街を思い出すが、マンホールのようなものは無かったが。

いや・・・それは日本の常識か、無くても下水道はあるかも知れないな。


「首都には下水道は無かった気がするが」


「いえ、有りますよ。ただ、富裕層限定の場所ですけど」


そう、リズが返す。

富裕層限定、か。


「そこまで普及しているわけじゃないのか」


「公共事業ですし、金も動きますんでね」


「なるほどな」


しかし、カテドラルのトイレは水洗式だったから、何となく下水はあると思っていたが。

やはりカテドラル周りは特別なんだろうな。


「お待たせしました」


メイドが扉を叩いて入ってきた。


「申し訳ありません、旦那様の体調が優れないのでお会いできそうにありません。

 しかし、部屋は貸してもいいという事ですので」


「助かる、が・・・何か条件があるんじゃないか?」


そう返すと、メイドは微笑んで返した。


読んで下さり、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ