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87話

依頼場所は、アーセ村からそう遠くない森の中。

その森の開けた場所に、トロールの巣が作られていた。


その巣の周りには人骨や獣の骨が転がっている。

人食いの魔物・・・か、危険だな。


「数は、9匹か」


なるほど、そこそこの群れだ。


「どうしますか、トーマさん」


エリサがそう尋ねてくる。


「お前ならどうする?」


「え?あ・・・そうですね。前戦に強そうなトーマさんと、スケとカクを前に置いて。

 私とセニアさんが遊撃、リズさんが後方支援、でしょうか?」


ああ、見た目からの判断だとしたら的確だ。


ちなみに、エリサにはラティリーズの本名と正体は教えていない。

ややこしくなりそうなので、カテドラルに連れて行くまでは教えないことにした。


「正解、と言いたいが。今回の場合は俺とセニアだけでいい」


「え?」


わざと、ガサリと近くの草むらを踏み鳴らす。

その音に、ピクリとトロール達の耳が動いた。

トロール全員の目線が俺を捉えた。


「セニア、この辺に隠れておけ」


「え?はい」


さあ、始めるか。


――――――――――――――――――――


俺を見つけたトロール達は、俺を囲む様に横に広がり始めた。

ぐるりと、囲む様にトロールの肉壁が俺を包囲する。


「グブウゥゥ」


「臭い息をかけるな、化け物」


その一言を理解したようで怒りの形相でトロールは俺に走り寄ってきた。

トロールは武器を持たないことが多い。

要するに、素手。


「グブグゥゥゥ!!」


肥大化した拳を握り、殴りかかってくる。


「これだから、化け物なんだよ」


腰に下げた剣を引き抜き、走ってくるトロールとすれ違う。

すれ違ったトロールは、腰から上の上半身が地面に落ちた。

下半身はしばらくバタバタとその場で足踏みをしていたが、

やがて力無く地面に倒れた。


「グブゥ!?」


その様子を見て、驚きに包まれるトロール達。


「せっかく囲んだって言うのに、一人が挑発に乗ったせいで包囲が崩れた。

 人間にも良くあることだ、覚えておけ」


一人が何も出来ずに一瞬で殺されたという事実。

それは他の者に恐怖を植え付けることにもつながった。

実際、目の前のトロール達は俺を威嚇はするが、襲ってくる気配を見せない。


「どうした、来ないのか?なら」


一歩、足を踏み出す。

すると、全員が一歩後ずさりをした。


「逃がさんぞ」


駆けだすと同時に、近くにいた2匹の首を落とした。

残りの6匹が俺に背を向けて走りだそうとしている。


「遅い!」


追い付いた2匹を切り裂く。

同時に、ナイフを取り出し一番離れているトロールの足を狙う。


「グブゥゥゥ!?」


脚に走る激痛で地面に転がるトロール。

地面に転がるトロールを回避しようと他のトロールは迂回しようとするが。


「逃がしませんよ!」


回避しようとした3匹の身体をなます斬りにするセニア。

変形した腕を元に戻すと同時に、トロールは細切れになった。


「最後はお前だ」


ナイフで転んだトロールの頭に剣を突き刺した。


――――――――――――――――――――


「準備運動にもなりませんね」


「油断するなよ、セニア」


最後にトロールの頭を潰して終了だ。

こうしないと、トロールは蘇る。

頭が無事ならば、何度でも再生できるのがトロールだ。


「す、すごいんですね、トーマさん」


「お前の記憶が無事なら、そんな感想も漏らさなかったんだろうな」


討伐した証のトロールの右耳を9匹分集め、残った遺体は燃やした。

すると、リズがゆっくりと俺に近づいてきた。


「トーマ様も、生き物を殺すんですね・・・」


そう呟くリズ。


「ん?ああ。こいつらは人を食らう化け物だ。

 容赦は出来ない・・・それに」


人骨を指差す。


「子供を好き好んで食っていたらしいな。

 こういう光景は胸糞が悪くなる」


その人骨は大人と言うにはあまりに小さいものだった。

そう・・・子供の骨だ、年端もいかない。

将来、ゼロームの為に働いていく貴重な人材だったろうに。


「・・・」


「殺しを見せるのは不本意だったが、だがなリズ」


リズに向き直りその目を覗いた。

そして、両肩を掴む。


「お前も、いつか非情にならなければいけない時が来る。

 ゼロームの『神』なんだからな、お前は」


「・・・分かっています、いつまでも子供でいられないことくらいは。

 お母様にも常々言われていますから」


「なら、いい。だが、優しい心は忘れるなよ。

 非情になるのは必要なことだが、冷血であることとは違うからな」


「はい・・・トーマ様」


リズの頭を撫でる。

少し、落ち込んでいるように見えたからだ。


「リズなら、立派に跡を継げるさ。

 その為にこの旅に同行したんだろ?」


「は、はい・・・」


「なら、この出来事も教訓の一つだろうさ。

 あんな籠の中にいたら、こんな現場は見られないからな」


無数に転がる子供の人骨と、燃えるトロールの死体。

カテドラルにいたら、こんな光景は見られなかっただろう。

衝撃的な光景ではあるが、この光景をリズは絶対に忘れないはずだ。


自身を神と崇める国の端では、こんなことも起きていると。


「・・・ショックは大きかったですけど。

 でも、この光景も、ゼロームでの出来事なんですよね・・・」


焼き付けるかのように、じっと見つめているリズ。

これも、成長に入るよな・・・リルフェア。


トロールの右耳を回収したエリサは俺達に一度頭を下げた。


「ありがとうございます・・・あっという間でしたけど」

 

「それで、借金は返せるのか?」


「はい」


トロール討伐の報酬で、エリサが世話になった人物の借金は返せる。

後は、俺から提案するだけだ。


「なら、手伝った報酬として、お前を貰いたいんだが」


「え!?わ、私を・・・!?」


顔を真っ赤にするエリサ。

ん?

なんか変なことを言ったか、俺?


「そ、それは、私が欲しいって事ですよね?」


「まあ、そうなるか?」


仲間として、カテドラルに連れて行きたいからな。


「うう、どうしよう。これ、プロポーズだよね。

 トーマさんはカッコいいし、何処か安心できるけど・・・。

 でも、私」


「どうした?」


「ひゃぃ!?あ、あの、えっと!ちょっと待って下さい!!」


顔を真っ赤にして、走り去っていくエリサ。

・・・なんなんだ一体。


「あの、トーマさん」


「ん?」


「エリサさん、どうしたんですか?」


「分からん・・・仲間になってくれと言ったつもりだったんだが」


「どう誘ったんですか?」


「お前が欲しいって」


「・・・」


セニアはため息をついた。


「それ、女として欲しいって聞こえるんですけど?」


「は!?あ、いや、そうか・・・!!」


誤解したのか!

いや、言い方が不味かった!

慌てて、エリサの後を追いかける羽目になった。




読んで下さり、ありがとうございました。

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