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84話

呪いの骨棍棒のせいか、ゾグの鼻息は荒く目は充血している。

心なしか、体毛も逆立って見える。


「呪い、か」


目の前に突っ走ってくるゾグを見ながらそう呟く。

右の拳を握り、走ってくるゾグに狙いを定めた。


「ゴオァァァ!!」


涎をまき散らしながら棍棒を振りかぶるゾグ。

その棍棒が振り下ろされる前に。

握り込んだ拳を、彼の鳩尾目掛けて放った。


「ゴォ・・・!?」


一瞬身体が止まるゾグ。

だが、振りかぶった棍棒を叩きつけようとしてくる。


「甘い」


瞬時に鳩尾から拳を離し、ゾグの頭を掴む。

足を払い、宙に浮いた身体をそのまま地面に叩きつけた。


「ゴ・・・ァ・・・」


土煙を上げて、地面に沈むゾグ。

くたり、と骨棍棒を握った手が、地面に落ちた。


「な・・・呪いの骨棍棒を装備したゴブリンロードを・・・!

 くそ、こうなったら!」


後ろに下がるガムリ。

フードを深く被った誰かに話しかけているようだ。


「アズさん、頼みます!あいつもクイーンゴブリンの仲間なんですよ!」


「え、でも・・・クイーンゴブリンは村人になったって」


「あいつの嘘ですよ!騙されないで下さい!」


「・・・本当?」


「ええ、本当です!!」


女性の声が聞こえてきた。

どこかで、聞いた事がある様な声。


「ご主人、一応協力するって言っちゃいましたし・・・やりましょう」


「うむ。約束は守らないとな」


「分かった、二人共・・・頼むわね」


その女性の後ろに立っていた男達が俺の前に出てくる。

あれは、スケルトンか?


片方はボロボロのローブを着た小柄なスケルトン。

装備を見るに、双剣使いか。


もう片方は大柄で鉄の鎧を来た騎士然としたスケルトン。

手には槍と盾を持っている。


「どこの御人か知らないが、主人の敵ならば容赦はしない」


「ご主人の為なら、何処までも、ってな」


二人は息を合わせて武器を構えた。


「・・・なるほど、ブルホーンの最終兵器って言う訳か」


「おっと、一緒にして貰っちゃ困るぜ。

 俺達は流れで付き合ってるだけだ」


「我々は主人のために剣を振るうのみ、さあ、参れ戦士殿」


双剣を打ち鳴らすスケルトンと、槍を振り回す大柄なスケルトン。

主人・・・死霊術士(ネクロマンサー)か?

後ろのフードを被る女性を見る。

フードから飛び出した金髪、そしてフードの中から見える赤い目。

まさか。


「おい、お前た―――」


スケルトンの双剣の一本が目の前に飛んできていた。

それを指二本で止める。


「っち!」


舌打ちを打ちながら、残った剣で斬りかかってくるスケルトン。

俺はスケルトンの投げてきた剣を左手で構え、斬りかかってくる剣を受け止めた。


「お前、ただの戦士じゃないな。Eランクとは思えないぜ」


首飾りを見てそう判断したのだろう。


「スケェ!!」


「おっと!」


野太い声が響くと同時に、スケと呼ばれたスケルトンが飛び退いた。

その後ろからは、大柄なスケルトンが槍を構えて突進してきていた。


「なるほど、連携か」


槍の先端は既に目の前まで迫ってきている。

身体を少しずらし、脇腹を少し掠めながら槍は空振った。

それを脇腹と腕を使って押さえ込む。


「むぅ!?」


捕らえられた、そう気づいたスケルトンが咄嗟に抜こうとするが。

力の差か、びくともしない。


「油断するな!」


そう一言発しながら、抜こうと踏ん張っているスケルトンの身体を蹴る。


「ぐぬぉ!」


よろめきながら、槍を手放し後ろに後退するスケルトン。


「カク!」


「ぬうぅ・・・こいつ、只者ではないぞ」


二人が並び、俺を警戒しながら間合いを取る。

いい二人組だ、連携が取れているし相方を気にしあいながら戦っている。


「ほら」


左手に持った剣と、脇に残る槍を投げて返す。


「何?」


「どういうつもりだ、戦士殿」


目の前に立つ二人ではなく、後ろに立ってるスケルトンの主人を見る。


「お前達の主人、名前は?」


「アズ様だぜ」


「それがどうかしたのか」


「・・・本名か?」


「! それはどういう意味だ」


大柄なスケルトン、カクと呼ばれたスケルトンが驚いていた。


「本名はエリサ、エリサAZじゃないのか?」


「何者だ貴様・・・!?なぜ、ご主人の名前を!」


「いや、まさか・・・あなたは、ヘルフレイムの誰かか?」


「ああ」


頷いて返すと、二人のスケルトンは片膝をついて頭を垂れた。


「そうとは知らず、とんだご無礼を」


「ひらに、ご容赦を」


「いや、それはいい・・・エリサ!無事だったんだな!」


「え、あ・・・えっと」


エリサの様子が少しおかしい。

何と言うか、戸惑っているように見える。

てっきり、再会に喜んでくれるものだと思っていたのだが。


「戦士殿、主人・・・いえ、エリサ様は」


「記憶喪失なんだ、この5年間」


「5年!?記憶喪失・・・!?」


いや、5年?

記憶喪失だって・・・?


俺達がここに来て2か月ほどだ。

エリサは、こっちに来てから、5年も経っているという事か!?


「おい!お前等!!」


声を上げたのはガムリだった。


「ちゃんと戦えよ!そいつらは村の―――」


「約束は果たしたぞガムリ殿。それに、主人の味方を切る剣は持ち合わせてない」


「てめぇ・・・!いいのか、ブルホーンに逆らってよ!」


剣を引き抜き、鞘を捨てるガムリ。

その彼の後ろに、近づく影があった。


「いい加減にしろ、この!」


クロンの棍棒が、ガムリに打ち落とされた。


「ごぁぁ!?」


脳天に直撃した棍棒は、ガムリを押し倒しながら地面に接地した。


「ガムリ隊長!」


「アンタらも!棍棒の餌食になりたいのかい!?」


「ひぃ!?」


自分達を倒したクイーンゴブリンにそう言われ、怖気づくブルホーンの面々。

クロンがもう一睨みすると、蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていった。


「はぁ・・・もう」


「大丈夫か、クロン」


「ああ、かすり傷だよ」


肩をさするクロン。


「アタイより、あっちの子の方を気にした方がいいんじゃないかい?」


クロンが指さす先には、エリサが立っていた。

その顔は、とても不安そうにこちらを見ていた。


――――――――――――――――――――


俺の泊まっている宿に3人を迎え入れた。

宿の主人はスケルトンを見て怯えていたが、

エリサの顔を見ると納得して部屋に通してくれた。


ブルホーンのガムリは、冒険者ギルドに置いてきた。

村人になったゴブリン達を襲った彼らに制裁が加わるのは時間の問題だろう。


「エリサ、俺の事は覚えているか?」


「あの、ごめんなさい・・・」


そう言って頭を下げるエリサ。

この金髪と、赤い目。

それに、手に持ったつばの広い帽子には見覚えがある。


エリサだ、間違いない。


「ご主人は、5年前位にこの世界に来たんですよ。

 その際に頭を強く打ったみたいで、記憶喪失に」


「以後は我々が近辺をお守りしていたのですが。

 まさか、お仲間にお会いできるとは」


「本当に何も覚えていないのか?」


「・・・ええ、何も。

 我々が知っている情報は主人は『ヘルフレイム』に所属していた事と。

 本名が『エリサAZ』という事だけです」


「アズという名前は、ご主人を守るために偽名を使っていたんですよ」


「なるほど、そうか」


俺達の話を傍らで聞いていたエリサは首を傾げていた。

その様子を見て、セニアが何か話している。


「あの、エリサさん!」


「は、はい!?」


八霧(やぎり)さんは覚えてますか?」


「八霧・・・?八霧・・・」


何か引っかかることがあるのか、頭を抱えて何か考えている。


「あの、八霧さんってのは?」


「エリサの友人だ、恐らく両想いのな」


「へぇぇ!ご主人も隅に置けませんな!」


スケは喜んでいるように見えるが。

この状況じゃ、素直に再会は喜べないよな・・・。


だが、エリサが無事だったのは幸いだ。

本当に、良かった。



読んで下さり、ありがとうございました。

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