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81話

目の前の少女は負けを認めたのか、大人しくその場に座った。


「さあ、煮るなり焼くなり好きにしなよ。

 それとも・・・この身体をご所望かい?

 貧相な身体だけど、男を悦ばせるくらいはできるさ」


そう言って、地面に大の字に寝転がった。


「はぁ・・・やれやれ。仲間を連れてさっさと去れ」


「何言ってるんだい、アタイはクイーンゴブリンだよ?

 それを見逃すっていうのかい?」


「仲間思いの奴を穢すかよ」


その場にしゃがみ、少女の顔を覗く。


「ゴブリンに情けを掛ける冒険者がいるとはね」


「さっさと去った方がいい、人攫いまでやっちまったんだからな」


「人攫い?」


少女が上半身を持ち上げる。

その顔は、意外そうな顔をしていた。


「アタイ、そんな事してないぞ」


「村の女性が一人、攫われていたぞ。お前の命令じゃなかったのか?」


「・・・ゾグ!!アンタ!」


ゾグと呼ばれたゴブリンロードは、新しい棍棒を手に持っていた。

そして、後ろには数匹のゴブリンを引き連れていた。


「ガウガウガガウ!!」


「なに・・・『敗者は死ね』?よくアタイにそんな事が言えるね!

 後ろの奴らも、アタイに逆らう気かい!?」


「どうなってるんだ?あいつら、お前の味方じゃないのか?」


見るからに、敵対しているとしか思えないが。


「ゾグは災族と呼ばれるゴブリン族の戦士だよ。

 冒険者に仲間ごと襲われて、逃げてきたところをアタイが拾ったのさ。

 結果は・・・命令違反ばかりの馬鹿で困ったもんだよ」


「大変だな、お前も」


「災族はゴブリン族の中でもトップクラスの戦闘民族。

 その長であるサイガは、最強のゴブリンと呼ばれているんだよ」


最強のゴブリン、ね。


「よいしょっと・・・」


少女は体を起こすと、ゾグと向かい合った。


「恩知らず、いや災族の掟か。

 敗者に語る言葉は無し、それが災族の掟さ」


「掟なら恩人すらも切り捨てるのか。最悪だな」


指の骨を鳴らす。


「アンタ?」


「掟があろうが、ルールがあろうが。

 世話になった恩人に仇で返すは鬼畜の所業。

 ナナは情けを掛けたが・・・俺は違うぞ」


「ガゥゥゥ!!」


棍棒を振り上げるゴブリンロード。

その棍棒を俺の頭に目掛けて振り下ろした。


バキィ!と木が折れる様な音が辺りに響く。

頭に命中した棍棒は、見るも無残に折れていた。


「蛮勇は身を殺す、特に・・・愚か者はな」


ゴブリンロードの首を掴み、そのまま持ち上げた。

俺の手を掴み、バタバタと暴れるが振り解ける程の力では無い。


「むん!」


首を掴んだまま、地面に叩きつける。

顔が地面に埋まり、露出している体から力が抜ける。


「ゾグを一発か、やるねアンタ」


「こいつが弱いだけだ・・・それより」


地面から生えたようなゾグは放っておくとして。

・・・問題は、こいつに付き従おうとしたゴブリン達だ。


「アンタら、分かってるんだろうね?」


「ギギ・・・ギェェ!!」


その場から逃げ出そうとするが。


「待ちな!!」


一瞬で逃げるゴブリン達を捉えた少女は、落ちていた木の棒で全員を気絶させた。


「やれやれ・・・後で折檻だよ」


「許すんだな」


「強い者につく馬鹿共だけど、気のいい奴らだからね。

 馬鹿で仕方ないけど、可愛い奴らなのさ」


そうか。


「だが、盗みは良くないぞ。あの村の作物だって、農民が苦労して作った物。

 それを奪っていい訳がないだろう?」


「うぐ・・・まぁ、そうだね。悪いとは思ってたよ。

 自分たちで畑を作ってみたりもしてたんだけど、如何せんうまくいかなくてね」


「畑、ですか?」


後ろにいたリズが口を開いた。


「ああ、ゴブリンだって農作物は作れるからね。

 だけどその農作物だって一朝一夕とはいかないんだよ」


「植えてから食えるまでには時間がかかるからな。

 だったら、いっそのことアーセ村に働きに出たらどうだ?」


「働き?」


「ああ、働くんだ。畑を耕して、農作物の収穫を手伝う。

 俺が見たところそこまで若者が多くない村だ、労働力は貴重だろう」


ゴブリンだって人間の敵、という訳ではないだろう。

利害が一致すれば、協力することだって可能なはずだ。


今回の場合はそれだ。

農村は労働力を欲し、ゴブリン達は明日生きる糧が欲しい。

ならば、村で働き稼げばいい。


「だけど、アタイ達はゴブリンだよ、そう簡単に―――」


「ゴブリンだからと・・・!あきらめちゃ、いけないと思います」


声を荒げたのはリズだった。


「ゼローム皇国は他種族国家、です。だから、ゴブリンさんも大丈夫なはずです!」


「ふふ、嬉しいねぇそう言ってくれるのは。

 でも前科持ちでも許されるのかい?」


そう俺に聞いてくる。


「心がけ次第だろ?」


「心がけ次第・・・そうだね」


目を瞑り、腕を組む少女。


「うん、決めた!皆、村に謝りに行くよ!」


少女がそう言うと、ゴブリン達が騒ぎ始める。

不満を言うような感じに聞こえるが・・・。


「やかましい!腹減って死にたくないなら付いて来な!」


その言葉で静まり返るゴブリン。


「さあ、案内してくれないか・・・えーと」


「ソウマだ」


「ああ、じゃあ、ソウマ。冒険者ギルドに案内してくれないか?」


――――――――――――――――――――


「ほえー・・・この方があの伝説のゴブリン」


ギルド長も、驚きの表情で少女『クロン』を見ていた。


「よしてくれ、伝説なんて大層なもんじゃないよ」


「でも、とても可愛らしい方ですね、メモメモ」


クラミーはそう言いながらメモ帳に何か書いている。

その表紙には魔物図鑑(仮)と書かれていた。


「クラミーさん、その手帳なんですか?」


ナナがそう聞くと、クラミーは手帳の中身を見せてきた。


「お手製の魔物図鑑です!趣味で始めたんですけど。

 クイーンゴブリンなんて、見た人の方が少ない魔物メモするしかないですよ!」


多少興奮気味にクラミーはクロンの周りをくるくると回ってはメモを取っている。

その様子に、クロンは苦笑していた。


「で、ギルド長。話はどうなる?」


「え?ああ、大丈夫ですよ。私の方から村長に言ってみますので」


ゴブリンを労働力として雇うという話は、意外にすんなりいきそうだった。


数年前までは若者も多く住んでいたらしいが・・・。

ヘルザード帝国との戦いで徴兵され、村を離れたとの事。


故に、現在の収穫は隣村の村人にまで手伝ってもらっている状態らしい。

労働力は喉から手が出る程欲しい、という訳だ。


「しかし、大したもんですなソウマ殿。

 クイーンゴブリンを倒すのではなく、味方に引き入れるとは」


「味方?いやいや、彼女に仕事を斡旋しようとしただけだ」


味方と言われれば、どうなのだろうか?

争い合わない者同士が味方というのなら、そうなのだろうが。

 

「なんにせよ、味方になってくれるのなら心強い。

 村長の対応次第ですが、まあ・・・大丈夫でしょう」


「そうか。それで、『ブルホーン』の奴らはどうするんだ?」


気絶していたので放っておいたのだが。

起こすと色々面倒なことにもなりそうだったしな。


「そういえば、戻ってきませんね・・・どうしたのでしょうか」


まだ、あそこで気絶しているのだろうか。

やっぱり、起こしといた方が良かったか?

起こすと面倒になりそうだったので、そのまま放置したという事もあるんだが。


「まあ、何はともあれあいつらが受け入れられてほっとしたよ」


これで、ゴブリンは駄目です。

何て言われたら、最後だったな。

読んで下さり、ありがとうございました。

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