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77話

目は赤く光り、ギラギラとこちらを睨む。

通常のゴブリンよりも凶悪な人相と発達した筋肉。

そして、その周りを取り囲むようにゴブリンが群れを成していた。


「くそ!エミーナ退くぞ!」


「ええ!あなたたちも急いで!」


そう言って、エミーナがナナの手を取るが。

その身体はピクリとも動かない。


「え?」


「ソウマさん、私が戦ってもいいですか?」


ナナのを見ると、準備運動をしていた。


「最近、動いてなかったので」


「ちょっと、何言ってるの!相手はゴブリンロードよ!?

 EランクやDランクじゃ相手にならない『大物』よ!」


「リズ、二人の回復を頼む。ナナ、苦戦するようなら俺を呼べ」


「はーい、分かりました」


元気よく手を上げると、ゴブリンの群れと相対するナナ。


リズはアセルの胸に手を置く。


「『回復(ヒール)』」


手が緑色に光ると、温かい風が周りに吹いた。

アセルの傷が、見る間に塞がっていく。


「ありがとう、リズさん」


「いえ・・・エミーナさんも」


同様に、手を胸のあたりに置く。


「『回復(ヒール)』」


「あぁ・・・気持ちいいわね、回復魔法は」


気持ちよさそうに、目を細めるエミーナ。


「ありがとう、良くなったわ。でも、大丈夫なの・・・?」


ナナの事だろうか。


「俺の考えが正しければ、楽勝だ」


――――――――――――――――――――


目の前にはゴブリンロード一匹と、その周囲を固めるゴブリンの群れが数匹。


「肩慣らしにもならないですね」


袖を広げ、腕を変形させる。

鞭に変形した腕を、そのまま横薙ぎに振った。


ヒュンと、ゴブリン達の前を通り過ぎる鞭。


「ケキャ?ケキャキャキャ!!」


空振りをしたぞあいつ、という感じで笑うゴブリン達。


「ケキャ・・・ぁ?」


だが、目の前に陣取っていた三匹のゴブリンの握っていた武器が地面に落ちた。

正確には、バラバラに砕けて地面に転がっていた。


「ゲギャアァァ!?」


一瞬だった。

だが、その一瞬の出来事でゴブリン達は恐れを抱いた。


その気なら、自分達の首を落としていた一撃だ。

ゴブリンロード以外のゴブリンは、それを直感したのか後ずさりしていた。


「ガアアア!!」


そのゴブリンに喝を入れるように吠えるゴブリンロード。

手に持った棍棒を、何度も地面に打ち付ける。


「いけないですよ、無視は」


ナナの身体は、既にゴブリンロードの目の前に迫っていた。


「!?」


咄嗟に棍棒で防御姿勢を取るが。

その棍棒を、剣に変形したナナの手は切り裂いた。

まるでバターを切るかのように、綺麗に切断される棍棒。


「ガアァ・・・?」


自身の棍棒を見るゴブリンロード。

得物を無くしたと気づいたゴブリンロードは、ナナから一歩下がった。

すると、周りのゴブリン達に何か話すような仕草をした。


ゴブリン達は頷くと蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていった。

ゴブリンロードも、その後に続いて逃げた。


「お仕事完了ですね、ソウマさん」


「ああ、よくやった」


討伐ではなく、撃退だが。

まあ・・・依頼は完了だろう。


「・・・Eランクじゃないのか、君たちは!?」


「Eランクだが、さっき冒険者になったばかりの新参者だ」


「いや、だからって!」


アセルが地面に転がるゴブリンロードの武器を見る。


「待って、アセル!攫われた人が地下にいるはず、救出が先よ!」


「そ、そうだな!」


二人が壊れた廃屋の中に入っていく。

しばらくすると、アセルと呼ばれた男が一人の女性を担いで廃屋から出てきた。


「ゴブリンに攫われた女性よ。繁殖のために攫ってたのね」


「ああ、下衆な奴らだ」


「繁殖のため、ですか?」


リズがそう聞く。


「ああ、ゴブリンの中には好んで人間の女性を孕ませる部族がいる。

 ここにいた奴らはその部族だ、それにこの村は食料が豊富だからな」


「ええ、まさか・・・ゴブリンロードがいるとは思わなかったけど」


アセルに担がれた女性は、20にも満たない背格好の女性だ。

襲われる前で、本当に良かった。


「さあ、報告に戻ろう。ええと、君達も一緒に来てくれよ」


「俺達も、依頼を受けてきたからな」


アセルとエミーナの後に続き、俺達は村へと戻っていった。


その道中。


「あの、そのお方は大丈夫なんでしょうか?」


リズがそう、アセルに聞いた。

アセルは、肩に担いだ女性の顔を見ると。


「大丈夫だよ、気絶してるだけだ」


「そうですか、良かった」


「お嬢さんは、回復魔法使い(ヒーラー)なのかい?」


「あ、えと。はい・・・そうですね」


「へえ、じゃあ、後ろの長身の男性は?」


俺を見て、そう聞くアセル。


「えーと、戦士、さんですね」


「隣の美人さんは?」


今度は、ナナを見ている。


「あ、その・・・えっと」


「剣士だ。鞭も扱えるが」


「へえ、なるほど。ゴブリンロードを圧倒した、美人剣士か」


「・・・アセル。美人、美人って言い過ぎよ」


頬を膨らませたエミーナがアセルを睨んでいた。


「だって、美人じゃんかナナちゃん」


「あなたねぇ・・・はあ」


ため息をつき、視線を逸らすエミーナ。


――――――――――――――――――――


冒険者ギルドに戻ると、クラミーが玄関前に立っていた。

そして、戻ってきた俺達を見つけると、手をブンブンと振った。


「おかえりなさーい!!」


「ただいま、クラミーちゃん!」


「アカネさんも無事よ」


アセルに抱えられた女性を見ながら、エミーナがそう言う。


「お疲れ様です!ささ、どうぞ中に」


ギルドの中に入っていく俺達一行。

相変わらず、人気は無かった。


攫われた女性、アカネという人らしいが。

この村の出身で、結婚式の後に攫われたらしい。

ただのゴブリン討伐かと思ったが、救出作戦も兼ねていたみたいだな。


「ええ!?ゴブリンロードが!?」


クラミーは口に手を当てて驚いていた。


「ああ、こんな片田舎に出る魔物じゃないはずなんだが。そうだよな、ギルド長」


「あ、ああ・・・ゴブリンロードは、『竜の澱み』の近くには頻繁に出現するが。

 ここは澱みからも遠いし、出るはずは・・・」


「はぐれ、じゃないでしょうか?」


「うむ・・・それしか考えられない、か」


はぐれ、か。

EOSでも、時たまにそこにいないはずの高次元の魔物が湧くことがある。

それと同じだろうか。


「では、討伐隊を本部に申請しないといけないな」


「聞いてくれるでしょうか・・・?」


「分からん、だが、打診してみないことには」


「あの、ギルド長。そのゴブリンロードなんですけど。

 この子が撃退したんですよ?」


そう言って、エミーナはナナの肩を叩いた。


「・・・撃退した?この子が?」


「信じられないだろ?それも一瞬で、棍棒を切り落としたんだぜ?」


「し、信じられん」


「なら、その証拠を見てよ」


エミーナの手に握られた麻袋。

その中身は、切断されたゴブリンロードの棍棒だった。

ゴブリンロードの持ち物という事を示す装飾が、柄に彫ってあった。


「た、確かに・・・ゴブリンロードの棍棒だ。じゃあ、本当に?」


「あの・・・私、何か変なことしましたか?」


恐る恐る全員にそう尋ねるナナ。


「いやいや!!これは掘り出し物だ!!

 こんな、辺鄙な場所に左遷された時はどうなるかと思ったが!

 ふふふ!私にもまだ運が残っていたという事か!!」


嬉しそうに、ギルド長はそう笑った。


「掘り出し物?ナナがか?」


「ああ!低ランクは人によって天と地ほどの差がある。

 君のような原石の塊もいれば―――」


不意に、冒険者ギルドの扉が開かれた。

結構な勢いで開いたようで、バァン!という音がギルドに響く。


「よう!来てやったぜ!」


俺達がそちらを見ると。

いかにもガラの悪そうな男達が、玄関先に立っていた。

読んで下さり、ありがとうございました。

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