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74話

翌日。

リルフェアの私室にて。


「来たわね、トーマ」


「ああ」


飲んでいた紅茶を机に置き、立ちあがるリルフェア。

隣に座っているラティリーズの格好は・・・。


「魔法使いか?」


「どう?ラティには見えないでしょ?」


ゆったりとした白いローブを身に纏い。

その中には、動きやすそうな布製の軽装着。


「白いローブは回復魔法を使える証。

 ラティは、回復魔法しか使えないから考慮してね」


「ああ」


そして、髪の色まで変わっていた。

青白い髪は、綺麗な黒髪になっていた。


「染めたのか?」


「いいえ、魔法の力で変えたのよ」


「便利だな、魔法って言うのは」


前衛職なので、魔法と言う魔法は覚えていないのだが。

初期魔法程度なら扱える、それくらいの構成だ。

しかし、髪色まで魔法で変えられるんだな。


だが、これならラティリーズには見えない。

身分を隠しての旅、この格好ならまずばれないだろう。


「トーマ、貴方も着替えるのよ」


「え?」


自分の格好を見る。

銀色の鎧と青いマントを羽織っているのだが。


「駄目か、これだと?」


「貴方ね・・・御前試合の優勝者は銀色の鎧を着た、

 『竜騎士』という事になっているのよ?

 その格好で外に出たら、一発でばれるわよ」


そうか・・・。


「じゃあ、これならどうだ?」


竜騎士になる前に、着ていた燻し銀色の鎧。

それを道具袋から取り出して、目の前に置いた。


この鎧よりは軽装で、全身を覆うほどの鎧ではないが。

動きやすく、軽いのが特徴だ。


「へえ・・・渋い色の鎧ね」


「昔使っていた鎧だが」


来ていた銀色の鎧の留め金を外し、脱ぎだす。

そして、目の前の鎧を装着した。


「いい感じね」


「久しぶりだからか、着心地が悪いな」


竜騎士の鎧よりは、1ランク下がるが。

それでも、十分強い鎧。

この世界でも、通用できるだろう。


「顔も見えるけど・・・まあ、大丈夫でしょう。

 御前試合の時は、顔も見えない鎧を着てたものね」


そうか、俺は素顔を見られていない。

顔を隠す必要はなさそうだな。


「長い旅になるわね」


「期限はあるのか?」


「無いわ、思う存分探して頂戴。

 国の有事があったとしても、私だけで解決できるから安心して」


「ああ・・・分かった。だが、たまには戻るよ。

 修行の旅とは言え、たまには親の顔を見ないとな?」


「ふふ、そうね」


――――――――――――――――――――


二人の衣装の見せあいのような出来事から数日。

準備完了の報告が、竜の像から入った。


遂に、旅に出る事になるようだ。


「行くんだね、トーマさん」


「トーマ、お土産、期待してる」


「トーマ様、旅先でのご無事を祈っております」


「ああ」


八霧と神威、そしてオリビアに見送られ、俺は拠点を後にした。

そう言えば、セニアは何処に行った?


――――――――――――――――――――


「ラティ、荷物は持った?」


「はい、お母様」


「忘れ物はない?ハンカチも持った?」


「大丈夫です」


「うん・・・しばらく会えないけど。

 トーマと一緒に頑張りなさい、ラティ」


これから長い間、会えなくなるだろうと思う二人。

少しの間、抱きあう。


「ん・・・さぁ!行くのよラティ」


突き放すように、リルフェアはラティリーズの身体を押した。


「はい、お母様・・・勉強して、必ず大きくなって帰ってきます!」


「ええ、トーマに甘えちゃ駄目よ。自分で考えて、行動するの。

 リウ・ジィから与えられた力で、トーマを助けるのよ」


「はい」


自分の手を見るラティリーズ。


彼女の力は、リウ・ジィの再生能力。

要するに、回復魔法に特化している。

それも大陸で失われたとされる、蘇生魔法すら行使できる。


「お母様、しばらくのお別れ、です。

 どうか、体に気をつけてください、ね?」


「ええ、ラティも気を付けてね」


「はい・・・!」


最後に、ラティリーズは大きく頭を下げると。

リルフェアの部屋を後にした。


「行ったわね・・・頑張りなさい、ラティ」


寂しい気持ちを隠すように、リルフェアは笑顔でそう言った。。


――――――――――――――――――――


カテドラルの前には馬車が用意されていた。

この馬車の行き先は、エリール地方外れのアーセ村という場所だ。

そこに、仲間らしき冒険者の目撃情報があったのだ。


「これは、トーマ様。どこかにお出かけですか?」


見張りの聖堂騎士が俺達を見つけたようだ。


「ああ、『竜騎士』としての初任務だ。

 ・・・しばらく、帰れなくなる」


「そ、そうですか。・・・お連れの方は?」


ラティリーズを見る見張り。


「ああ、その任務に必要な人材だ。

 先を急ぐ、もう行っていいか?」


「これは、失礼を・・・!」


敬礼して、俺達を見送る見張り。


馬車に足を掛けて、先にラティリーズを馬車に乗せた。

御者が乗り込んだ俺達を確認すると、そのまま馬を出した。


「ばれませんでしたね」


「リルフェアに言われたとおりに演技しただけだ」


少し緊張したが。


「いえ、上手かったですよ、トーマさん」


「ああ、ありがとう・・・セニ・・・セニア?」


「はい、セニアです!」


馬車には先客が乗っていた。

いや、足元に隠れていたセニアがひょっこりと顔を出した。


「お前、なんで・・・!?」


見送りにいないと思ったら。


「えへへ、付いてきちゃいました。あ、マスターには許可を取ってますよ?」


「神威・・・」


図ったな・・・。


「マスターを怒らないで下さい!トーマ様!

 私が一緒に行きたいって、そう言いだしたから」


「一緒に、ですか?」


「はい!私も冒険をしたかったですし、それに」


自分の胸に手を置くセニア。


「私がいれば、いつでもマスターと会話ができます」


「神威と?」


「はい!改良してもらいました」


なるほど、それは便利だ。

カテドラルの様子を神威越しに聞けるし。

俺達の様子も、あっちに報告できる。


「え、と・・・だから、一緒に行っても、良いですか?」


上目づかいで、そう俺に行って来るセニア。

目は潤んでいた。


「う・・・はぁ、好きにしろ」


「はーい、じゃあ、好きにしますね」


そう言うと、セニアは馬車の長椅子に座った。

そして、懐から小さい紙の包みを取り出す。


「はい、ラティリーズ様!」


「え?あ、これは?」


「クッキーですよ」


小さい焼き菓子が、その紙包みの中に入っていた。

それを一つ、ラティリーズに手渡した。


「くっきー、ですか?」


「こっちの世界には無いのか。

 まあ、甘い焼き菓子だ、毒じゃないぞ」


「ぶー!毒なんて入れませんよ!」


拗ねるようにそう言うが、顔は笑っているセニア。


「じゃあ、一つだけ・・・ん」


少し、口にクッキーを運ぶラティリーズ。

その瞬間、ぱぁっと顔をほころばせた。


「美味しい、とっても美味しいです」


「えへへ、結構自信作ですから。はい、トーマ様も!」


「おう・・・って、こんなに寄こすな」


紙包みの半分ほどを渡そうとして来た。

流石に悪い。


「まだあるんですから!」


そう言うと、大量の紙包みを取り出すセニア。

どれだけ作ってきたんだ・・・。


「御者さんもどうぞ」


「へ?ああ、こりゃどうも」


馬を操っていた御者は、器用にその紙包みを受け取った。


「おお、美味しそうなお菓子だ!私は甘いものに目が無くてね!」


中年で禿げ上がった御者はそう言うと、クッキーを何枚か口に含んだ。


「ほほぉ!こいつぁ、美味い!いい腕だねぇ、お嬢さん」


「ありがとうございます」


上機嫌な御者が操る馬車は、揺れながら目的地へと進む。

目指すはアーセ村、冒険者ギルドだ。


読んで下さり、ありがとうございました。

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