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73話

仲間探しの旅編 開始です。

御前試合終了から早一か月。


俺は、ラティリーズの護衛として働いていた。


貴族会に出張するリルフェアに連れられて、警護したり。

視察という名目で外に出るラティリーズを警護したり、と。

襲ってくる者もおらず、言っては何だが暇な時間が過ぎた。


この一か月、変化があったとすれば。


イグニスは無事に騎士団長に昇格。

満場一致で騎士団長に迎えられた。

当人は、あまり乗り気ではなかったようだが、最後は笑顔でそれに答えた。


ゼフィラスは副団長に任命されたが。

最初は頑なに断り、俺に譲ると言い出した。

それをリルフェアが諫めた事で、渋々副団長を了承した。

現在は、カテドラル外郭の警備部隊の再編をしている最中だ。


前団長ゴルムは、御前試合終了後に改めて裁判にかけられ、国外追放。

その一味も、同じく国外追放となった。

今では、彼の治めていた領土をどうするか問題になっているらしい。


八霧は、あいも変わらず暇さえあれば本の修理と薬の研究をしている。

たまに、カテドラルの許可をもらった『病み術士』のブロギンが訪ねてきては、

二人で一緒に薬の研究をしている。


神威は、未だに『蓋』が取れないドール達の様子を見ている。

その傍らで、拠点の管理と清掃をして貰っている。

リルフェアも神威のしていることに興味があるのか、

二人で仲良さそうに話している光景をよく見る。


そして俺は。

『竜騎士』と認知されたせいか。

カテドラルに所属するほとんどの人間に敬語を使われるようになった。

たまに、カテドラル外を見回ることもあるのだが。

その際にも


「見て、竜騎士様よ!」

「本当だ!」

「格好いい・・・」

「私、話しかけてみようかな」


何て声が聞こえて来たりする。

正直チヤホヤされるのは有難いんだが、居辛い感覚の方が強い。

まあ、好意的な目で見られている以上、それは贅沢な考えなんだろうが。


そして今日も、いつものように一日を過ごしている。


ラティリーズの私室で、いつものように二人が紅茶を飲んでいる。


「あ、そうそうトーマ」


「なんだ?」


俺は、イグニスと一緒に部屋の中で二人の警護をしていた。

警護と言いつつ、話し相手になっているのが普通なんだが。


「『旅行』の話だけど」


「・・・その話か」


1か月前の話で、今まで一度も話題になっていなかったが。

てっきり、酒の勢いで言った戯言だとも考え始めていたんだが。


「リルフェア様、お邪魔でしたら私は下がりますが」


個人的な話だと思ったのだろう。

イグニスがそう言いだす。


「いえ、イグニスもいて頂戴。重要な話だから」


重要、と聞いて身構えるイグニス。


「ゴルムが追放されて、領地が空白になったのは知ってるわね?」


「ゼロームの東『エリール地方』が、彼の領地でしたね」


「ええ」


リルフェアは立ち上がると。

壁に掛けてあるゼローム周辺の地図を壁から外し、机に置いた。


「ゼロームの東に『竜の澱み』と呼ばれる大穴があるのは知ってるわね?

 そこから東側のここ一帯が『エリール地方』よ」


そう言って、地図をなぞるように指で丸を描く。

そこそこ、いや・・・馬鹿デカい領地だ。

領地の南側はバルク国との国境に接しているし、東端は海。

北は別の人の領地なのだろうか?


「北のフォンバーク卿にそのまま任せてるんだけど。

 その地方にある、噂があるのよ」


「トーマ様、エリール地方であなたの仲間かも知れない人が、

 冒険者として働いているとの噂が流れているんです」


「! 本当か!?」


「はい、ですので・・・まずはエリール地方を『旅行』しませんか?」


「旅行?ですか」


イグニスが首を傾げる。


「トーマが、一人で?いや・・・仲間を探していたんだったな。

 なるほど、許可をもらって探しに行くという事か?」


納得したように俺の顔を見たが。


「ええ、ラティも一緒にね」


一緒、と聞いてイグニスが驚きの表情を見せた。


「な・・・!?ラティリーズ様も同行なさるのですか!?」


「静かに!内密な話なんだからね?」


「は!申し訳ございません」


そう言って、片膝をついて謝る。

真面目な奴だな。


「ラティの成長のためにも、旅をさせようと思っているのよ。

 それに、カテドラルが安全だとは言い切れないわ」


「それは、そうですが」


思い当たる節があるのか、イグニスの顔が曇る。


「大丈夫よ、トーマがいれば安全は保障されたようなものだし。

 それに、替え玉も準備しているから」


そう言うと、リルフェアは机の上に置いてあった人形を手に取った。

あれは・・・神威のコピードール?

リルフェアがその人形の頭を撫でると。


人形が光り始め、身体が大きくなっていく。

そして、その光が止む頃には。

ラティリーズそっくりの人物が目の前に立っていた。


「本当に、そっくりね」


「なるほど、コピードールか・・・確かに」


これ以上に替え玉にピッタリな人材はいないだろう。


「で、ですが、余りにも危険です!

 護衛隊を編成する許可を!」


「あのね、イグニス。お忍びの旅なのに護衛を多く付ける必要はないわ。

 いえ、多く付ければ付ける程、目立つし危険よ」


「ですが!」


「イグニス、命令が聞けないの?」


「う!?」


命令、と聞きイグニスの身体が硬直する。

そして、硬直したイグニスの目が、俺に向いた。


「トーマ、ラティリーズ様に何かあったら・・・分かるな!」


「ああ、もちろん責は負う」


――――――――――――――――――――


しかし、旅か。

八霧と神威にも遠回しには話していたが。

こうも、急に決まるとはな。


拠点に戻るとブロギンと一緒に、

広間に大釜を出して何かを調合している八霧がいた。


「お帰り、トーマさん」


「ああ、ただいま」


ブロギンは俺を見ると、丁寧に一礼した。


「お久しぶりじゃのう、トーマ殿」


「ああ、久しぶり。相変わらず元気そうだな」


「ほっほっほ、見たとおりの骸骨。歳は食わないからな」


そう言いながら、大釜の中身をかき混ぜるブロギン。

緑色の液体がコポコポと煮立っている。


「八霧、急だが旅に出る事になりそうだ」


「ああ、うん。前に聞いた話?」


「ああ、メンバーの誰かがその旅先にいるらしい」


「!」


八霧の顔が驚きに包まれた。


「まだ、確定の情報ではないけどな」


「僕も行った方がいい?」


「いや、お前はここに残ってくれ。リルフェアを守って欲しい」


「あ・・・うん、そうだね。

 じゃあ、ラティリーズさんと二人っきりの旅になるの?」


「今の所はな」


まあ、二人っきりの旅という制限はない。

道中、誰かと一緒に旅をする可能性はあるだろうし。


「旅か、いいのぉ。わしも昔は諸国行脚をしたものじゃ。

 色々な仲間、個性豊かな現地の人間。

 それに、様々な情報が集まるからの」


「情報、か」


「ああ。八霧から聞いたが、お主らは仲間を探しておるのじゃろ?

 ならば、冒険者になるのが手っ取り早い」


「ブロギンさん、そうなの?」


「ああ、冒険者にとって情報は必要不可欠なもの。

 それに、依頼をこなしていけば、それだけ集まる情報も増える。

 Sランクにまでなれば、このカテドラルに集まる情報よりも多く、

 集まることになるじゃろうて」


「Sランク?そうか、冒険者はランク付けされているのか」


この世界だと、冒険者にはランク付けがされているのか。

分かりやすくて助かるが・・・。


「うむ、誰しも最初はEランクから始まる。しかし」


俺を見ると、ブロギンは笑った。


「?」


「トーマ殿なら、Sランクは軽く超えてしまうじゃろうな!」


「それは、買い被りが過ぎるぞ、ブロギン」


「老いぼれても、この目は衰えておらぬわ。

 冒険者ギルドに登録するのはタダ、やっておいて損はないぞ」


それは、素性を隠しても大丈夫という事だろうか?

もし、登録できるのならしておいた方がいいだろうな。


旅をする際に、冒険者と言う肩書があればやりやすい場面もあるはずだ。

それに、俺の仲間かも知れない奴も冒険者と聞いた。


同業者なら、出会う確率も高くなるだろう。



読んで下さり、ありがとうございました。

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