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集団転移!ーギルドメンバーごと転移したLvカンスト竜騎士-  作者: 倉秋
ゼローム皇国の騎士編-御前試合ー
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69話

八霧戦、決着になります。

観客達と同じく、リルフェア達も黙ってその戦いを見届けていた。

自身の能力を最大に生かし、竜騎士を攻める錬金術師。

その攻撃を受けてもなお、正面から攻撃する竜騎士。


「・・・凄い戦いですね・・・これは」


傍の護衛がそう呟く。

護衛することも忘れ、戦いを見ているようだ。


一瞬、その事を諫めようと思い、口を開こうとするリルフェアだったが。


そこまで野暮なすることはないと、目線を元に戻した。


「ラティ、どう思う?」


「この戦い、次の攻勢で・・・全てが決まると思います」


「ええ・・・そうね。八霧(やぎり)君が何を飲んだのかは分からないけど。

 あの様子を見るに・・・ただの薬、という訳ではなさそうね」


彼の身体から見えるその、オーラ。

それはゼフィラスの出したオーラの比ではない、途轍もない力を感じた。


――――――――――――――――――――


「トーマさん、僕は食らいつくよ?」


「何?」


目の前の八霧は、そう呟きながら自身の握る棒を構える。


「食らいついて!倒して見せるよ!」


八霧は言葉を言い切ると同時に身体を動かした。

懐から何かの薬瓶を取り出すと、それを俺との間にばら撒いた。

地面に当たり、瓶が割れると煙幕のような煙が複数立ち上る。


「煙幕か」


槍を構えて煙の中から襲って来るであろう八霧を待つ。

読み通り、八霧は煙を体に纏いながら煙の中から飛び出してきた。


「はあぁぁ!!」


棒を振りかざし、俺を狙う八霧。

竜骨の盾を構えて、その棒を真正面から受け止める。

棒が盾に当たる衝撃が左手に伝わる。


「む・・・!?」


その衝撃でわかった。

八霧の振るう棒の一撃の威力が格段に向上している。

押す力も、半端ではない。


「く!このぉ!!」


盾に棒を当てながら、八霧は力を籠めて俺を押し始めた。


「なるほど、こいつは!」


盾を構えたまま、後ろへと引きずられる俺の身体。


だが、単なる力のぶつかり合いなら・・・戦士は要らない。

スキルあってこその、戦士なのだ。


構えた盾でパリィを行う。

盾を振ると同時に、力を入れた八霧の棒を払う。

目の前で体勢を崩す八霧。


その身体目掛けて、槍を構え突き入れようとするが。


体勢を崩した八霧は棒から片手を手放していた。

その手に握られている、薬瓶を俺に投げた。


「む・・・!?」


槍を目の前で回転させ、薬瓶を迎撃する。

回転する槍の持ち手に阻まれ、薬瓶が空中で割れる。

空中で割れた薬瓶から煙が噴き出す。

その紫色の煙には見覚えがあった。


「っ」


毒の煙かと思い、警戒するが。

・・・ただの色付きの煙幕のようだ。


「隙あり!!」


煙に気を取られ、側面に回り込んだ八霧の棒の突きが頭を狙う。


目の前に迫る棒を、左手で掴み攻撃を阻止した。


「白刃取り・・・もちろん、僕もそれは読んでるよ」


八霧の握る棒の後端には、薬瓶が付けられていた。

霧状の何かが、俺の握る棒の先端から噴き出す。


握る手も、身体全体にも一瞬で何かがべっとりと付着した。


「く!」


棒を八霧から奪おうと、こちらに引き寄せようとするが。

それを引っ張るように、抵抗する八霧。

その合間にも、霧は吹きだされている。


業を煮やし、棒を掴んだ八霧諸共片手で放り投げた。

空中に舞う八霧は、受け身を取ろうとしていない。


おかしい、何故受け身を取らない。

何かするのではと思い、盾を構えようとするが。


霧状に付着した何かが固まり始め、腕が動かなくなってくる。


「超強力な、粘着剤だよ!」


空中を舞いながら、八霧は棒の先端を俺に向ける。


「セラエーノさん、初めて使うよ・・・!」


棒の先端に小さな穴が開く。

そして、棒をそのままに俺を狙う八霧の姿は。

銃で人を狙う、狙撃手に見えた。


八霧が地面に落ちる直前。

まるでトリガーが引かれたように、棒の先端から何かが飛び出す。


「く・・・防御が、間に―――」


腕を動かし、盾を構えようとするが。

それよりも早く八霧の放った弾丸らしきものが、発射された。


――――――――――――――――――――


どしゃり、と音を立てながら八霧が地面に落ちる。

それと同時に、俺は自分の胸を見下ろした。


先ほどの粘着剤で汚れた胸部の鎧。

その鎧に、小さな穴が開いていた。

そして、その穴から貫通した何かは。


的確に心臓付近を射抜き、背中の鎧を突き抜け。

勢いを失った何かが闘技場内に転がる音が響いた。


「ぐぁ・・・!?」


胸の痛みで、片膝をつく。

八霧は的確に、俺の心臓付近を射抜いたようだ。

鎧の間から、血が噴き出す。


同時に頭の中にスキルが発動したという感覚が流れ込んでくる。

『踏ん張り』が発動したようだ。


胸を押さえて、痛みを堪える。


「なるほど・・・ただの弾丸じゃ、ないな」


「使用者の能力に比例して貫通力が高まる弾丸だよ。

 まあ、一発しか撃てないんだけどね」


そういうと、八霧は握っていた棒を見る。

先端が竹のように裂けていた。


・・・一撃必殺の奥の手、か。

なるほど、確かに。


胸付近が熱くなる。

滴る血は、下半身の鎧を濡らし、地面にまで到達している。


「これがお前の『奥の手』、か」


「そして、これが仕上げだよ・・・!」


壊れた棒を振りかぶり、八霧は地面に膝をつく俺を狙う。


――――――――――――――――――――


(僕の、僕の勝ちだ・・・!)


壊れた棒を振りかぶりながら、僕はそう思っていた。

ずっと、憧れていた人に勝てる。

その気持ちで、興奮もしていた。


だけど。


「八霧、お前は戦闘職を舐めているな?」


その一言が耳に響く

戦闘職を、舐める?


「会話して、時間稼ぎをする気?トーマさん」


相手に時間を与えるのは得策じゃない。


それに、踏ん張りスキルで僕の『奥の手』を防いだはず。

つまり、今のトーマさんのHPは1だ。


回復される前に、止めを・・・!!


「はぁぁあ!!」


渾身の力を籠めて、棒を振り下ろす。


その瞬間、トーマさんの口が笑ったような気がした。


――――――――――――――――――――


目の前に迫る八霧の攻撃。

俺は目を閉じる。


そして、頭の中で念じる。

『起死回生』と。


身体が緑色のオーラに包まれ、一瞬で傷口が塞がる。

同時に全能力向上(オールバフ)が体に付加された。


そのスキル発動と同時に、八霧の振り下ろした棒を払いのけた。


「戦闘職は瀕死になることを前提に装備とスキルを組む。

 『起死回生』も、その一つだ」


タンクならば、当然取っておくべきスキル。


「『起死回生』・・・?」


呆けた八霧はその場で固まっていた。


「どうする、八霧?」


「ふふ・・・そんなスキルもあったんだ。やっぱり戦闘職は奥が深いね」


拳を握る八霧。


「一度追い詰めたからって、余裕ぶったのが僕の敗因、か」


「敗因?まだ負けてないだろ、八霧」


「・・・うん、だから」


拳を構え、俺に向き直った。


「まだ、やるよ!倒れるまでは!」


・・・。

昔の八霧なら、策が敗れた時点でやる気を失っていたっけな。

だが、今の八霧は違う。


「成長したな、八霧・・・嬉しく思うぞ」


俺よりも下のLvでありながら、俺に致命傷を負わせた。

策を弄し、俺を一度とはいえ追い詰めた。


だが、詰めが甘かった。

俺のスキル構成を完全に掌握していなかったのが、それだ。


「倒れるまで、僕は戦うよ!!」


そう言って、手に持った壊れた棒を構え、走る八霧。


大地の一撃(ガイアブロウ)!!」


それに答えるように、俺は槍を構える。。


「楽しかったぞ・・・八霧!『竜の槍(ドラグニックランス)』!!」


手に握る槍から稲妻が迸る。


振り下ろされる八霧の攻撃に合わせるように、

真正面から稲妻を纏う槍を突き入れた。


棒を破壊し、槍が八霧の肩口を掠める。


「ぐ・・・ぁ!」


よろける八霧の腹部に、渾身のストレートを放った。

腹にめり込む様に入る拳。


「ぁ・・・」


一瞬、俺を見た八霧の目は・・・。

とても満足そうに、笑っていた。


「・・・スキル、使って・・・くれたんだ」


「ああ、お前への敬意だ」


「嬉しいよ、トー、マ、さん」


そのまま、八霧は床に崩れた。


読んで下さり、ありがとうございました。

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