表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
集団転移!ーギルドメンバーごと転移したLvカンスト竜騎士-  作者: 倉秋
ゼローム皇国の騎士編-御前試合ー
67/381

67話

既に八霧(やぎり)は控室脇の椅子に座っていた。

目を瞑って、何か集中している様子だ。

瞑想でもしているのだろう。


控室で他の審判と相談をしていた審判長がこちらに気づく。


「おお、トーマ殿。遂に決勝ですよ、お身体は大丈夫ですか?」


「万全だ、それは・・・八霧も一緒か」


俺の目線が八霧に行くと、その視線に気づいたのか八霧が目を開けた。

開いた目が、審判長を見る。


「始まる?」


「ええ、もうすぐですので・・・準備を」


椅子から立ち上がると、八霧は立てかけてあった得物の棒を片手に持った。

そして、俺を見てきた。


「トーマさん、遂にこの時だね」


「ああ・・・まさか、お互いに決勝まで残るとはな?」


俺のその言葉を聞くと、八霧は肩をすくめた。


「ねえ、トーマさん。今までの相手で・・・自分を倒せると感じた人はいた?」


「・・・」


そう聞いてくる八霧。

そうだな・・・。


「ゼフィラ―――」


俺がそう言いかけると、八霧の棒が俺に向いた。

そして、睨んでくる八霧。


「お世辞は、かえって戦士を傷つけるんじゃないかな?」


そう言った八霧の目は、真剣そのものだ。


・・・傷つける、か。

今まで、ゼロームでの有数の戦士と呼ばれる奴らと戦ってきた。

だが・・・。


「いなかった。俺にダメージを与える奴すら・・・な」


盾を破壊されたことはあったが、その盾は予備品。

鎧も、攻撃が当たっても傷つくことすらなかった。

つまり、ゼローム国内で・・・俺自身にダメージを与えられる戦士がいるかどうか怪しい。


「うん、それでいいよ。僕らの力も・・・それだけ強いって事だよね」


向けていた棒を手元に戻す。


「ああ・・・そうだな」


この世界で、俺達の力は別格という事だ。

つまり・・・したい放題に出来るという事でもある。

危険な力を持ったまま、この世界に来てしまったのか。


そう思いながら、自分の拳を見る。

いいことに使うも、悪いことに使うも俺次第という事だ。


今の所は、ラティリーズを守るという目的がある。

しかし・・・俺もいつかは自分のために力を使う時が来るのだろうか?

その時は・・・俺はこの世界の敵になっているかもしれない。


「色々考える事もあるけど。

 今は・・・トーマさん、全力で戦おう」


「ああ、よろしくな、八霧」


そう言って、拳同士を合わせた。


――――――――――――――――――――


審判長に連れられ、二人で闘技場内へと入る。

その際に、ベッドの上に寝ていたゼフィラスがこちらを見た。

その視線は、健闘を祈ると言っているように見えた。


審判長が、会場に向かって叫ぶ。


「来場の皆様!ついに御前試合も最終戦となります!

 決戦に残ったのは・・・ラティリーズ様の専属騎士『トーマ』!

 そして、彼の従者『八霧』!」


俺達の名前が高々と叫ばれた。

その瞬間に拍手が巻き起こった。


「前代未聞の、騎士と従者の戦いですが!

 どうか、最後まで彼らの試合を見守っていただきたい!

 そして・・・終わった際には両者に惜しみない拍手をお願いします!!」


審判長が一度言葉を切り、俺達を見る。


「それでは・・・決勝戦・・・開始します!!」


そう叫ぶと同時に、審判長は場外へと駆け出した。

遂に始まった・・・八霧との試合。


―――――――――――――――――――――


俺はゼフィラス戦の際に使用した『銀の鍵』と、大盾を装備した。

八霧は一回戦から使用している棒を構えた。


「ずっと我慢してたけど、ようやく全力で戦えるね・・・トーマさん」


「・・・ああ」


今までは、相手を殺したくないと思い、何処か加減していた部分もある。

だが、今目の前に立っている男は・・・俺を倒せるかもしれない男だ。


Lv差は50、戦闘職と非戦闘職の差もある。

EOSでは絶望的な戦い・・・だが。


八霧の知恵と、知識。

そして、彼が自身の職を完全に使いこなせば・・・俺を倒すことは可能だ。


手に持った槍、『銀の鍵』を握る手にも力が籠る。


「さあ、行くよ・・・!!」


棒を片手に持ち、残った片手を懐に入れる八霧。

懐から飛び出したのは、無数の薬瓶。

青い液体が入ったそれを、俺目掛けて放り投げてきた。


「錬金術師の、常套手段だな」


ナイフを取り出し、飛んでくる薬瓶を迎撃するように投げる。

投げたナイフが薬瓶に衝突する。


その瓶が空中で割れ、内容物が地面を濡らす。

全ての薬瓶を迎撃すると、地面は青く変色していた。


「へえ、やっぱり・・・一筋縄じゃないよ・・・ね!」


先ほどと同様に、無数の薬瓶を放り投げてくる。


「連投で、俺を惑わす気か・・・?」


再びナイフを取り出し、薬瓶を迎撃する。

割れて、再び地面に染みを作る薬瓶。

だが・・・。


「!」


先ほど地面を濡らした液体と、今割れた瓶から流れた液体が地面で接触すると。

激しい勢いで白い煙が巻き上がった。


瓶が割れた位置は、俺達との間。

つまり・・・目の前の相手が見えなくなった。


「なるほど、目くらましか」


耳を澄まし、集中する。

すると、薬瓶が風を切る音が耳に響いた。


「はぁ!!」


飛んでくると予想した場所目掛けて槍を振るう。

煙の中で、瓶が砕ける音が響く。

同時に、気づいた。


その薬瓶の大きさに。


薬瓶を砕いた瞬間、内部に入っていた何かが鎧に付着した。

槍による迎撃が早かったので、完全に液体を被る事は回避できたが・・・。

付着した液体は粘性があり、触っても取れそうにない。


俺が液体を被ると同時に、目の前の煙が晴れた。

その煙の中から見える八霧の体勢。

何かを片手に持ち、俺に投げようとしていた。


八霧の腕が振られると、手に持った何かが俺に向かって来る。

八霧の手から離れたそれは、細かい砂を撒いたように、空間に広がった。


「粉末・・・?」


回避しようと足を動かすが。

先ほどの粘性のある液体がブーツと地面を張り付けていた。


「っ!」


足に力を籠めて、それを引きはがして回避するが。

粉末の煙は広範囲に及び、身体を包んだ。


「毒じゃないな、いや・・・これは」


粘性のある液体は鎧中に付いている。

それに張り付くように、粉末が表面にこびり付く。


「なるほど、八霧・・・」


「強化魔火薬の力を!」


八霧の棒がこちらに向いている。

その棒の先端に見える、炎の魔法。

魔法は既に発動し、俺の目の前に迫っていた。

なるほど・・・そう言う―――。


炎が俺に接触した瞬間。

閲覧席まで届くほどの爆風が俺中心に起こった。


―――――――――――――――――――――


上手くいった。

初手の攻撃にしては、うまくいった方だ。

僕はそう思いながら、爆煙を見る。

それと、思う。


これだけじゃ、倒せるはずが無いと。


「・・・なるほど、良い攻撃だ」


煙の中から、白銀の鎧が出てくる。

その表面は汚れていたが、ダメージがあるとは思えない。


「やっぱり、効いてないか」


「少しは効いた・・・なるほど、魔火薬にもそんな使い方があるんだな」


粘性のある液体で動きを封じると同時に。

粉末を付着しやすいようにした。


その後で広範囲に強化魔火薬を撒き・・・。

粉塵爆発の要領で、トーマさんごと爆発させた。


付着した量が多ければ、トーマさんに与えるダメージも多いと考え、練った策だったけど。

・・・あまり効いてないか。


「この程度じゃ倒れないのは知ってるよ」


僕はそう言うと、次の策を用意し始めた。


読んで下さり、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ