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集団転移!ーギルドメンバーごと転移したLvカンスト竜騎士-  作者: 倉秋
ゼローム皇国の騎士編-御前試合ー
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66話

拠点内、八霧(やぎり)の部屋。

トーマとオリビアがラティリーズに会っていたその頃。

八霧は、錬金台の前に立っていた。


調合中の薬剤が、錬金台に並んでいる。

緑や赤、黒い色の液体が煮沸されていた。


「トーマさんに効く薬となると・・・うーん」


下手な薬剤、毒は効かないだろう。

能力低下(デバフ)のポーションも、対策しているはずだし効果はないだろう。


(スキルに加え、Lv差か・・・対策もしてあると考えると、僕を強化した方がいいな)


青い液体の入ったフラスコを振る。

その中に一滴だけ、煮沸した黒い液体を入れた。

ボコボコと、反応し・・・やがて収まると透明な液体になった。


「よし、これと・・・後は、この『魔火薬』と混ぜる」


魔火薬は黒い粉末の火薬だ。

ただしダメージは魔法属性。

利便性もいいので、錬金術師職の主力武器の一つだ。


魔火薬を、机の上に引いた紙に広げて、作った透明な液体を振りかける。

すると、黒かった粉末が茶色に変化した。


「・・・これで、準備よし」


今自分に出来る、最大の用意はできた。

後は、どれだけ食らいつけるか、だ。


「食らいつく、か・・・喉元に食らいつければ、倒せるかな?」


自分の戦う相手の本気は、傍で見ていたからよく知っている。

だからこそ、言える・・・一つでも間違えれば、一発で僕がやられる。


「僕だって『成長』してるし、『奥の手』だってあるんだ。

 錬金術師の力、見せるよトーマさん」


作った茶色い粉末を、紙に包み懐にしまう。

後は・・・『奥の手』の整備をしておこう。


そう思い、武器の棒を整備し始めた。


――――――――――――――――――――


煙の立ち上る八霧の部屋を広間から見る神威(かむい)

広間の中央辺りで、2号と3号の手入れをしていたのだが。

煙が目に入り、目をこする。


「煙たい・・・」


「そう、ですね・・・げほ」


セニアは咳き込みながら、広間の掃き掃除を続けている。


「通気口、作らないと」


「・・・はい、賛成です」


錬金台からの煙が、広間に充満していた。

他の人が見れば、火事になっていると勘違いされるほどだ。


結構急ぎで、通気口を作らないといけないかもしれない。

そう思う神威。


「でも、それだけ八霧さんも本気、という事ですよね?」


「うん・・・ちょっと、楽しみ」


自分のドールの整備を続けながら、そう呟く神威。


――――――――――――――――――――


決勝直前、とある牢屋。

顔がボコボコに変形したゴルムと、その一味が捕らえられていた。


「くそ・・・!」


悪態をつきながら、地面を叩くゴルム。

豪奢な服を着ているのに、その姿はみすぼらしくも見えた。


一通り、地面を叩くと。

冷静さを取り戻したように、牢の見張りに声を掛けた。


「なあ、俺を出してくれないか?」


「・・・何故出さねばならない?

 リルフェア様を閉じ込め、危険な目にあわせたばかりか。

 自分の罪を帳消しにするために、トリスをも殺そうとした」


そう言って、牢番がゴルムに振り返った。


「いくら財力があろうと、権力があろうと。

 既に手遅れ・・・それに、私はイグニス様の部下。

 貴様らのように汚い金で繋がった輩とは違う」


牢番はそう言うと、振り返ったきり何も言わなくなった。


「く・・・!」


「ゴルム団長、ここまでですよ・・・流石に」


一緒の牢に捕らえられているゴルムの一味も諦めている表情でそう喋る。


「このままだと死刑だ・・・!嫌だ、死にたくはない!」


そう言って、ゴルムは鉄格子に手を掛け、ガンガンと揺らし始めた。

その姿を見て、哀れに思う仲間たち。


「死にたくは・・・!」


最後に力無く鉄格子を叩くと、ゴルムは崩れ落ちた。


「・・・何故だ、何故こうなった・・・!」


「身から出た錆だ、ゴルム。

 お前の部屋から見つかった女性からも、お前を訴えるとの報告が来ている。

 貴様の罪状は、どれをとっても・・・許されるものではない」


牢番は、目線も向けずにそう言い放った。


「何を・・・!?この、役職も持たぬ騎士のくせに!

 団長であるこの俺を、馬鹿にするのか!?」


「既に団長職は剥奪されているぞ、ゴルム?」


牢番ではない声が響いた。

ゴルムが声のした方向を見ると・・・立っていたのは赤髪の女騎士。


「イグニス・・・!?」


「これは、イグニス副団長」


敬礼をする牢番。

イグニスの姿を、呆然と見るゴルム。


「最早言い訳はできないぞ、ゴルム。

 リルフェア様の採択次第だが・・・処刑もあり得るからな?」


処刑、と聞き身体が跳ねるゴルム。


「い、嫌だ・・・死にたくは・・・!」


「もう遅い、それだけのことをしたのだ。

 覚悟して、そこで待つのだな」


イグニスのその言葉を聞き、膝から崩れるゴルム。

四つん這いの状態で、頭を押さえて泣きじゃくっている。


「・・・はぁ、こんな奴が団長だったとは」


一つため息をつき、イグニスはその場を後にした。

その後に続く牢番が、イグニスに声を掛ける。


「イグニス様、何故牢屋に?」


「ゴルムの様子を見に来ただけだ。

 アイツの事だ、まだ、何か企んでいるかとも思ったが」


あの様子を見る限り、今の所は大丈夫だろうと話すイグニス。

牢屋区画の出入り口まで歩くと、牢番に向き直った。


「くれぐれも頼むぞ、あんな奴だがずる賢い。

 何かあった時はすぐに報告してくれ」


「は!」


牢番は敬礼すると、自分の持ち場に戻っていった。


「・・・さらばだゴルム『元』団長」


そう一言残し、イグニスは自分の部屋へと戻っていった。


――――――――――――――――――――


決勝戦、開始直前。

ラティリーズとリルフェアは自席に戻った。


「あの、リルフェア様」


護衛の聖堂騎士の一人がそう声を掛けてくる。

リルフェアがその顔を見ると、護衛は心配そうな顔をしていた。


その護衛に続くように、周りの聖堂騎士が集まってきた。


「どうしたの?」


「その、リルフェア様達がここで見学するのは・・・危険になるかと」


「どうして?」


「トーマ殿の従者、八霧の一撃で、対戦相手のラクリアは観覧席まで吹っ飛びました」


「ですので、ここにも危険が及ぶ可能性があります」


他の護衛もそう言ってくる。

・・・確かに、戦いの余波でここまで危ない可能性はある。

だけど。


「これは御前試合よ、私達が見なくてどうするの?」


そう言うと、目線を闘技場内に戻した。


「しかし・・・我々の任務は―――」


困惑したように、護衛は言葉を放つが。

リルフェアに一睨みされると言葉を噤んだ。


「ここに集まった戦士全員が、その武を、技を。

 初代リウ・ジィに捧げるというのが目的の試合なのよ?

 その子孫である私達が見届けずに、誰が見届けるというのよ?」


そう言うと、不機嫌そうに肘掛けに肘を立て頬杖をつくリルフェア。

断固として、ここで見るという意志が見て取れた。

その様子を見て諦めたのか、護衛達も持ち場に戻り始めた。


「・・・心配してくれるのは嬉しいんだけどね」


隣のラティリーズにそう話しかけるリルフェア。


「皆さん、仕事熱心ですよね」


「ああいう人ばかりなら、何も心配はないんだけど」


そう言いながら、入場してくる二人を見る。

いよいよ、決戦が始まる。


「始まるわね」


「・・・はい」


ラティリーズの視線も下の二人に向かう。

その瞳は、多少心配そうな目をしていた。



読んで下さり、ありがとうございました。

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