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集団転移!ーギルドメンバーごと転移したLvカンスト竜騎士-  作者: 倉秋
ゼローム皇国の騎士編-御前試合ー
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65話

特別観覧席へ入るためには、頑丈そうな扉を通らなければならない。

その扉の前にはラティリーズの私室前を守っていた、

イグニスの部下たちが立っていた。


「これは、トーマ様」


俺に気づいた一人が敬礼をする。

扉の対面側にいた兵士も、遅れて敬礼をしてくれた。


「ラティリーズ様は?」


「ラティリーズ様もリルフェア様も、踊りをご覧になっていますよ」


「俺も見たい・・・しかし、我慢、我慢だ・・・」


隣の騎士がそう言う。

まあ、裸に近い女性が激しく踊っているのだ。

・・・男なら、見たくもなるか。


しかし二人共いるのか、丁度良い。

ゼフィラスが無事かどうか、伝えておきたかったからな。

リルフェアの焦りようも結構なものだったし、気にしているだろう。


警備の二人が一歩扉から離れるのを見計らって、扉を叩く。


「トーマです」


「いいわよ、入って」


ほぼ即答でそう返ってきた。

お言葉に甘え、扉を開ける。


扉の先には、闘技場全体を見渡せるほどの光景が広がっていた。

なるほど、特別と付くだけのことはあるな。


そこに用意されている二つの装飾された椅子には。

席に座り、紅茶を飲みながら踊りを見ているラティリーズと、

そわそわしながら、自分の席の横に立っているリルフェアがいた。


そして、扉の先の俺を見つけると、リルフェアが駆け寄ってきた。


「ゼフィラスは無事?」


「ああ、命に別状はない。今は控室で寝てるぞ」


扉を閉め、リルフェアに向き直る。


「そう、よかったわ」


しかし、リルフェアの焦りようは相当なものだった。

もしかして、これは・・・。


「もしかして・・・ゼフィラスの事が好きだったりするのか?」


「へ?」


意外な言葉を掛けられたと、そんな表情で固まるリルフェアの顔。

そして、ハッとすると。


「違うわよ、恋慕の感情なんてこれっぽっちもないけど」


「そうなのか?じゃあ・・・」


あの心配の仕方は、なんだったのだろうか?

焦って、闘技場内まで下りて来るくらいだ。


「ゼフィラスは年端もいかない頃から騎士見習いとして勤めていたの。

 前の団長『ジーク』の従者としてね。だから結構長い付き合いなのよ」


そうか、ゴルムの父親の従者だったのか。

長い付き合い、それも子供の頃から知っている人物だ。


そりゃ、心配して当然か。


「最年少の見習いとして、世間からも注目されていたし・・・

 なにより、前団長のジークからは一番目を掛けられていたわ」


「それが、聖騎士になったんだから、その目に狂いは無かった、と」


「『我が息子がゼフィラスなら、明日にでも死んでも後悔はない』。

 それくらい、ゼフィラスを買っていたんだけど。

 まあ、結果は・・・息子がその後を継いだんだけどね」


ゴルムか・・・。

そう言えば、彼の事も聞きに来たんだった。


「その息子・・・ゴルム団長はどうなったんだ?」


「今度こそ、牢屋の奥に押し込めたわ。

 ただ、今は御前試合の最中だから、罪を問うのは終わってからよ」


なるほど、一応の決着はついたって事か。


「じゃあ、ゼフィラスの妹は?」


特別観覧席にいる者だと思っていたが。

ここにいるのはラティリーズと、リルフェア。

傍に控える護衛だけだ。


「ここを飛び出したっきりね。

 ・・・ゼフィラスに会いに行ったんじゃないかしら?」


あり得るな・・・控室に入れるといいのだが。

一応、関係者以外は立ち入り禁止だが・・・肉親だし、事情を話せば大丈夫か。

流石に、審判や関係者もそこまで鬼ではないはず、通してくれるだろう。


――――――――――――――――――――


椅子に座っていたラティリーズが立ち上がると、俺の顔を見た。


「あの、トーマ様・・・決勝に出場、おめでとうございます」


「ありがとう、今の所は約束を守れているよ」


怪我をしない、という事だが。

それは今の所守れている。


「でも、驚いたわ。ゼフィラスのあの状態に無傷で勝つとはね。

 あの状態だと、ヘルザード帝国軍ですら蹂躙するほどの力を持っているのよ?」


帝国軍を蹂躙か。

この国において、ゼフィラスは決戦兵器に近い扱いのようだな。


「トーマ様ですので、当然かと」


突然そんなことを言い出すオリビア。

自慢気にそう言っているが・・・何を言い出すんだ。


「あら、当然なのかしら?」


オリビアにそう聞き返すリルフェア。

その顔は面白そうなものを見るような目で俺を見ていた。。


「能力、実力を見ても、ゼフィラス様を圧倒するのは当然かと」


「へぇ・・・私達が拾った『トーマ』は・・・とんでもない代物という事ね?」


そう言って、俺を見てきた。

というよりも、それで納得するのか?


「いきなり現れた奴が、騎士団最強のゼフィラスよりも強いと言われて、

 納得するのか?」


「ええ、現にゼフィラスに勝ったでしょ?事実は事実よ、どこを疑うというの?」


それは、そうだが・・・。


「突如現れた『竜騎士』が、ゼローム皇国最強の戦士『ゼフィラス』と戦った。

 そして、難なく打ち倒した・・・それだけよ?」


リルフェアは俺の傍まで歩いてくると、俺の胸のあたりを触り始めた。

鎧越しだったが、リルフェアの手の感触が伝わってくる。


「竜騎士はゼローム皇国にとって特別な存在。

 見ず知らずの人でも、聖騎士が竜騎士に負けたといえば、納得するくらいよ?」


「・・・そうなのか?」


「ええ、それだけ・・・この国、いえ。

 この『大陸』では、竜騎士は特別な存在って事よ?」


「特別・・・か」


なんだか、くすぐったいような感覚だ。

EOSでは竜騎士はやり込んだ古参だけが取れる特別な職なだけだった。


だが、この世界では・・・その竜騎士は特別な存在。

そう思うと、自分の職が認められたような気がした。


「ふふ、決勝が楽しみね、『竜騎士』さん」


――――――――――――――――――――


しかし、いつまで俺の胸を触っているのだろうか?

・・・流石に、少し恥ずかしくなってきた。


女性と触れ合った回数も、そこまで多いわけでは無い。

女性が苦手、という意識は無いが・・・。

そこまで女性慣れているわけでは無い。


「どうしたのトーマ?」


俺を不思議そうに見つめるリルフェア。


「いや、いつまで触ってるのかと思ってな」


「ああ、そうね、ごめんなさい。・・・嫌だった?」


「そう言う訳じゃない、女性に余り慣れていないだけだ」


「あら?」


手を離すリルフェア。


「意外に初心なのね」


「・・・あまりからかわないでくれ」


くすくすと笑うリルフェアに向かって、俺はそう言う。


「じゃあ、ラティでもドキドキするのかしらね?」


今度はとんでもないことを言い出した。


リルフェアはラティリーズの手を掴むと、椅子から立ち上がらせた。

そして、後ろに回り込んだ。


「え・・・ええ?」


ラティリーズの背中を押し、俺に近寄らせるリルフェア。

その小さい身体が、どんどん俺に近寄ってくる。


「はい」


最後に背中をトンと押すと、俺の方向へこけそうになるラティリーズ。


「きゃぁ!」


「っと!」


咄嗟に屈み、ラティリーズの身体を受け止めた。


「お母様・・・!?」


ラティリーズの顔が、リルフェアに向く。

抱きかかえられるような格好のラティリーズを見て、微笑むリルフェア。


「どう?」


「どうって、危ないだろ・・・ラティリーズが怪我したらどうするんだ?」


俺がそう聞くと、リルフェアの顔色が少し変わる。

なにか、不安そうな顔だ。


「怪我、か。そうね・・・」


その一言に、何か引っかかることがあったようだ。


「トーマ、ラティを守ってあげてね」


「それは、もちろん・・・だが、何かあったのか?」


なんだか、リルフェアの顔が弱々しく見える。

いつもの凛とした雰囲気が、全然感じられない顔だ。


「いえ・・・ただね。ゴルムの一件もあるから。

 カテドラル内も安全とは言えなくなったわ」


リルフェアの顔が険しいものになる。


「運よく私は助かったけど、ゴルムの策が成れば私は餓死していたわ。

 前の神とはいえ、『神を殺す事』が出来る状態になっていた」


「・・・」


「つまり、カテドラルという『籠』でも、安全ではないという事。

 そろそろ、この聖域も限界なのかもね」


聖域か。

確かに、獅子身中の虫がいる中では枕を高くして眠る事も出来ないだろう。


「貴方には全幅の信頼を寄せているんだから、裏切らないでね?」


「・・・一度誓った事は、絶対に守るから安心してくれ」


その言葉を聞いたリルフェアの顔が、微笑んだ。


「ええ、期待してるわ」


リルフェアはそう言うと、自分の席に置いてあった紅茶を口に含んだ。

その様子を見たラティリーズも、少し俺から離れる。


そして俺の右手を、両手で握ってきた。


「トーマ様、どうか・・・仲間でいてくださいね」


そう言うと、右手を包むラティリーズの両手に力が籠る。


「ああ、もちろんだ・・・約束しよう」


そう言って、ラティリーズの目を見た。

とても透き通った、青い瞳を。


「あ・・・は、はい・・・」


顔を赤くして、離れるラティリーズ。

・・・なんか、変なことをしたか、俺?


そう思った瞬間、会場から拍手が巻き起こる。

どうやら、踊りが終わったようだ。


「・・・トーマ様、そろそろ時間では?」


「え?ああ、そうだな」


確かに、そろそろ控室に戻らないといけない。

踊りが終わったという事は、戦いが近い。


「行くのね?」


「ああ、八霧を待たせるわけにもいかないからな」


リルフェアにそう言い返し、俺達は部屋を後にした。


「・・・怪我の無いよう、お互い頑張るのよ」


そう呟いたリルフェアの一言は、出て行った彼には届かなかった。


読んで下さり、ありがとうございました。

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