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集団転移!ーギルドメンバーごと転移したLvカンスト竜騎士-  作者: 倉秋
ゼローム皇国の騎士編-御前試合ー
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62話

ゼフィラスは特別観覧席にいるリルフェアの顔を見る。


「リルフェア様・・・この一戦だけ、聖剣を使用してもよろしいでしょうか!」


嘆願するように、そう叫ぶゼフィラス。


「・・・『聖剣』を使うって事?」


察したのか、リルフェアがそう返した。


先ほどの、赤いオーラの事だろうか。

だが、あれは・・・ゼフィラスの命を削るとリルフェアが叫んでいた。

そして、その使用の許可を取ろうとしている。


そう言われたリルフェアは、椅子に座りながら顎に手を置いた。

しばらく考え、会場が静まってくる。

そして、一つ強く頷くと、ラティリーズを見た。


「ラティ、貴方が決めなさい」


「私が・・・ですか」


リルフェアと俺、そしてゼフィラスの会話の際には驚いて口を開けなかった

ラティリーズに、リルフェアがそう言った。


「ゼフィラスは貴方の剣。使用許可は貴方が出すべき」


「・・・」


リルフェアのその言葉を聞き、立ち上がるラティリーズ。

そして、ゼフィラスを見た。


使用許可を出すという事は・・・ゼフィラスが文字通り、

命がけの戦いをするという事。

つまり・・・その一言でゼフィラスが死ぬ可能性があるという事になる。


考え、悩んだラティリーズが、俺を見る。


(大丈夫だ、こいつを殺しは・・・いや、死なせはしない)


そう、アイコンタクトをしてみる。


「!」


驚いた表情をするラティリーズ。


・・・おっと、睨んでいたように見えたか?

ラティリーズを怯えさせてしまったかも知れない・・・な。


ラティリーズが少し悩んだ後、もう一度俺を見ると。

意を決したように、口を開いた。


「・・・ゼフィラス、聖剣の使用を許可します」


消える様な声で、そう言った。


「・・・ありがとうございます、ラティリーズ様。

 トーマ殿・・・私の全力を見せよう」


嬉しそうに俺を見るゼフィラス。

対して許可を下したラティリーズは、心配そうにゼフィラスを見つめていた。


――――――――――――――――――――


再び、ゼフィラスが赤い光を纏う。

その光は彼の能力を著しく向上させているようだ。

命を代価に、自身の能力を向上させる・・・か。


ゼフィラスの能力は飛躍的に向上している可能性があるが。

彼の命は、それと同時に削られていくのだろう。


「トーマ殿、尋常に勝負だ」


赤いオーラを身に纏い、赤い光で覆われた聖剣を肩に担いだゼフィラス。


「いや・・・しかし、お前」


命を削って、俺と戦うっていうのか。


「気にするな、私がそうしたいのだ」


そう言うゼフィラスは笑っていた。

・・・そうか、ならば何も言うまい。

俺も、正面から受け答えするだけだ。


破壊されたカイトシールドを小手から外し、新しい盾を道具袋から取り出す。

黒い盾の表面に、金色の竜の紋章が象られた大型の盾。


『黒竜の大盾』だ。

防御力と重さが頭一つ抜けている盾で、特に物理と魔法に強い耐性を持つ。

だが、余りに重いので、パリィが出来ないという欠点もあるが。

タンク役をする際に、これ以上に向いた盾は無い。


「見事な盾だな」


「これを手に入れるのに、一体どれだけの時間を使った事か」


月曜に一度しか沸かない『黒衣の黒騎士』を、何度葬った事か・・・。

お陰で、外れの盾が大量にインベントリに残ったわけだが。


大盾の下側を地面に押し付ける。

土煙と、多少の振動が地面に走る。


「さあ、来い・・・ゼフィラス」


「では・・・行かせてもらうぞ、トーマ殿!」


脇に聖剣を構えたまま、俺に走ってくるゼフィラス。

身体に纏う赤いオーラが、薄まり・・・聖剣に纏う赤い光が強く輝く。


来る・・・!

盾を構える手に力が籠る。


「『破滅の剣(ルーインブレイバー)』!!」


走るゼフィラスがその身体を止めると同時に、脇に構えた聖剣を振り抜く。

赤い光で刀身が赤く見える聖剣が、俺に向かって来る。


「む・・・ん!」


大盾に聖剣が衝突する。

ゼフィラスは盾を横一文字に切り裂こうと、

そのままの体勢のまま、大盾に聖剣を当て力を籠めている。

俺もそれに答え、真正面から聖剣を受け止めた。


「く・・・!流石だ、トーマ殿!」


盾を聖剣で押し続けるゼフィラス。

その顔は、全力を籠めているからか、こめかみ付近に血管が浮き出ていた。


「お前も、中々の力だな」


こちらの世界に来てから、一番の力を味わっていると言っていい。

だが・・・宵闇さんや・・・Gさんに比べれば。

彼は、その境地にいない。


大盾を、ゼフィラス側へ勢いよく押しやる。

所謂、シールドバッシュという攻撃法だ。


「ぐぅ!」


押し当てていた聖剣が、大盾によって弾かれる。

同時に、ゼフィラスの身体も後方へと仰け反った。


「はぁ・・・はぁ・・・!」


仰け反った身体を立て直したゼフィラスは、聖剣を構えようとするが。

ふらつき、聖剣を地面に突き立て、片膝をついた。

・・・あの赤い光とオーラは・・・彼の身体に相当の負荷を掛けているようだ。


彼のためにも、この勝負、さっさと決着をつけた方が・・・。


「ふ、ふふ・・・そうか、これだけ、では・・・まだあなたには届かないという事か」


ゼフィラスはそう言うと、体勢を戻し、聖剣を地面から引き抜いた。


「あなたは、私以上の存在だ」


「何?」


構えていた槍を下ろす。


「ふふ・・・この国には私以上の戦士はいないと・・・そう思っていたが。

 なるほど・・・井の中の蛙大海を知らず、か」


自分以上の戦士だと、俺を認めたらしい。

だが・・・その顔はとても、楽しそうで・・・哀しそうだった。


「遥か高みにいる存在に!挑むためには命を賭す!

 聖剣よ・・・その力をすべて引き出せ・・・!!」


聖剣を構えると・・・様子が変わった。

聖剣が纏う赤い光とゼフィラスが纏う赤いオーラが空気へと霧散していく。

完全に光とオーラが無くなると・・・。

今度は血のように赤いオーラがゼフィラスの身体を覆った。


その赤いオーラは血の霧のように濃い赤色で、ゼフィラスの身体を覆っていた。

・・・まるで、ゼフィラスの血が霧になって彼の身体を覆っているように見えた。


「ゼフィラス!」


リルフェアが堪らず、腰を上げた。

その様子にビクリと、体を揺らすラティリーズ。


そして、観覧席から出ようとするリルフェア。

その様子を見て、護衛がリルフェアを制止する。


「どこへ行かれるのですか?」


「ゼフィラスを止めに行くわ」


「・・・今は御前試合の最中。どうか、ご辛抱を」


「ゼフィラス様も、命を掛けて彼に勝ちたいと思っているのです。

 どうか、そのお気持ちをお汲み取り下さい・・・」


そう言って、護衛が頭を下げる。


「・・・男は、戦士は、本当に馬鹿ね・・・!」


そう言うと、苛立ち気に椅子に座り直す。


「あの状態は非常に危険なのよ・・・!」


危険と聞き、ラティリーズの顔も曇った。


――――――――――――――――――――


血のように赤いオーラがゼフィラスを包む。

同時に、聖剣に纏う赤い光もどす黒い赤に変わる。

聖剣・・・というには禍々しい色だ。


そのゼフィラスの姿を見た観客達からは歓声が消えた。

逆に、悲鳴や怯えたような声が聞こえてくる。


「ふぅぅぅ・・・!!」


聖剣を片手に持つゼフィラスの目の色も、聖剣の纏う色と一緒だ。

赤黒い、そして・・・禍々しい光を放っている。


(もはや、聖剣というよりは・・・魔剣、あるいは妖刀の部類だな)


そう思いながら、俺はどう・・・ゼフィラスを止めるか考えていた。

ここまで来ると、流石に止めなければまずい。

いっそのこと、あの聖剣を砕いた方が早いか・・・?


だが、もし・・・ゼフィラスと聖剣が一体化していたら。

砕いた瞬間に、ゼフィラスにも影響が出るかもしれない。

なら・・・。

自分の握る、『銀の鍵』を見る。


・・・やってみるか。


読んで下さり、ありがとうございました。

次回決着になります。

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