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集団転移!ーギルドメンバーごと転移したLvカンスト竜騎士-  作者: 倉秋
ゼローム皇国の騎士編-御前試合ー
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57話

4回戦が終わり、一時昼休憩に入る。

その休憩が終わり次第・・・準決勝と決勝が始まる。

遂にここまで来たという感じだ。

あっという間という感覚もあるが・・・。


昨日と同じように、バスケットを持ったセニアが控室まで来た。

その姿を見て、俺と八霧(やぎり)は立ち上がった。


「トーマ様、八霧さん。お弁当ですよ」


「ああ、助かるよ」


二人で、セニアの元まで歩く。


「・・・で、そっちはどうだ?」


ゼフィラスの妹の件だ。

その言葉を聞くとセニアは理解したのか、一つ頷いた。


「それなら・・・」


――――――――――――――――――――


今よりも少し前。

丁度、ゼフィラスとカロの戦いが始まると同時刻。

神威(かむい)とリルフェアは、例の元宝物庫の入り口に向かっていた。


道中、周りを気にしながら歩くリルフェアを不思議そうに見る神威。


「嘘ついて、御前試合を抜けてるのよ。

 誰かに会うと、色々聞かれそうだからね」


「・・・嘘?」


「風邪引いて、部屋で寝ている・・・という話になってるのよ」


そうでもしないと、抜け出せなさそうだったと付け加えた。

神威はその話を聞くと、納得したのか頷いて返した。


団長室の横の、埃を被った使われていない個室。

その扉をリルフェアが開く。


「・・・宝物庫を開くには鍵が必要なんだけど。この部屋には誰でも入れるわ」


そう言うと、ベッドと棚くらいしかない個室が目の前に広がった。

全体的に埃っぽく、誰も使っていないのはすぐに分かる。。


「先客がいたようね」


リルフェアがしゃがむと、床の埃を見た。

そこには、何かを引きずったような跡と、数人の足跡がくっきり残っていた。

そしてその痕跡は、壁際にまで続いていた。


「宝物庫に行ったのは間違いないわ」


壁際までリルフェアが歩くと、壁に備え付けてある絵を額縁ごと外した。

すると、後ろにはレバーのようなものが隠されていた。


「これを下ろすと・・・」


ガチャンという音と、共にレバーが下がる。

その音が耳に残る間に・・・壁の一部が引っ込み始めた。

引っ込んだ場所から、下へ続く階段が見え始める。


「さあ、行きましょう」


頷いた神威と共に、リルフェアは階段を降り始めた。


中は暗くなっていたが、リルフェアの唱える光魔法で辺りは明るく照らされていた。

光源である、光る球体がリルフェアの手元で浮いている。

その光で、足元もよく見える。


「・・・やっぱり、誰か入ってるわね」


自分たちが付ける足跡とは別の足跡が、階段に残っている。

誰かが宝物庫に行ったのは間違い無い。


しばらく階段を降りると、目の前に大きい鉄製の門が立ちふさがった。

重厚そうで、破壊するのは不可能にも見える程の頑強なもの。

宝物庫の扉と呼ばれれば、納得の扉だ。


「この先が宝物庫・・・だけど、封印が解かれてるわね」


鍵を掛け、鎖で縛っていたはずだが。

鎖は床に落ち、扉の鍵も開いているようだ。


「・・・リルフェア、さん・・・ここからは私とオリビアが」


神威がそう言うと、バックから小さい人形が飛び出した。

その姿は、小さいオリビアだった。


「了解しました」


身体が一瞬光ると、元の大きさに戻るオリビア。

その姿で、リルフェアに一礼する。


「便利ね」


リルフェアがそう呟く。

オリビアは頭を上げるとリルフェアと扉の間に体を割り込ませた。


「・・・リルフェア様、敵がいる可能性もありますので、どうかご注意を」


「分かってるわ」


オリビアが扉に手を掛け、ゆっくりと開く。


少しずつ開く扉からは・・・。

既に使われなくなった木箱や、散乱する資料が見えてきた。

そして完全に開き切る頃には、その全容が明らかになった。


「倉庫・・・?」


そう呟く神威。

それに答えるように、リルフェアが口を開く。


「ええ、宝物庫を移してからは倉庫代わりに使ってたんだけど。

 100年以上前に使わなくなってからは、封印していたのよ」


「100年・・・ですか?」


オリビアがそう尋ねる。


「今や、誰も知らない幻の倉庫ね」


そう言いながら、足元を見るリルフェア。

そして、左へ進んでいく。


左の奥はうず高く積まれた樽や、木箱で視界が効かない場所になっていた。

足跡を頼りに、どんどん奥へと進むリルフェア。

オリビアはそのすぐ横で、リルフェアを警護しながら歩いていた。


「ここで、途切れているわね」


足跡は、一つの木箱の前で途切れていた。

手に浮かぶ光る球体を近くの木箱に近づけるリルフェア。

その木箱を手でさすり、そして何度かノックする。


「・・・この箱じゃないわね」


無反応の木箱を見てそう言うリルフェア。

もう一度、足元を確認するとうろうろしたような足跡が無数に床に残っていた。


「近くの・・・どこかに隠した?」


「ええ、ここの近くだと思うんだけど・・・」


辺りを見渡す神威とリルフェア。


オリビアは近くの積まれた木箱の上に、音もなく埃を立てる事もなく登った。

そして、しゃがむと目を閉じた。


「・・・」


小さな音でも拾おうと、耳を澄まし集中するオリビア。

そして、目を見開く。


「マスター、その箱です」


「その?」


オリビアの指さした、一つの箱。

それは二人の真後ろにある、棺桶のように大きい箱。

その箱に、二人が近づく。


「・・・これは」


釘を打たれたその木箱。

その中からは・・・呼吸のような小さい音が聞こえた。


ふわり、と二人の後ろに着地するオリビアはその木箱に近づくと、腕を変形させた。

それは、細長い刀のような武器。


「開けますよ」


二人に一言断り、釘の打った木箱の隙間に、刀を差し込んだ。

そして、てこの原理で蓋を無理やりこじ開ける。

木が壊れる音が周りに響き、蓋は半壊しながら外れた。


中を覗き込むオリビア。

そのオリビアに、箱の中から何かが襲い掛かる。

それは、ナイフを持った手だった。


少し首を傾けそれを回避すると、肩と頭を使ってナイフを押さえ込むオリビア。

同時にナイフを持った腕を左手で押さえ、封じ込めた。

そして箱の中からその体を放り投げるように、床に押し付ける。

警察が容疑者を捕らえるように、床で捕縛した。

埃の煙が辺りに少し立つ。


「この・・・!放しなさいよ!?」


「・・・リルフェア様、この方が?」


リルフェアが床に捕縛された女性の顔を見る。


「ええ!ゼフィラスの妹、『べリーゼ』よ」


その姿を確認したリルフェア。

ウェーブの掛かった髪に、ゼフィラスによく似た美男顔。

そして、オリビアを攻撃したその気質。

間違いない、ゼフィラスの妹だ。


「そうですか、では」


捕縛を止め、べリーゼを開放するオリビア。

べリーゼが目線を上げると、その瞳に映ったのはリルフェアの姿だった。


「え、あ!?リルフェア様・・・!?」


その姿に気づき、土下座のような格好で頭を下げるべリーゼ。

神威がそれを見ると、リルフェアの顔を見た。


「本当に、偉いんだ・・・びっくり」


「そうね、生まれながらに偉いの」


そう言うと、目の前で頭を下げ震えているべリーゼの肩を叩いた。

ビクリと、身体が震えるべリーゼ。


「ゼフィラスが心配していたわ・・・何があったのか話して頂戴」


「は、はい・・・!」


――――――――――――――――――――


狭い木箱に押し込まれていたので、顔は煤だらけで、髪にも汚れが付いていた。

オリビアがタオルを渡すと、それを使って顔を拭いている。


「そう・・・ゴルム、騎士失格だとは思っていたけど、そこまでとはね」


ある日、ゼフィラスの家に聖堂騎士が押し入った。

ゼフィラスの両親は既に他界しており、家には妹一人。


聖騎士の妹だけあって、そこいらの男には力負けしないべリーゼだが。

流石に聖堂騎士相手には分が悪く、気絶させられゴルムの部屋に拉致された。


だが、覚えているのはそこまでで。

部屋で薬を飲まされた後は、ずっと狭い場所に捕らえられていたとの事。


「・・・ゼフィラスを、操るために・・・家族を?」


そう聞く神威。


「そうね、最低の行為だわ」


その問いに、そう答えるリルフェア。


――――――――――――――――――――


「ああ、最低な行為だろうさ・・・なあ?」


急に、男の声が聞こえた。

この中に男はいないはず。

そう思った4人が、声のした方向に一斉に振り向いた。


目に入るその姿には見覚えがあった。

ゴルムと聖堂騎士達が、宝物庫の入り口に立ち、こちらを見ていた。


「だが、その最低な行為だって・・・ばれなければ何の問題も無い」


「ゴルム・・・!?貴方、拘束されたはずじゃ」


「ああ、だが、憲兵隊にも・・・顔は利くんでな」


そう言って、自分の顔を指さすゴルム。

そして、隣の聖堂騎士達が宝物庫の扉を閉め始める。


その様子を見たリルフェアが焦る。


「皆、急いで!あの扉は内側からは・・・!」


そう言うが、時すでに遅く。

重厚な扉は閉められてしまった。


読んで下さり、ありがとうございました。

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